売れるボーカリストが持っているのは「タイプ一致」では説

 ポケモンの概念でものを考えることが最近は増えているが、今回はプロで売れる、商業的に成功するボーカリストについて。

 少し前の記事で触れたadoさんにしても、技術が高いのはもちろんだが今時は歌の上手い人などゴロゴロいるわけで、その中で商業的に成功する・大ヒットを飛ばす人というのはやはりどこか突き抜けている。
 これまで運だったり個性や才能と言われていた部分を、ポケモンの「タイプ一致」で説明できるのではないか。

 いうまでもなく声、喉は替えがきかない楽器である。声帯の長さ=声種だけでなく厳密には骨格、顔(頭部)、体型、筋肉含めた人体全体が楽器である。ボイトレをいくらやっても、そこの壁はなかなか超えられない。
 楽器だったらジャンルによって使い分ける。あるいは同じ楽器でもカスタマイズする、奏法を変えるといった工夫でプロは幅広く対応できる。が、ボーカリストはそうはいかない。それで食っているのは一部のものまね芸人くらいで、完全に別の芸能である。

 プロレベルになると歌手の技術が高いのは大前提であり、与えられた(または自分で作曲した)楽曲と自分の声タイプ一致が起こった人間が売れる、バズるのではないか。そしてそれが、自分のやりたい音楽かどうか、メンタルが一致するかも大きい。モチベーションだけでなく、メンタルがその歌手のパーソナリティを形成するので重要である。

 水樹奈々さんが元々演歌歌手志望だったのはわりと有名な話だと思うが、元々の志望ジャンルでなくても成功する例はある。とはいえやりがいを持てないと、長期的に活動するのは厳しいだろう。後付けでも、売れた音楽を「やりたい音楽」にできるかどうか。
 フィクションの話だが、『デトロイト・メタル・シティ』の主人公は、メンタル以外はデスメタルと声タイプがものすごく一致していたから売れたのだろう。

 まとめると、

楽曲×声タイプ×メンタルすべてが一致することを「ボーカリストのタイプ一致」と言う

 たとえば女の子でハードロックをやりたいが、声タイプがそのまま声優になれるような超ソプラノだったらどうか。これはどう見ても成功できない。実際ここまで極端な例はないとしても、一致具合が重要で80%と90%では雲泥の差。100%に近くなればなるほど火力が上がり倍率は無限大となるのがポケモンとの違い。

 元々の知名度やスター性以外で売れた歌手には、全てこの奇跡が起こっている。たとえ一発屋で終わろうとも、その楽曲だけはボーカリストのタイプ一致だったのである。
 逆に、ボーカリストは自分の好きな楽曲・ジャンルを歌うだけでなく、全然畑違いのジャンルに目を向けてみるのもいいかもしれない。これはボイトレレベル=発声できるできないの話ではなく、表現者として幅が広がるということである。
 もっとも最近売れるような人はボーカリストに限らず幼少期から音楽マニアで、音楽偏差値がものすごく高い人が多くなっている印象。自己プロデュース的に、最初から自分の能力・メンタルを熟知し特定ジャンルに狙いを定めているのかもしれない。

 今時のボーカリストはネットで音楽Pに「発見」され抜擢されることが多い。なので結局、幅広く「歌ってみた」をやりコツコツと活動していくことが大事なのだろう。ただしその「歌ってみた」の選曲から、ボーカリストタイプ一致を狙っていくことが重要である。