アフリカ諸国が食料サミット、域内での自給を目指す
アフリカ34カ国の首脳らが2023年1月25~27日、セネガルのダカールで食料問題を議論する首脳会議(ダカール2サミット)を開き、アフリカ域内での食料自給を目指すことを確認しました。ロシアによるウクライナ侵攻のほか、気候変動の影響などで食料安定供給への不安が強まる中、アフリカに多く存在する未耕作地の活用や新技術の導入を通じて各国が農業生産を大幅に増やし、食料安全保障を強化するのが狙いです。アフリカは農産物を多く輸入に頼っていることから、自給を達成できれば、世界の食料需給に大きな影響を及ぼすことになります。
セネガル政府とアフリカ開発銀行(AfDB)の共催で行われ、こうした会議は2015年10月に同じダカールで「ダカール1サミット」として開かれて以来となります。今回のサミットが27日に採択した「食料主権とレジリエンスに関するダカール宣言」は、食料安全保障と食料自給を達成するため、各国が食料・農業供給計画を策定して取り組むことを明記しました。首脳間の議論ということもあり、あまり具体的なことは盛り込まれていませんが、2月に開くアフリカ連合の首脳会議に提出し、引き続き議論することになっています。
宣言はまず、「新型コロナウイルスや気候変動、ロシアのウクライナ侵攻を原因とする食料価格の上昇や、食料供給の混乱によってアフリカの食料不安が悪化することを懸念する」との現状認識を表明しました。その上で、「アフリカは、全世界の未耕作地の65%を占めており、自らを養い、世界の他の地域の食料供給に貢献するのに十分な食料を生産する可能性がある」として、農業生産を拡大する余地は大きいとの見方を示しています。
その一方で、「巨大な農業の可能性にもかかわらず、アフリカは食料不安に苦しんでおり、世界の飢餓人口8億2800万人のうち3分の1(2億4900万人)がアフリカに存在する」と厳しい現状を明かしています。アフリカの人口は約14億人なので、5分の1近くが飢餓に苦しんでいることになります。飢餓の撲滅に向けて、「食料主権を達成し、維持するためには、農業技術を大規模に農家に提供し、食料生産を増やし、食料・農業システムに対する投資を増加させることが必要だ」と主張しました。
さらに、国連の持続可能な開発目標(SDGs)が2030年までに全世界での飢餓撲滅を目指していることに触れ、「SDGsの飢餓ゼロ目標の達成は、アフリカで達成されない限り不可能だ」と指摘しました。その上で「今こそ、アフリカが自らを養い、農業の可能性を十分に引き出し、世界を養うために貢献する時だ」とアピールしました。
宣言は、具体的な対策として、各国が食料・農業供給計画を策定するとともに、計画の実施状況を監督するための機関を設立することを打ち出しました。民間からの資金供給を拡大するとともに、各国政府は予算の10%以上を農業に振り向け、食料安全保障や食料自給の取り組みを支えることもうたっています。今後5年間でAfDBが100億ドル、他の開発銀行が200億ドルを拠出し、資金支援するということです。
国連食糧農業機関(FAO)のデータによると、域内貿易を除いたアフリカの2021年の農産物輸入額は811億ドル、輸出額は459億ドルとなりました。輸入では穀物・調整品が313億ドルと最も多く、このうち小麦が149億ドル、コメが65億ドル、トウモロコシが45億ドルとなっています。このほか、パーム油など油脂が107億ドル、砂糖・蜂蜜が65億ドル、乳製品が51億ドル、野菜・果物が49億ドルなどとなっています。
輸出では、野菜・果物が146億ドルが最も多く、このうちカカオ豆がほぼ半分の74億ドル、コーヒーが22億ドルを占めています。織物繊維や天然ゴムといった非食用の農産物も多いです。自分たちがあまり食べることのない農産物を輸出する一方、主食である小麦やコメ、トウモロコシを多く輸入に依存していることから、食料安全保障を強化するためには、これら主食の農産物の自給を高めることが重要になります。
同じくFAOのデータによると、2020年のアフリカの農業生産額は2842億ドルで、最も多いキャッサバ芋は223億ドルとなりました。トウモロコシは220億ドル、コメは93億ドル、小麦は81億ドルと、いずれもそれなりに生産されているものの、輸入を代替するためには、大幅な増産が必要となります。
AfDBはウェブサイトで、農業生産性の向上やインフラ整備、気候変動に対応した農業システムへの変革、民間投資の活用により、アフリカを世界の穀倉地帯にすることができるとアピールしています。こうした取り組みにより、2800億ドル余りの農業生産額を2030年に1兆ドルに増やせるとの試算も紹介しています。
AfDBのアキンウミ・アデシナ総裁(元ナイジェリア農業・農村開発相)は25日にサミットで講演し、アフリカは年1億トン、750億ドルもの農産物を輸入している上、多くの人々が飢えに苦しんでいるため、「こうしたことは容認できない。アフリカは食料を自給しなければならない」と強調しました。全世界の未耕作地の65%はアフリカに存在すると指摘するとともに、ロシアのウクライナ侵攻を受けて世界的に食料供給が混乱し、アフリカの脆弱性が改めて浮き彫りになったとして、「今こそアフリカが食料自給に動く時だ」と訴えました。
アデシナ総裁は、「アフリカ農業変革のための技術」(Technologies for African Agricultural Transformation=TAAT)のことも紹介しています。これは農業技術の向上によって生産性の大幅向上を目指すプロジェクトで、2016年に始まりました。4年前に高温耐性小麦の栽培を始めたエチオピアでは、小麦の栽培面積がこの4年間で5000ヘクタールから80万ヘクタールに急拡大し、2023年にエチオピアは小麦の純輸出国になる見通しだということです。スーダンでも、高温耐性小麦の栽培面積が31万7000ヘクタールと、この3年間で大幅に増え、小麦輸入を半減させる成果が出たとアピールしました。