アリナシのデエト～続

ランチのあとは周辺を散策した。

一緒にお店に入って見ていると
まるで恋人同士でデエトをしているような
気分になる。

独身同士で出逢えていたらな。
しても仕方ない妄想を繰り広げてしまう。
彼といると愛しいと切ないが隣り合わせ。
私に心強さなんてない。
過ちを恐れずに進む世間知らずな
少々の強さはあるのかもしれない。

ダメだ。もうヤキモキするのはやめよう。
彼の幸せを心から祈れる人になるんだ。
休日に彼と会えるそれだけで幸せだ。

いやいや、
そもそも今は付き合ってはいない。
元カレ元カノなんだし。
余計なことは考えないように今を楽しもう。

道中くっつきながら歩いていると
手の甲がふれあう。自然と手を繋ぐふたり。
付き合ってもいないのに手を繋ぐ。
これはアリなのか？！

歩き疲れた中年カップルは、
近くの公園を経由して、
その後はチェーンのお店でお茶タイム。

向かい合いのソファ席に隣同士で
座ろうとする彼。
ビックリしたが、嬉しかった。
これもアリなのか？！
私的にはアリですごくすごく嬉しかった。

隣同士だと彼が近い。とにかく近い。
テーブルの下でコッソリと
手を繋ぐ中年カップル。

こんなに距離が近いとやっぱり
見つめ合ってしまう。
見つめ合うと反射的に、
吸い寄せられるようにキスをしてしまう。
もうアリなのかナシなのかわからない。

夢のような時間はあっというまに終わり、
サヨナラの時間が近づく。

土地勘のある彼に着いていき、
地下鉄に乗って帰る。

電車が来るまでの間、
ホームの端っこで抱き締め合いながら
永い永いトロントロンのキスをした。
これは…ナシか？！
でも、私的にはアリ。幸せすぎる。

ランチでもお茶でも見つめ合い、
ホームではトロントロンなキスをする
中年カップル。

こんな中年カップルは
どう見られているのだろうか。
やはり、不倫カップルでしかないか。
夫婦ではそんな行動決してとらないからな。

それにしても、休日のTHE観光地デエトは
思いの外すこぶる楽しかった。
これだけは、正々堂々とアリ中のアリだっ！

しかし、我々は別れたはずだ。
状態としては元カレ元カノだ。
この状況はいったい何なんだろう。
彼はどういう気持ちであんな
トロントロンなキスをしているのか。
気になって気になって仕方ない。
言葉で聞いてみたい。

いや、怖くて聞けない。

私はただ彼と会って隣で過ごせる時間に
静かに感謝をしている。
素敵な彼と同じ時間をすごせるなんて
私は幸せ者だ。

欲しがるから不安になるんだ。

欲しがらずに感謝の気持ちをもって
生きていきたい。