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21日間の21の間——「インディゴの気分」視覚テキスト分析(第14の間と第15の間)

作者 Maomono
翻訳 sekiisekii

第14の間 言葉遊び


第二話と同様に、第四話は主に繋ぎの機能を果たす。二人の関係のターニングポイントは第三話にできたので、少し楽に見える第四話の任務はただ一つ、スクリーンの前で物語をハラハラしている視聴者に強い引き裂きの前の息をつく時間を与える。いくら避けようとしても、物語の進展が止められないから、その前の温存を楽しもう。

第14の間は第四話の始まりを取り上げる。城戸が原稿を受け取りに蒲生田家に来て、蒲生田がおもてなしをする。城戸と木島が顔を合わせるのは、あの夜以来のはじめてのことだ。この頃木島は順調に官能小説処女作を書き終え、自己開発も終えており、また、先生の蒲生田とは気が合い、ずいぶん親しくなっている。一方、転職して復縁することを彼女に告げたばかりの城戸は、それまで求めていた人生の幸せは味を失ったと感じる。そんな二人が蒲生田家で出逢えば、たちまち劇的な出来事が発生することが想像できる。また、部外者の蒲生田がさらに煽れば、二人の角力が面白くないわけがない。中で、もっとも興味深いのが「鬼島蓮二郎」誕生エピソードである。

ペンネームをつけるというシーンは、木島が席を立ち、蒲生田に野菜ジュースを持っていくシーンを受ける。蒲生田が城戸に木島のいいところを話し始めると、城戸は何度も頷いている。おすすめのお店は美味しくて安いし、いいね、と言われると、料理を作ったのは自分じゃなくても、推薦人は自分の目が肥えていることに嬉しくなると思われる。城戸もそうだろう。性別を理由に自分が推薦した木島の弟子入りを一度断った蒲生田が今度木島を絶賛しているから、城戸はさらに、断れられた恥をはらった快感もある。賛美はここまでくると大体いいが、蒲生田はただの作家ではない。木島が女だったら抱いちゃうと口にした。普通、それを冗談として聞き流すこの言葉は、木島の性別を超えた魅力を知った城戸はすぐ警戒心が高まる。
木島は席に戻り、ごく自然に蒲生田の隣に座る(ただ、最初の席とは違う)。木島が二人に、さっき何の話をしていたのかと訊ねると、蒲生田は冗談を言った。木島は気を悪くした様子もなく、逆にその場に乗り、師弟は笑い合う。注意深い視聴者は、このシーンは「インディゴの気分」の中でも珍しく、木島と城戸が同じ画面の中で行う対話でないことを気づくかもしれない。監督は肩越しショットを使用し、一方は城戸で、もう一方は木島と蒲生田で、対立を形成する。芽生えたばかりの嫉妬のせいで、城戸はこの師弟関係に疑問を持つ。ごく短い期間だが、こんな冗談をよく言えるのだ。加えて城戸は木島の顔を見たとたん、あの夜のことを思い出し、独占欲で狂ってきて、勝手に二人の関係を想像しはじめる。その時、BGMが流れ、蒲生田が木島に強くて色気のあるペンネームをつけようと提案する。この音楽は「ポルノグラファー」から援用して、タイトルが「言葉遊び」で、ここで使ってとても垢抜けて適切だ。鬼の訓読みはおにで、音読みするときになり、鬼島は木島と同じ読みをしている。「蓮」も同じで、訓読みはハス、音読みはレンで、名前の蓮二郎というのは、理生と最初の響が一緒であろう。

さらに、鬼島蓮二郎という名前は、木島理生(Kijima Rio)の頭文字と同じK.R.で、蒲生田は木島に付けたペンネームを気に入ったに違いないが、若手二人はそれを聞いて、ともに勘弁してくれという感じをする。文学青年の木島は受け入れにくいし、担当編集者の城戸は昭和くさくて、アピールしにくいと思っている。木島は、蒲生田が自慢にこちらを見て、自分と気が合う弟子に拍手をしてもらいたいと分かりつつ、どうせ城戸君は世間の古株で、なんとかできるだろうと思い、気のきいたことを城戸に投げた。さっきまで嫉妬に溺れていた城戸は、木島が投げてきた話を受ける準備ができておらず、作り笑いを浮かべて、そういうのも追々……考えないとですねえ、と言う。木島はその程度かと思い、作り笑いを合わせて場を和ませた。蒲生田はもちろん、二人が自分たちの言葉を相手にしていないことは一目でわかり、改めてペンネームの重要性を強調する。

