英国はネオニコチノイド農薬の例外使用を継続

英国の環境・食料・農村地域省(DEFRA)は2023年1月23日、ネオニコチノイド系農薬について、2023年もテンサイ農家に対して例外的な使用を認めると発表しました。原則禁止の方針は維持しながらも、黄化病と呼ばれるウイルス病の発生率が高い場合に限り、認めるということです。欧州連合(EU)の欧州司法裁判所(ECJ)は例外的な使用を認めないとの判断を示したばかりですが、英国はEUを離脱したので、従う義務はなく、独自路線にかじを切っています。

DEFRAによると、テンサイは発芽直後に黄化病ウイルスを媒介するアブラムシの被害を受けやすく、その後の収量や品質に大きな影響が出てしまいます。2020年にはテンサイの収穫量が25%も減少し、6700万ポンドの経済損失が生じたため、こうした事態の再発を防ぐのが狙いです。例外使用を認めるのは、黄化病の発生率が63%以上と予測された上、防除する他の手段がないといった極めて限定的な場合に限ります。テンサイの種子に農薬をコーティングすることになりますが、環境へのリスクを最小限に抑えるため、1ヘクタール当たりで散布する種子の上限を定めるなど、さまざまな厳しい条件も課すそうです。

マーク・スペンサー農業相は声明で、「われわれは、テンサイに黄化病ウイルスが発生した場合の危険性や、英国の砂糖生産に及ぼす影響を認識している。慎重に検討した結果、産業を守るために緊急使用を認めることは必要な措置だと考えている」と理由を説明しました。また、「使用を認めるのは、厳格な条件が満たされた場合に限り、(ミツバチが好まない)花が咲かない単一作物だけとなる。この決定は簡単になされたものではなく、広範で厳格な科学的評価に基づいている」とも強調しました。

これに対し、環境団体ワイルドライフ・トラストは「ハチに有害な農薬の規制をEUが強化した数日後に、英国政府は緊急使用を認めてしまった。これは容認できないことだ」と批判しています。

ワイルドライフ・トラストによると、英国がネオニコチノイド系農薬の例外使用を認めるのは3年連続です。同団体は「(2022年12月にカナダのモントリオールで開かれた)国連生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)で、英国は有害な農薬による環境への影響を2030年までに半減させると約束した。それなのに、ネオニコチノイドの使用を認めてしまった」として、英国の対応は矛盾しているとも指摘しました。

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