彼女の生理日把握はありか 共有アプリから生まれる男女の優しいコミュニケーション
※2019年06月26日BLOGOS掲載記事
タブー(禁忌)」という言葉。
調べてみると、ポリネシア語で「タプ(tapu)」という言葉が語源のようだ。
「tapu」は、聖と俗、清浄と不浄などを区別し規制する行為を意味する。ポリネシア地方では、「tapu」は「月経」という意味でも使われていた。
その経緯からもわかるように、今も昔も「生理」というものはタブー視されがちである。
そのため、当事者でない男性には理解が難しく、生理用品の大切さはもちろん、PMS(月経前症候群)という症状を知っている方が少ないように感じる。
女性の私からすれば、「生理」は、毎月1回訪れ、自分の生活の中に水のごとく溶け込んでいる極めて日常的なこと。生理のスケジュールを考えながら旅行プランを立てたり、デートの予定を立てたりと、少々大げさかもしれないが、生理と共存しながら生きている。
そんな、自分の体調や心の変化にも大きく関わってくる「生理」だからこそ、一緒の時間を多く共にするパートナーにも知って欲しいと思い、今年に入り彼に生理日共有を行うことにした。
以降、「もうすぐPMSきそうだけど仕事の方は大丈夫?」「今日は生理2日目だし、ゆっくり過ごそう」というコミュニケーションが生まれ、私の心と身体は随分救われた。また、彼自身も、私の「無自覚な不機嫌」に対して、困惑することがなくなったと話していた。
こんな経緯もあり、私は生理日のパートナー共有に対して、大いに賛同している。しかし一方で、マイナスな意見もある。
2010年にルナルナが始めた「ルナルナ~彼女の医学~」というサービス内の生理日や排卵日をメール通知するという機能に対し、Twitter上で「気持ち悪い」「気を使えということか」という意見が目立った。
そこで、今回生理日共有ツールを提供している、女性のための健康情報サービス「ルナルナ」の事業部長、日根麻綾さんに、生理日共有から生まれるパートナーとの関係性についてインタビューした。
生理日予測サービスは、男性の声がキッカケで生まれた
工藤:そもそも生理日予測ツールは、なにがキッカケで生まれたんですか?
日根さん(以下敬称略):サービスを構築していた2000年頃は携帯を活用した企画案を社外の方からたくさん募っていたんです。
その中のひとつで、社外の男性から「生理日予測ツールを作りたい」という案があり、開発がスタートしました。
工藤:男性から生まれたサービスとは予想外です。
日根:案を出した男性は、娘さんのためにこのサービスの原型となるアイディアを考えたと聞いています。家族旅行(温泉やプール)のスケジュール調整のためにも、娘さんの生理日を把握したかったのかもしれませんね。あるいは彼女に自分の生理周期をきちんと管理してほしかったのか。
工藤:基本的には女性の利用者が多いと思うのですが、男性も利用していたのでしょうか?
日根:当時はガラケー時代なので、生理日予測を卵メールというメールでお知らせしていました。常に1-2%ほど男性ユーザーがいたようです。
今でも、決して多くはありませんが、アカウントを作って女性の生理日を把握している男性がいるようで、社内にも使っている男性社員がいます。彼は結婚した後、奥さんの機嫌にすごく波があることに気づいたらしく、仕事を通してその波の原因は生理なのでは?との思いから、体調を把握するようにしたそうです。
あと男性からは、結婚後も夫婦の関係を続けていきたいけど、奥さんの負担が少ないとき(排卵前後の性欲が高まる時や生理前後の不調が無い時)に誘いたいという声も聞きますね。
彼氏や夫の9割が生理周期などを知りたがっている
ルナルナが2010年3月に20代-40代の男性600人に対して実施したアンケートでは、「彼女もしくは妻など特定のパートナーの女性特有の体調について知りたいか。」という問いに、90%の男性が「知りたい」「まあ知りたい」と肯定的な回答していた。
そこでルナルナは、同年に女性の生理周期や健康情報をパートナーに共有できる「ルナルナ〜彼女の医学〜」という生理日共有のサービスを開始。このサービスでは、生理日予測の他にも、妊娠しやすい日・しにくい日などもメール通知をしてくれる。
※現在「ルナルナ〜彼女の医学〜」のサービスは、ルナルナの有料機能(パートナー共有機能)として利用できる。
工藤:女性側からも「生理周期を彼に知っておいて欲しい」というニーズがあったのでしょうか?
