世界の飢餓人口は7.3億人に増加 SDGs達成は一段と遠く
国連食糧農業機関(FAO)や世界食糧計画(WFP)、国際農業開発基金(IFAD)など国連5機関は7月24日、2024年版の年次報告書「世界の食料安全保障と栄養の現状(SOFI)」を発表しました①②。2023年の世界の飢餓人口は7億3340万人(7億1330万~7億5720万人)と、6年連続で増加したとの推計を示しました。
世界人口の9.1%(8.9~9.4%)に相当し、「世界で11人に1人が飢餓に見舞われている」と警鐘を鳴らしています。国連の持続可能な開発目標(SDGs)は2030年までに飢餓ゼロを目指していますが、減少どころか増えているのが現状で、目標達成は一段と遠のいています。
2024年版の公表にあわせ、前年までの数値も一部修正されています。今回の報告書によると、飢餓人口は2014年に5億3870万人まで減少しましたが、その後は緩やかな増加傾向が続いています。
悪化している理由としては、近年の食料価格の上昇のほか、紛争や気候変動、経済低迷も深刻になっていると指摘しました。健康的な食料の不足や不平等といった従来からの要素も加わり、悪影響を及ぼしているということです。
今後については、2025年に7億3500万人に増加した後は減少するものの、2030年には5億8200万人が依然として飢餓に見舞われるとの予測を示しました。このうち53%がアフリカということです。こうした状況を踏まえ、報告書は「2030年までに飢餓ゼロを達成する道筋から世界は大きく外れている」との見方を示しました。
新型コロナウイルスの拡大前には、2030年の飢餓人口は4億5180と予測していました。コロナが状況の悪化に拍車をかけていることも強調しています。
2023年の飢餓人口を地域別に見ると、アフリカが2億9840万人(人口の20.4%)と、5人に1人が飢えに苦しむ深刻な状態で、状況は悪化しています。人数ではアジアが3億8450万人(8.1%)と最も多いものの、前年からは改善しました。このほか、中南米カリブが4100万人(6.2%)、オセアニアが330万人(7.3%)となりました。北米や欧州は人口の2.5%以下にとどまりました。
報告書の発表を受け、FAOの屈冬玉事務局長は「あと6年でSDGsの目標を達成するため、食料・農業システムの変革はこれまで以上に重要になっている」と指摘した上で、「より効率的で、包括的で、強靭で、持続可能な食料・農業システムの構築に向け、われわれは革新し、協力しなければならない」と訴えました。
また、IFADのアルバロ・ラリオ総裁は「飢餓や貧困から抜け出す最短の道は、農村部での農業への投資であることが証明されている。飢餓や栄養不足を終わらせるには、より多く、より賢く投資する必要がある」と強調しました。
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