はたらくお父さんの氷は「2個」
2020年4月7日に緊急事態宣言が発令された。それをきっかけに、「テレワーク推奨」から「原則テレワーク」へと変化。東京では、49%の会社員がテレワークへと移行したそうな。
私のお父さんも例外ではない。
大学生の私よりも、1時間おそい午前8時に起きだす。おもむろに右腕で抱えるものは、重そうな社内用PCだ。階段を降り、一段、一段。そうして、のっそりとリビングを占領しだす。
私の行動範囲は狭まった。とても。
冷蔵庫の中は食い荒らされるようになった。就業時間17:00後のリビングはなかなか臭い。1階のトイレは、煙草の匂いがするようにもなった。
一方で、新たな発見もある。
1つ目。リビングでやたら「高速なタイピング音」が響くとき、1時間後にはリモート会議が始まる。こっそりとPCの画面をのぞく。カラフルなPowerPointか、黒背景のコードの羅列が表示されていれば、まず間違いない。「洗濯機のスタートボタン」と、「リビングへの侵入」は控えておくのがベスト。
2つ目。お父さんの「独り言と笑い声がとだえる1時間後、アイスコーヒーを差し出す」と、かなり機嫌がいい。リモート会議が終わったようだ。調子の良いときは2、3言交わされる場合もある。
3つ目。12時50分。空になった冷凍パスタの皿がテーブルに並べてあるだろうから、それらをシンクに運ぶ。ささっと洗う。制限時間は「10分」。最後に、「パイナップルゼリー」と「スプーン」をPC横にセットしておけば、なお良し。
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有名ホテル、リッツ・カールトンでは、各従業員による詳細な記録が生み出す、魔法のような接客を「リッツ・カールトン・ミスティーク(リッツ・カールトンの神秘性)」と呼ぶそうだ。
お父さんは、「最近、喉乾いたなってタイミングで、丁度リビングにいるんだよな」なんて笑って話す。私の腕もあがったのかもしれない。
最後に、「働くお父さんは、なかなかかっこいい。」
それと、アイスコーヒーの氷は「2個」がお好みだ。