産後うつ記録:今でも疑問な「お母さんも落ち着いていていい感じですね」
これは、わたしが娘を出産してから2年半もの間苦しんだ産後うつに関する記録です。今も産後うつに悩む方やその周りの方に、何か参考になることがあれば幸いです。
前回の記事はこちらです。
義母から知らされた長期出張の事実に、わたしの心はまさに嵐が吹き荒れました。
ほんの少しのわたしのミスで天に帰ってしまうかもしれない、この小さな赤ちゃん。空腹で泣き、目が冷めれば泣き、眠れないと泣き、何もなくても泣く、泣いてばかりの赤ちゃん。
不安と緊張感の産後だったけれど、やっとパートナーと一緒に育児ができると思ったのに。
そうは言っても自宅に帰ってきてしまったので、結局は自分でなんとかしていくしかありません。休みがあけて夫が仕事にいくようになると、いよいよ娘と2人きりの毎日が始まりました。
我が家では夫が娘の入浴を担当することが決まっていたので、自宅に帰ってからは19時までに帰宅してもらうことになりました。19時に帰宅して、お風呂に入れてもらい、その後寝かせつけです。
ここで、夫とわたしの認識のズレが大きくなってきました。
夫は約束の19時を当然のように過ぎて帰ってくるのです。
育児をずっと担当してきたわたしに取っては、娘のスケジュールが1番の重要事項。今となっては臨機応変でいいと思うことも、当時のわたしにとっては兎にも角にも娘のことが最優先。それこそ、滅私の勢いで娘の動向に目を見張っていました。
(今思えばやりすぎです)
その上このころの娘は毎日決まって夕方にはコリックが始まり、それは夫の帰宅ごろまで続くのです。寝不足の上、一日中神経を張り巡らせて娘と過ごし、さらに追い討ちをかけるコリック。
もう限界!
にもかかわらず、「ちょっとコンビニに寄っていた」なんて、そんな理由でゆったり帰ってくる夫に頭が沸騰しそうでした。
正直に告白すると、この頃のわたしは本当に、もうほとんど娘がかわいくありませんでした。ニコニコすれば可愛らしいし、メリーを見つめているのを愛しく感じたり、そんなことはあります。
けれど、それはピンポイントで可愛い瞬間があるのであって、もうわたしにとっての彼女はまさしく時限爆弾でした。それも、絶対に投げ出せない時限爆弾。
この子はわたしをいじめているのではないか。
とまで思ったことがあります。
そんなわけないことはわかっていても、わたしのからだも心もこの子は振り回して、いっぱいいっぱいになっているのを見て面白がっている。そんな風に感じて、怒りや恐怖を感じたこともあります。
今になって思い返せば、このころわたしは完全に参っていました。
「19時になったら夫が帰ってくる。それまで生かしておかなくちゃ」
「明日になったら夫が帰ってくる。それまで生かしておかなくちゃ」
「●●日は市の保健師訪問だ。それまでは娘を死なせてはいけない」
もう、ポイントは生死になっていました。
自分は娘を世話している時に、母性を持った優しい母親ではないと自覚していましたし、いつその小さな体に取り返しのつかないことをしてしまうかと、自分の理性を信用できていなかったのだと思います。
だから、自分以外の誰かの存在を意識することで、なんとか踏ん張っていたのです。
自宅に帰っておよそ半月後、保健師訪問がありました。
家に来た保健師さんはベテランの風情で、娘の身長や体重を計り、わたしに行くつかの書類を渡し、アンんケート用紙に記入するように言いました。内容は産後うつに関するもののようでした。
助けて欲しい気持ちと、このわたしの心の中がバレたら大変なことになるかもしれないという不安感。
途中、娘がぐずり出しました。
わたしは立ち上がって、娘を抱き上げました。普段の抱っこよりも、数倍落ち着いた笑顔であやしました。
なぜなら、「自分が至らない母親である」と強く認識している以上、他人に娘の泣き声でオロオロしたりする様子は絶対に見せられないからです。
それをみて、保健師さんが言いました。
「お母さんも落ち着いていて、赤ちゃんが泣いても穏やかに対応ができますね。いいですね」
心の中では叫び出しそうな気持ちでしたが、「ありがとうございます」と笑顔で応えました。
アンケートに「この子がいなければと思うことがある」という項目があり、そこにチェックを入れました。それについては保健師さんも目を通していたし、少し会話も交わしました。
けれども、「お母さん、最初のお子さん?ならそういうこともありますね」と言って、それだけでした。
わたしは「落ち着いていて、問題ないお母さん」に見えたのかしら。
こんなにいっぱいいっぱいなのに?
自分で取り繕っておいて身勝手だとは思うけれど、保健師さんにはわたしは余裕のあるお母さんに見えたの?
「家も散らかってないですね、いいですね」って。そんなのお客さんが来るなら片付けるに決まっている。
外側は体裁を整えているけれど、実のところはボロボロです。
でも実際には何も言えず、ありがとうございますと言って見送りました。
保健師さんと話すほど、夫は娘とわたしを気遣ってくれる良いパートナー
だと理解しました。娘は健康上なんの問題なもなく、すくすくと育っていました。わたしは産後の経過もよく、健康であるとわかりました。
話せば話すほど、わたしが育児について「つらい」「しんどい」と思っていることが、わたしのわがままとキャパの少なさのせいかもしれないと感じました。
助産師さんのせいではなく、わたしの認知の歪みです。
かくして、来たる長期出張を前に、わたしはズタボロになっていました。