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忘れるということ
三人目を妊娠し、絶え間ないエンドレスつわりに見舞われたとき、
「なんでこれ忘れてたのかな・・・」
って思った。
一人目も、二人目も生むまでつわりで、仕事の時は不思議と元気だったが、反動で職場から一歩出ると胃の中がひっくり返るようだった。
当然便器とお友達の毎日。
上の子がいるから食事は作らざるおえず、
作って吐いて、作って吐いて・・・・。
「もう吐くのもけっこうプロの域だな。」
などど、便器抱えながら自嘲気味に思ったものだった。
それがまたやってきたのだ。3人目のつわりが始まると、過去二回の辛かった思い出が、もう昨日のことのように思い出されるのだが、それまではすっかり忘れている自分がいる。
むしろ
「今回はなんか大丈夫じゃん・・?」
みたいな、どこから湧くのかわからない無駄な自信すら湧き出す。
そういえば子供のころからそうだった。
車酔いがひどくて遠足のたびに酔っていて、バスの隣の席はいつも保健の先生。弁当で持たされたおにぎりの海苔は、消化が悪いと全てはがされ、
遠足の写真は、この世の終わりのような顔をした写真しか残っていない。なのに遠足を欠席したことがなかった。
母親は担任から
「車酔いがひどいのなら、遠足に来なくていいです。」
と言われていたようだ。そうだよな、毎回確実にゲロはく子供連れていきたくないよな・・。しかも車降りても治らないから、付き添いの先生におんぶしてもらったりしてたし。遠足の日は毎回親が学校まで迎えに来て、引きずるようにして連れて帰り、すでに部屋に準備された布団に寝かされる。そして翌日まで頭の中がぐるぐる回って、気持ち悪くて一歩も起き上がれない。
でも母親は
「病気じゃないんで連れてってください。」
と毎回きっぱり担任に告げたようで、さすがとしか言いようがない。
で自分はというと、忘れるのだ。そのすっごい車酔いを。
そして、
「なんか次はいけそうな気がする・・」
という無駄な自信で参加するのだ。中学生になって強力な酔い止めが発売されるまで、車酔いに関しては玉砕だった。
忘れる・・・と書いたが、でもこうして文章を書いていると、そのころのことを思い出す。ということは忘れてはいないのだろう。脳には引き出しのようなものがあって、なんか上手に収納されているのかもしれない。
たまにアルバムを開いて
「ああ、そうそう、こんなことあったよね。」
って思い出すように、時々引き出しが不意に空いて思い出すみたいな。
出産が死ぬほど痛くて、ほんと鼻からスイカ出すくらいな勢いだってことも、上手に引き出しにしまわれるから人類は滅亡しないんじゃないかな。
なんだかわかんないけどあの時は大変だったよ、って笑って話せる脳の構造を持つ人間て、不思議ですごい。