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エーラー式クラリネットは「ファ」が命

エーラー式(ドイツ管)クラリネットは楽器自身は入手しやすくなったけど、奏法については令和の今も殆ど日本に情報が出回っていない。なのでエーラー式を使っているプロの先生からレッスンを受けるのは情報収集の点でも重要です。

エーラー式を実践している国内のプロ奏者はボエム式(フランス管)に比べると圧倒的に少なく、周囲には5~6名しかいない。また、プロ奏者にも、エーラー式クラリネットに転向したけど諦めたヒトがいるのも事実で、正しい演奏技法を入手するのが難しい。

その1つがエーラー式キィシステムのフィンガリング。このコンテンツでは、エーラー式はどこが難しいか?どう対処するのか?についてご紹介します。

難しい理由①トーンホールの間隔が長い

人差し指でおさえるトーンホールから、薬指でおさえるトーンホールの間隔はボエム式だと上下管6cm、それに対してエーラー式で上管7cm、下管8cmと結構長いんです。

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エーラー式は、手を開かないと指が届かないだけでなく、疲労(特に右腕)も早いので長時間練習は禁物。ボクは腱鞘炎と四十肩をやらかしました。

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右手を広げるので右腕の腱が痛み出します

上管の左手は然程開かないのに対して、下管は大きく右手を開く為、左右の指を連動させるようなフィンガリングが転びやすいです。B管ならまだしもA管だとかなりの難易度と言えるでしょう。

難しい理由②左右のスプーン・キィが連動していない

当前と思っていたスプーン・キィによる左右連動システムはボエム式クラリネットだけのもので、エーラー式は連動しません。スプーンからスプーンへの移動は、小指を滑らします。滑らしやすいようにスプーンにはローラーがついてますが、手が力んだり、逆に疲労していると指が引っ掛かります。ローラーの回りが悪い時は鼻先の油脂をスプーンに塗る秘技があります。

難しい理由③とにかく「ファ♮」のフィンガリングが難しい

エーラー式の「ファ♮」はとにかく難所です。低・中・高とみんな難しい。
・Low-ファ・・・左右のスプーンで吹き分け出来ない
・Mid-ファ・・・サイドキィを押す。換え指があるけど役に立たない
・High-ファ・・・3種類の指使いがあるがどれも吹きにくい

  • Mid-ファ
    ボエムでは簡単なMid-ファ⇔ソは、エーラーだと同時に3本動かすので大変です。おかげでモーツァルトのクラリネット五重奏の冒頭は難所です。

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※最初のファ⇔ソの所は右のサイドキィは押したまま、左の人差指と親指だけを離せば大丈夫です
  • High-ファ
    Highファも3種類の換え指があるのにどれも中途半端に使えない。こちらのチャイコフスキーの交響曲4番の3楽章では緑丸のファがフォーク(人差し指と薬指)、青丸のファは右手3本指(人差し指、中指、薬指)でやります。

原譜バージョン(A管で演奏):最初のファと次のファを変えないとミ♮がもつれます

面倒なら、記譜を半音さげてB♭管に持ち替えても良いかもです。どうせ次の4楽章はB♭管でattaccaですから(笑)

半音さげたバージョン(B♭管で演奏):これなら最初のミと次のミが同じ指ならもつれない

トレードオフ

ドイツ・クラリネットの響きがかくも透明で素敵なのに、エーラー式吹きが少ないのは、このフィンガリングの難しさにつきます。ドイツボアのままフィンガリングだけフレンチのリフォームド奏者が多いのもうなづけます。
しかし、リフォームドとエーラーではホールの数や位置等から若干音色に違いがあります。まさにどっちを取るかの「トレードオフ」です、。


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