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お風呂の匂い

那須高原にドライブに行きました。
先週までよりぐっと気温が下がり、空気も景色も秋になっていました。
今回の目的はペニーレインでランチをすることと、ブルーベリーパン。

ハンバーガーランチ
パンが大きくてハンバーグも肉厚


ペニーレインといえばブルーベリーパン
練り込んであるブルーベリーが美味しい

一日遊んで帰路に着いて、山間の道を走っていたらあちこちで煙が上がっていた。
今では街中で物を燃やすなどということは皆無。
近隣に家がない山の中だからこそ許されることなのだろう。

何を燃やしているんだろう?
多分稲藁や牧草や切った枝とか。
そんな物を燃やしているのだろう。
車の窓を開けて外の空気を入れると、懐かしい匂いがする。

「この匂いを嗅ぐとお風呂だと思うよ」
と妹が言う。

木が燃える時の独特の匂いなのか立ちのぼる煙の匂いなのか。
夕暮れのこの匂いは私たちにとってお風呂の匂いだ。

子供の頃、家のおお風呂は石炭だった。石炭を入れる四角いコンクリートの箱みたいなものがあって、母はそこから石炭を出してお風呂を焚いていた。
その時の匂いは今は全く覚えていない。
石炭が高価になり出回らなくなって、家の風呂は薪で沸かすようになった。
母の実家が工務店だったので、古い家を解体した時に出る廃材で薪になりそうなものをもらう。
父がどこからかチェーンソーを借りてきて、太い柱や長い材木を均等に切り揃える。
母がまとめて私と妹が雨の当たらない場所に運ぶ。
この作業は一日がかり。
一度廃材が出ると何ヶ月もお風呂を焚くことができた。

私たちが風呂焚きがまだできない時は、母が夕飯の支度をしながら風呂焚きをしていた。
近所の家がほとんどガスか石油で風呂を沸かすようになっても、我が家だけは薪風呂を続けていた。
学校からの帰りが遅くなった時、夕方ピアノのレッスンから帰ってきた時、煙突から上がる煙の匂いで母がお風呂を焚いているんだと思うと、あったかい気持ちになった。

薪風呂は私が高校を卒業した2、3年後に終わりになった。
廃材をきちんと処理しなくてはならなくなり、個人が薪として使う事ができなくなったからだ。
そして、煙を出すことが近所迷惑になっていた。
当然のことだと思う。

ただ、お風呂のお湯の質は格段に落ちてしまった。
あのまろやかで滑らかなお湯はガス風呂では味わえない。
もう身体が慣れてしまったけれど、長い間、ガス風呂の一番湯に入ると、お湯がビリビリと身体を刺激するのを感じた。
そんなことももう昔の話になってしまった。


あちこちで上がっていた煙を後にして家路を急ぎます。
ゆったり立ちのぼる紫がかった煙。
まだ陽は沈んでいないけれど、山ですっかり日陰になってしまった集落。
ところどころつき始めた街灯。
夕方の山間の風景は、私たちの家のある場所とは対極のようでした。

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