極薄エレアコG-AC-50Sが自分には最強のアコギだった件

本編

 初級者のうちはギタースキル云々よりも、自分がどんなギターを求めているか、なかなかわからないものなのだなあと。

 ちょうど1年前に買って記事も書いたYAMAHAのJR2Sは音だけならいいミニギターだが、以下が私には合わなかった。

・540mmショートスケールは通常サイズ630-650mmとギャップがあり、かえって弾きづらい(このギターだけで練習する、小さい子供にはいい)
・生音が鳴りすぎる。ミニギターをなめてはいけなかった
・アコギの中では低い方だが、それでも弦高が高い(後述)

 ESPというメーカー、GrassRootsというブランドのG-AC-50Sを買った。圧倒的に薄く、エレキと同じボディサイズで空洞があるアコギである。ホロウボディ 、エレキのフルアコに作りは近い(サウンドホールの大きさが違うので生音は違うだろうが、ボディが小さい=空洞の体積はセミアコぐらい)。
 楽器店ならどこでも置いてあるギターではないが、東京なら渋谷にESPの専門店がある。在庫があった色はナチュラルと黒で、ナチュラルを選んだ。
 以下は公式だが、動画の方がわかりやすいだろう。

 上記はエレアコ版でないG-AC-45のレビューだが、エレアコ版の50SとしてはCV-210Eというプリアンプ(&ピエゾピックアップ)で普通に大音量でも鳴る。ちなみにナイロン弦モデルもある。

 アコギの生音ボリュームは以下(ボディ厚さはYAMAHA公式サイトより)、

標準サイズのアコギ(厚さ100-125mm)>一般的な薄ボディのエレアコ(厚さ80-90mm)>エレアコの厚さでボディも小さいミニギター>ギタレレ(厚さ70mmでさらに小ボディ)>YAMAHAのサイレントギター(ボディなし)

 となるが、この極薄ボディのエレキサイズアコギはギタレレとほぼ同じ生音の大きさである(響きはちょっと違うが)。この、ギタレレボリュームがちょうどいい。ピック弾き、特に鉄弦だとギタレレでも結構鳴る。アコギを弾いている感覚はあり、生音はこれで十分だ。大音量が必要な時は、エレアコとして使えばいい。

 サイレントギターまでいくとやりすぎ感が強いし、生音なしはエレキ同様アンプ環境のない場所で無力すぎる。何よりギターに詳しくない人相手だと「何それ」ってなるだろう。お値段も張る。

 さらにこのギター、スルーブリッジ仕様でブリッジピンがない。地味にここがすごくいい。アコギの弦交換はとても面倒だが、エレキと同じやり方でできる。全てが、エレキからアコギを弾く人向けに、完璧に仕上がっている。普通このような変態ギターはお高くなってしまうが、実売価格で4万円代とそこまで高くない。
 610mmとちょっとだけショートスケールだが、ほぼ気にならない。ナット幅もだがネックシェイプもまんまエレキ、弦高(サドル)もデフォルトが低く、新品なら調整・改造不要。完全にエレキ感覚で弾ける。そもそもGrassRootsというかESPはエレキがメインなので、設計思想が完全にエレキ。というか、余ったエレキ木材を転用して作ったような気がする(勝手な想像です)。
 初心者向けのはずのJR2Sがなぜ弾きづらかったのか、それはショートスケールもあるが弦高が高かったからだ。不可逆改造だが、サドルを容赦なく削るべきだった(ギタレレもガチで弾くなら削った方がいいくらいだ)。ネックはJR2Sより長くなっており電気系があるので持ち運ぶ際の重量はあまり変わらないが、薄いので取り回しが楽。
 普通のアコギと同じく14フレットボディ接続だが、ボディが薄い=接続部のネックも薄い副作用で、13フレット目が普通のアコギよりも押さえやすい。専用ソフトケースも付属するがエレキギターのケースがそのまま使えるメリットもある。
 指板はローズウッドと思いきや、その代替として近年使われているパーフェロー。色が綺麗。俺でパーフェローの練習しろ。

 アコギというのは普通は音が第一で、ミュージシャンはそこにこだわる。なのでプロ向きでは全くないが、そういう人にとってもサブ、練習・作曲用にはいいだろう。引きこもりギタリストもとい一般人にとっては、これ一本でメインを張れる。
 見た目もカッコイイというか個性的で、ミニギターのオモチャのようなチープさがなく、最初から「エレキギター風デザインですが何か?」と開き直れる。ステージ上でも違和感がないというか、舐められない(はず)。