城戸を演じる俳優の吉田宗洋はのちほどこのところを見ていて、遊び心を持って竹財さんと掛け合いをしていたと言った。二人のキャッチボールは、お互いに信用があることを示す。二人は対立していても、妙な一体感を持っている。見た目でのライバルだが、人目のないところでは手をつなぎ、言葉でふざけ合うのはこういうことだ。気の毒な蒲生田はたちまち孤立されてしまい、不機嫌になる。すると、彼は占い師に先見の明を証明しようと立ち上がり、電話をかけようとするが、その直後に発作で机に倒れる。木島は急いで立ち上がり、蒲生田の様子を見る。この間の付き合いで、木島には蒲生田に対して先生と親父のような気持ちを生じているが、城戸は蒲生田と仕事の関係しかなく、木島への独占欲が爆発して嫉妬する。蒲生田は城戸の仕事上の切り札だが、先生のことでバタバタしている木島と比べて、城戸にとってそれは対岸の火事のようだ。

三人は部屋を出て縁側へ出た。この縦の構図は、前景と遠景の設置で再び対立する二方になる。前景に木島は蒲生田の手を支えているが、遠景には、嫉妬の火が燃える城戸が二人を見ているのが見られる。この恋する男は動物のように縄張り意識が急に高まり、効果音のうなる風の音がその嫉妬心をさらに煽る。蒲生田の説明を従順に聞いているが、前景にいる二人が消えると、狩るような眼つきをあらわにする。風に吹かれて木戸がガタガタと音を立て、獣はそこに一時的に待ち伏せる。

第15の間 出版社にて


これは第四話の最後の間だ。次の間から、どれも心が痛むため、私は逃げると思いながら本シリーズを無理やり続いている。今度は城戸がいる出版社での編集会議のシーンをとりあげる。二人が作家と担当編集者として、仕事の場で顔を合わせるのはこれが初めてだ。そのとき二人の関係は仕事の面でも恋の面でも頂点に達している。交際を内緒にする恋人同士が仕事の場で打ち合わせることは、何かが起こると予感される。

城戸はロビーに入って木島を迎えようとし、周囲を見回す。二度目にロビーのソファに目をやったとき、木島の後ろ姿にようやく気づき、三秒ほどの沈黙の後にようやく声を出して呼ぶ。なぜ城戸は木島を一目で見なかったのか。打ち合わせには必ず約束があり、その時間帯に木島が訪ねてくることを城戸が知らないわけがない。第一話で斎藤が木島について語っていたことを思い出してください。その頃の木島は退廃的で、たるんでいた。城戸が木島家に下宿してから、木島は気を取り直し、生活や創作が徐々に軌道に乗り始めた。蒲生田の教えをいただき、ようやく官能小説として再デビューするとき、木島はすっかり元気を取り戻している。城戸が蒲生田家に原稿を取りに行ったとき、二人は顔を合わせたにもかかわらず、そのときの木島は彼にとって完全に恋しく、欲望の対象だった。が、今度、ロビーに現れたのは、作家としての木島で、創作エネルギーが百パーセント回復した木島だ。士、別れて三日なれば、即ち更に刮目して相い待つべし。見渡して二度目にようやく木島の姿を認めた城戸は、その背筋の伸びた背中を見て、スランプから完全に抜け出し、以前の自信を取り戻していることを知る。城戸が小走りに行って木島の名を呼ぶと、木島は恋人が迎えに来たのを見てほっとし、久しぶりに新刊の打ち合わせは久しぶりだなを遠慮せずに言う。その言葉には時間が経つことへの感慨と城戸への納得がある。城戸の助けがなければ、新刊の打ち合わせは二度もないかもしれない。そのような木島を見て、城戸も笑った。このシーンは水谷社長役の山中聡さんのクランクアップのシーンでもあって、オフショットの中で、待機中に城戸と木島が二人並んでいるのを見ていて、これはありだと思ったことを語る。

