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ダウン症マオリの発達ストーリー第5話。トレーニングしながらも、あえて発達から目をそらす事の大事さ。
*これは一般法人Maorisができあがるきっかけになった一人のダウン症をもつ少女と、アメリカ帰りの療育セラピストとの発達促進ストーリー第5話です。
前回までの発達ストーリー
ダウン症のマオリは、歩けるようになったことを機に、療育難民になってしまう(当時2歳)。偶然出会ったセラピストのところに通うことになり1カ月が経過。
娘の発達を、アメリカで特別支援教育を学び、現地の療育の現場で経験をつんだ先生の考え方やテクニックなどを織り交ぜながらご紹介します。
2015年9月度の発達促進教室でのプログラムと娘の様子
1. 模倣遊び(セラピストの模倣をさせる)
① 粘土《こねる、指先で押す、手のひらで押す、セラピストの真似をする》
:自分からころころ捏ねながら『こ、、こ、、、』という。遊びながら色々な音をだせるようになった。
② ケーキ《ナイフを使ってケーキを切る、お皿にのせて、食べる、赤ちゃんに食べさせる》
:ケーキを切り、お皿にのせ、赤ちゃんに食べさせる等の動作模倣ができた。
③ 積み木《重ねる、横につなげて電車づくり》
:電車づくりまでできた。
④ 赤ちゃん《食べさせる、寝かせる》
:赤ちゃんのお腹をポンポンと軽くたたき、寝かせる動作模倣が上手にできた。
2. 微細運動
① 床でのプットイン(大中小)
:小さめの物は右手を使い、大きめの物は左手を使う練習ができた。
② お絵描き《殴り書き、横線、縦線、両手描き》
:自ら『ブーブー』と音を出しながら(以前まで絵をかくときに教えていたこと)左手で書くようになった。
3. 粗大運動
① ボール投げ
:セラピストが投げるのを見て、上手に投げることができた。まだチャッチするのは難しい様なので、様々な大きさのボールで練習していく。
4. 身体づくり
① 体幹体操
② 体幹マッサージ
③ 足裏マッサージ
④ クロス運動
:今まで触られるのが嫌だったところを触らせてくれるようになった(=自宅での練習成果)
5. 言語練習
① 音声模倣(発音明瞭):やって、ま、やる、くるくる、あいよ、わんわん
② 〃 (〃不明瞭):あけて(「て」)、できた(「た」)、はいった(「た」)、たかい(「た」)、やりたい
:色々なことばを聞いて頭の中には入っていると思う。それを少しずつ表出できる遊びをこれから取りいれていく。音声模倣ではなく、自発表出は実際に増えている。
一か月で見せた変化
【模倣遊び編】
・それまでの親指に加えて、さらに人差し指も上手に使えるようになってきた
・指先を使うことに興味がわいてきたので、翌月からは指先をつかう遊びをとりいれていく
と先生から言ってもらいましたが、発達の段階を熟知している専門家ならではの観点だなと感じました。私が同じ観点で娘をみるのは難しいです。
【身体づくり編】
娘の身体には、「原始反射」がオンパレードで残っていたので(原始反射については前回ストーリーをお読みください)、自宅でも先生と同じマッサージを取り入れるようにしていました。するとそれまで嫌がっていたこと(例えば先生に顔を触られるなど)を受け入れられるようになってきたようです。
今あの日々を振り返って
我が家では、朝から晩まで娘の発達につながることをやっていたわけではありません。
むしろ2歳上の長男(娘の2歳上)の気持ちを考慮し、当時幼稚園の年少だった息子の生活をあえて優先させた日々を送っていました。
息子の幼稚園は行事が多い園だったし、お稽古にも通わせていました。それに息子のお友達をしょっちゅう自宅に招待したり、公園で集まったりと、いつもみんなで遊んでいました。そういった全ての予定に娘を連れ歩き、そこに娘も一緒に参加させるといった毎日でした。平日はほぼ何かしらの予定が入っていって、今思えばこういった日々が娘の成長に役立ったのかもしれません。教室で教えてもらった「模倣」や「言語」のスキルを、こういう日々の中で実践練習ができたからです。
マッサージなどの身体のケアは、「あえて」その時間を設けるのではなく、お風呂に入ったときや、着替えるタイミングなどの「ついで」に行っていたので無理なく実践できました。
これが娘の発達促進を目的とした日々だったとしたら、プレッシャーと息詰まり感で心の健康を保つのが難しかっただろうと思います。
よく先輩ママさんから「ママの笑顔が一番だから。子どもの発達より、先に自分の笑顔をつくることが大事」とアドバイスをもらいました。今ふりかえると、本当にその通りで、息子の幼稚園生活を通してのママ友たちとの出会いを通して、みんなでお茶をしたり、育児の悩みを聞いてもらったり。平凡でも1日1日を楽しむことが、家庭内の平和のもとになったように思います。「障がい」がうみだす「暗闇」に我が家が飲み込まれることはなかったです!逆に「楽しさ」がうんだ「光」が家族を明るく照らしてくれました。
参考情報として2015年度マオリの発達目標
【短期目標】
・身体のケアを目的とした体操やマッサージを少しずつ取り入れられるようになること
・遊びのバリエーションとその時間を増やすこと
・遊びを通して物の名前や機能を学ぶこと
・音声模倣(言語)が上手にできるようになること
【長期目標】
身体の変化、安定した歩行、原子反射の統合、言葉の表出向上
*Maoris組織の詳細やメンバーについてはHPをご覧ください。https://maoris.jp/
*Maorisはオンラインで発達促進を学ぶサークル活動を行っています。セラピストを含む専門家からの情報発信、コメント欄を通してのセラピストとのコミュニケ―ション、そして定期的にセラピストとメンバーでのZOOMお茶会を開催しています。メンバー募集中です。