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インドがコメ輸出禁止を解除 供給懸念が後退
インド政府は9月28日、コメの輸出禁止措置を解除すると発表しました①②③。コメの国内生産が回復し、供給懸念が和らいだためです。インドは世界最大のコメ輸出国であるため、インドの禁輸措置の影響でコメの国際価格は一時15年ぶりの高値に急騰しましたが、落ち着きを取り戻しています。(上の写真はUSAライス連合会のウェブサイトより)
インド政府は2023年7月、不作による国内への供給懸念を理由に、高級米であるバスマティ米を除いた白米について、輸出を禁じました。対象は、コメ輸出全体の半分近くに上ります。国連食糧農業機関(FAO)によると、翌8月には世界のコメ価格指数(2014~16年=100)は142.4と15年ぶりの高値となり、国際市場に大きな影響を及ぼしました。
インド政府は今回、非バスマティ米の輸出再開を認めたものの、1トン当たり490ドルの最低輸出価格(MEP)を導入するなど、一定の輸出規制は続けています。一方で、パーボイルド米に対する輸出税を20%から10%に引き下げたりするなど、コメの他品種についても緩和措置を相次いで打ち出しています。
インドメディアによると、今年のインドのコメの作付面積は前年比2.2%増となり、過去5年平均を3%上回りました。この結果、2023~24年度のコメ生産量は1億3782万トンと、前年度を1.5%上回る見通しです。
インドの生産回復や輸出規制の緩和を反映し、コメの国際価格は値下がりしています。FAOが10月4日に発表した9月の世界のコメ価格指数は、前月比0.9ポイント下落の133.1となりました。この1年間で6.1%も値下がりしました。
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米農務省(USDA)の10月11日時点の予測によると、2024~25年度のインドのコメ生産量は1億4200万トンと、前年度比3%増え、過去最高となる見通しです。天候に恵まれて作付けが増えたのが主因です。収穫面積は過去最大の4900万ヘクタールとUSDAは予測しています。
これにあわせ、USDAは2024年のインドのコメ輸出を1800万トンから2100万トンに上方修正しました。前年比20%の大幅増となります。好調な生産に加え、禁輸措置の解除により、アフリカやアジア向けが増加すると見込んでいます。
この結果、世界のコメ輸出全体に占めるインドのシェアは31.1%から37.4%に上昇します。2位グループのタイ(シェア13.0%)やベトナム(同12.8%)を引き離し、圧倒的な首位となりそうです。
一方、USAライス連合会は今回のインドの禁輸解除について、「当初の予想より影響は小さい」と分析しています。その理由として、対外的には輸出を禁じると言いながら、「食料安全保障」の名目で、途上国にコメを輸出していたからだと指摘します。同連合会によると、インドには、コメを外交上の武器として、途上国への影響力を強めるという狙いもあったようです。
その上で、同連合会は「こうした動きにより、インド政府に発展途上国の数百万人の運命を決定する力を与え、これらの国々が今後インドの多くの要求に従う可能性が高い状況を作り出した」と主張しています。米国は、インドが国内のコメ農家を保護しながら輸出を増やしていることに強い不満を持っており、世界貿易機関(WTO)などで見直しを求めています。