城戸がこちらへどうぞと自慢げに木島を自分の勤める立派なオフィスに案内する。これは担当編集者としても恋人としても、かなり自慢な瞬間だ。木島は再デビューした作家としても、城戸の恋人としても、城戸の同僚や上司に会うときも幾分緊張する。彼はこっそりと背中に手を回して服の皺を取る。何気なくペンネームの話を持ち出した城戸は、本名で本を出すという社内の主張を木島に伝えるが、あくまで官能小説なので、木島の考えを尋ねる。社内の主張とは水谷社長のもので、城戸が社長の営業戦略に不満を持ち、木島理生という名前を守ろうとしている。しかし、ここは城戸の職場で、木島に社長はあなたの名前を利用しているよとはっきり言えるわけもなく、彼にできることは、木島に根回しをしておいて、これから社長と会うときに、うかつに承諾しないでと注意することだ。木島を官能小説の道に進ませたのは城戸だが、城戸は木島の才能を大切にしているし、第一話で彼を次の偉大な作品を書く前のつなぎという言葉も偽りではない。木島が遠慮なくいつでも純文学に戻れるように、城戸は木島理生という看板を精一杯守っている。

二人はロビーで木島との会議に駆けつけてきた水谷社長にばったりと会う。社長がいることは、二人に仕事の場にいること、特に城戸が社畜であることを忘れてはいけないに注意される。社長が木島先生と呼んだ瞬間から、ビジネススマイルを最後まで維持している。社長が現れるとすぐ木島に馴れ馴れしく、すぐにわかったよという姿勢を見せる。木島は目の前の人が誰かかわからない戸惑いの顔で城戸に向かう。このようなうわべだけの社交の場では、社畜城戸は木島先生の杖(あるいは盲導犬)のような存在とも言える。社長はコートの中で名刺入れを探っているが、気の利く城戸が気の利かない社長助手に名刺を差し出すよう注意した。気まずくならないように、社長は自ら名乗って木島と握手をした。それからの演技はすべて役者のアドリブだ。社長は木島に寒いかと気遣ったり、木島の背中を叩いたりする。まるで成長したばかりの金のなる木を叩くように。

会議室でのシーンは、まずコーヒーを注ぐ城戸の手がクローズアップされる。その背後に、社長は蒲生田とわかめ酒を飲んだことを話している。お茶くみは、東アジアの社内政治の中で、権力関係が最もよく表れるところであろう。この場では、社長は木島(木島が稼いでくれた出版社の資産に当たる)に頼み、または城戸の上司だ。この会議室で城戸は権力連鎖の最後尾に当たり、道理でお茶くみは彼が担当する。こういう時、まずは作家の木島にコーヒーに出し、その次は社長だ。社長が蒲生田のことを気まずいじじと言って、木島を不快にさせたら、城戸その場を和ませるために、作り笑いを添えなければならない。空気を読むことは社会人としての基本的な生存能力であり、才能あふれる作家の木島は嫌なことを顔に出すことが許されるが、城戸にはそんな特権はない。さっきまで木島が認めてくれて胸を張っていた城戸は、今では恋人の前に横で90度のお辞儀をする。社長が木島に頭を下げただけなのに。このとき、カメラがブラインド隠しから会議室に入ってきて、何が明かされることを示す。案の定、社長は立ち去る前に爆弾を投げ捨てる。

社長は木島に、城戸は担当編集者をやめると、何気なく告げる。これは社長の本当の何気ない行動か。おそらく城戸の転職に対する復讐の意味合いもあろう。木島は案の定、立ち上がって問い詰めようとする。二人のつかの間の甘美な恋愛を洗い流そうとする嵐がそろそろ来る。

では、次の間で。

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