 エレキからアコギに手を出そうとしている人、またはアコギを買ったが弾きづらい or うるさいで持て余している人、エレアコでライブの弾き語りをしたい人に特におすすめである。

 デメリットとしては、ボディが薄い小さい&軽量ゆえの「ヘッド落ち」はたしかにある。これはエレキのSGタイプと同等以上だろう。立ちでも座りでも、左手を離せば落ちる。そういう楽器だと思ってもらいたい。
 このギターのライバルって、エレキのフルアコやセミアコなのかもしれない。生音がそこそこ鳴る&軽量という意味で。さすが変態もとい個性派、既存の需要を食っている。

余談というかライバル比較

 小さいエレアコというとYAMAHAのAPXT2が対抗馬になる。楽器店で試奏したが、こいつはよく鳴る。可愛い見た目に騙されてはいけない。ボディ厚さはギタレレとほぼ同じでボディが大きいミニギター(カッタウェイではあるが) なので、ギタレレより鳴るのは必然。あとこいつもフレットが上がると弦高が高いので、購入後であれば自己責任で容赦なくサドルを削ろう。

 あとは上記動画レビューにもあるが、座って置いた時のバランスの悪さが気になる。このサイズでカッタウェイ、しかもくびれが浅いのが災いしている。立って弾くのがメインなら気にならないだろう。
 スケールは580mmと一般的なミニギター。これをどう見るかは個人の好みだが、私には違和感のないG-AC-50Sの610mmに分がある。
 お値段は実売価格で3万しないくらいなので、こちらの勝ち。YAMAHAのエレアコではおなじみの、電源が単三電池というのもポイントが高い。

 これは歌の「声量」にも通じる話だが動画だと生音のボリュームは結局よくわからないので、こればかりは楽器店で実際に試すしかない。とはいえ楽器店の試奏スペースと家では全く環境が違うので、比較のための楽器や音楽プレーヤーを持ち込むのもいいだろう。

弦高鬼低ギターは正義(7/26加筆)

 カスタムライト弦(011-052)G-AC-50Sと、元々持っていたライト弦(0010-046)のエレキ(レスポールタイプのエピフォン)を弾き比べる日々だったが、どうも逆にエレキの方が弾きづらいなと感じた。G-AC-50Sが絶妙なショートスケールだから? いや違う、弦高だ。初心者向け・入門用ギターの弦高が高いはずがない。エピフォンもそうで、ハイフレットはこんなもんだと思い込んでいた。上記のエレキギター博士の記事にもある通り、エレキは簡単に調整ができる。弦交換はしたくせに、なぜ今までやらなかったんだろう……。
 詳細手順は上記記事だがレスポールタイプの場合、サムナットと呼ばれる部分を回すが、ラジオペンチがなくても記事内の写真のように上側にマイナスネジがあればマイナスドライバーだけでこと足りる。というかラジオペンチだと1弦側がスイッチ類と干渉して回しづらい。

 というわけで弦高鬼低エレキギターが爆誕した。1弦側は12フレットで十円玉が挟まる1.5mmあればいい。6弦側は多少余裕がないとビビるので、5フレットで挟まるくらい。ビフォーアフター、画像はない。絵的な変化が地味すぎるので載せても意味がない。だが、弾く人間にとっては重大な変化だ。下手な人間にとって、ハイフレットだって(押さえれないことはないが)弦高は低い方がいいに決まってる。見た目はほとんど変わらないが、もちろん1フレット側、コードも押さえやすい。
 弦を張ったままでもやけに簡単にサムナットが回ったことに驚いたが、こいつはもう買ってから4年くらいになるので、もしかしたら経年でサムナットがゆるくなる=弦高が高くなっていたのかもしれない。ペグが緩んでいて最近締めたくらいなので。
 なので、もし放置していたエレキギターが弾きづらかったら、それはブランクのせいだけでなく、弦高のせいかもしれない(アコギの場合はそんなことはないので、潔くブランクを認めよう)。

【さらに追記】1,2弦が特にだが、G-AC-50Sはナット溝も深く掘られているため1フレットがとても押さえやすい。ここの改造は自力では困難なので、エレキはひとまずここが限界。諦めるしかない。
 以前ダウンチューニング&カポの記事を書いたが、ナット部分の高さがなくなるのでそりゃ1フレット(実質)が押さえやすくなるはずである。弦高鬼低+カポだとビビるので少しだけ高くした。
 改めてG-AC-50Sの弾きやすさは異常……。