穀物メジャーのブンゲがバイテラを買収、業界の寡占化進む
米国の大手穀物商社ブンゲは2023年6月13日、オランダの穀物商社バイテラの買収を発表しました。買収額は総額82億ドル(約1.1兆円)に上り、ロイター通信によると農業部門の合併・買収(M&A)としては過去最大級の規模となります。2022年12月期の両社の売上高を単純に合算すると1210億ドルとなり、ライバルの米国アーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM)を抜き、米カーギルに次ぐ世界2位に浮上します。世界の食料安全保障への関心が高まる中、穀物取引は「穀物メジャー」と呼ばれる4社の寡占化が進んでいます。
発表によると、バイテラの株主はブンゲ株の約6560万株(62億ドル)と現金20億ドルを受け取ります。ブンゲは98億ドルに上るバイテラの債務を引き継ぎます。買収は2024年半ばに終える見通しです。
ブンゲは、両社の事業は補完関係にあると強調した上で、「21世紀で最も優れた農業ビジネス企業を構築する」とアピールしています。さらに、3年以内に年2億5000万ドルのシナジー効果を見込むということです。
バイテラは2012年にスイスの資源大手グレンコアに買収され、同社傘下の穀物商社として事業を展開してきました。グレンコアは2016年に保有株の50%をカナダの投資会社などに売却し、今回、残りの株式も売却することになりました。穀物事業から撤退し、主力の金属やエネルギー事業に集中するようです。
ブンゲは1818年、ヨハン・ブンゲ氏がオランダのアムステルダムに貿易会社として設立しました。その後、アルゼンチンやブラジル、米国などに進出し、大豆やトウモロコシ、砂糖、肥料などの取引を拡大し、2001年に本社を米国に移転しました。
2022年12月期の売上高は前期比14%増の672億3200万ドルと、穀物価格の高騰が追い風となり、大幅な増収となりました。一方で、金利などのコストが増え、純利益は23%減の16億1000万ドルにとどまりました。現在は世界40カ国以上に約300の拠点を有し、従業員は約2万3000人に上ります。
ロイター通信によると、ブンゲは大豆など油糧種子の加工で既に世界首位です。このため、バイテラの買収によって一段と事業が拡大することについて、カナダやアルゼンチンなどで競争当局の承認を得られるかが課題となるようです。2022年のブラジルからのトウモロコシと大豆の輸出でもブンゲは世界首位だということです。
世界の穀物取引は、米ADMと米ブンゲ、米カーギル、フランスのルイ・ドレフュスの穀物メジャー4社が大きな影響力を持っています。穀物メジャーは、4社の頭文字から「ABCD」としても知られています。4社のうち3社は米国企業であるため、トウモロコシや大豆、小麦など世界の穀物取引は米国企業に多くを握られていることになります。
日本の丸紅は「和製穀物メジャー」を目指そうと、2012年に米大手穀物商社ガビロンを買収しました。しかし、巨額の損失を計上するなど事業はうまくいかず、2022年に同社の穀物事業をバイテラに売却する事態に追い込まれ、和製穀物メジャー構想はあっさり消えてしまいました。穀物メジャーの4社の牙城を崩すのは容易ではないようです。