日根:開発段階では、体調や、妊娠に適したタイミングがいつなのかをパートナーに直接言いにくい妊活中の女性が多く利用するだろうと予測していました。
しかし実際にリリースしてみると、妊娠希望のカップルは半数。残りの半分は妊娠目的ではないけど、体調を共有したいという目的で使われていたんです。そこは正直予想外でしたね。
ルナルナの生理日共有機能は、パートナーの承認が得られたら毎回自動通知してくれます。「今日生理で体調が悪いんだ」と1回だけなら伝えられると思うけど、毎回伝えるとストレスですし、喧嘩中で言いづらい時だってある。直接伝えなくていい、毎月自動的に第三者であるルナルナから通知されるという所にメリットがあると感じます。
カップル内での生理日共有を「キモい」という声も
工藤:ネット上で「生理日を共有することがキモい」「気を使えということか」という声もあります。
日根:人それぞれだなと思います。生理日共有機能は、知られたくない、共有したくない人には適していないと思います。そもそものパートナーとのコミュニケーションや、ご自身の身体や性に関する意識を解放している人じゃないと扱いにくいのかなと思いますね。
逆に、直接生理を伝えられる女性にも不必要な機能だと思います。そういった意味では、現在万人ウケのサービスかと問われると、そうではないかもしれません。自分の身体のメカニズムを相手に伝えられないけど、知っていて欲しいと思う女性や、パートナーの体調変化を知っておきたいという男性に向けサービスです。
工藤:実際に使っている方からどんな声があるのでしょうか?
日根:通知が来たとしてもどうしていいかわからなかったけど、それをキッカケに彼女と生理について話す機会が増え、気遣いができるようになったという話や、女性がこんなに辛いとは知らなかったので知ることができて良かったという声を聞きます。
工藤:逆に、生理日共有のデメリットとはなんでしょうか?
日根:自動通知に頼りすぎることはよくないと思っています。基本的に男女の関係はリアルなコミュニケーションです。なので、生理周期が共有できても、リアルなコミュニケーションがとれていなければ意味がないと思います。「共有しているんだからわかって当然」という気持ちの女性には向いていない機能かもしれませんね。
工藤:確かに、生理日共有機能があるからといって「わかって当然」「優しくして当然」という態度になってしまうと、男性側が負担を感じてしまいますね。互いのためを思って活用したサービスが、逆に関係性が悪化してしまう可能性もあると思います。
日根:異性の身体のメカニズムについて、知らないことがあるのは仕方ないと思います。でも、互いの体調変化を知ることによって、良いコミュニケーションをとることができると思うんですよね。ルナルナの生理日共有機能は、あくまでその「体調変化を知る」というキッカケを促すものだと思います。女性の生理日周期を男性が知ることによって、男性側の身体の変化も話しやすくなると思います。
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元々は男性の「家族の生理日を知りたい」という声から生まれたルナルナ。
生理自体がタブー視されてはいるものの、女性の体調の変化を知りたい、大切な人の心と身体の健康状態を把握したいというニーズは、少しずつ大きくなっている。最近では、男性側からもパートナーの生理周期を知る大切さについての発信が増えたようだ。
もちろん、この生理日共有に対して「気持ち悪い」と思う方も一定数いるだろう。
しかし、「気持ち悪い」で思考を終わらせず、その後の互いのコミュニケーションについて一度考えてみても良いのではないだろうか。
「生理日の共有」は、お互いを想い合う、優しいコミュニケーションをとるキッカケになるかもしれない。
※写真は全て「写真AC」「イラストAC」より
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