ラジオと私
いつも私の頭の中は忙しい。
街を歩いているときも、
仕事中も、ちょっとの隙間があると
頭の中のもう一人の自分が
先の先まで考えて心配したり
過去のことを振り返って悔やんだりして疲れてしまう。
「来週使う材料、早めに準備しなきゃ。」
「あれ、そういえば料理用のお酒、まだあったっけ?」
「あの言い方、分かりにくかったかなぁ。もしかして伝わってないかも。」
「あんなこと言わなければ良かったなぁ。」
そのほとんどは、今考えなくてもいいようなことだけど
一度考え始めると、頭の中の自分はとてもおしゃべりになり、
止めることができない。
でも、この頭の中の自分ミニが、
珈琲飲みながら静かに休んでくれる時がある。
それは
絵を描いてる時、
家族とおしゃべりしてるとき、
ラジオを聴いてる時だ。
音楽を聴いてるときも比較的静かだが、
その時の気分にぴったりする曲を上手くチョイスできないと、
すぐにおしゃべりを始めてしまうので、毎回ギャンブルだ。
夜寝るときは、家族とおしゃべりできないし 絵も描けないので
自分ミニを静かにさせるため、必然的にラジオのお世話になる。
この夜聴くラジオは 声のトーンと速さ、言い回しなどがとても重要で
自分ミニを静かにさせるための、
私にとって耳障りの良い声というのが存在する。
今はmabanuaさんの「50号より愛を込めて」と
星野源さんの「オールナイトニッポン」が一番耳にぴったりくる。
トーク内容に左右されず、耳と心が落ちつく番組だ。
mabanuaさんの声は、
(本人はご自分の声があまりお好きではないようだが)
トーンが安定していて、話の内容も身近な物から音楽まで幅広く、
話す内容に温かい心遣いが感じられる。
この声を聴いていると、
頭の中の自分ミニはとても静かでくつろいでいるように思える。
30分番組なので気軽に聴けるし、
何回も繰り返し聴いているうちに、眠りの世界に誘われる。
星野源さんの声はとても誠実で、話す内容も思慮に富んでいる。
楽しいときは素直に喜び、悲しいときはリスナーと悲しみを共有し、
きっと聞き手のことを思いながら、
かなり考えて話しているのだろうけれど、
そんなことを感じさせないくらい
自然に感情を表現されている気がする。
笑い声や「バカじゃないの」の声も温かく、
リスナーとの距離がとても近く感じる。
いつもラジオの前の「あなた」一人に向かって
話しかけてくれるところが好きだ。
放送時間が2時間とロングなので、
リアタイするとき以外は何回かに分けて聴くのだが、
同じ所を何度もなぞるように聴いても、
毎回新鮮な気持ちで聴く事ができる。
源さんのイマジナリーフレンドであるニセ明さんの、
ねっとりとした声のトーンに反して
誠実で真摯な人生相談にも救われる。
寝るときに聴くと、ラストまで聴かずに大抵夢の中だ。
ラジオというのは本当に不思議な媒体だ。
ずーっとおしゃべりを聴いているのだから、
落ち着かなくなったり興奮したりしそうなのに、
スンと心が静かになる。
映像がないから、声から想像することしか出来ないのに
お話している様子が映画のように頭の中に広がる。
きっとその映画を、頭の中の自分ミニが珈琲飲みながら見ているから、
スンと静かなんだろうと思う。
本当は道を歩くときや電車に乗るときも
ラジオのお世話になりたいのだが
身のまわりの音も聞きたいので我慢して、
頭の中の自分ミニとお付き合いしている。
私はきっとこれからも、
ラジオから流れてくる声に助けられながら、
人生を歩いて行くのだと思う。
おしゃべりで心配性の自分ミニとうまく付き合っていくために、
これからもラジオに助けてもらいたい。
そして自分ミニが、頭の中でくつろげるラジオ番組が
増えることを願っている。