【華Doll*考察】 Loulou*diと「喪失」(~2nd「Meet」ネタバレ)
前記事では、「華Doll」のAnthos*について考察した。
続いて、Loulou*diについても、同じく「喪失」というテーマで考えていきたい。
以下、重複するが…
「華Doll」のYoutube公式チャンネルでは、ドラマパート・楽曲MVの一部が公開されている。太っ腹すぎて心配になる。
とりあえず、私が上記のサブスク公開分(~Meetまで)だけを履修済みである。最新盤は来週購入予定なのだが、それを聴く前に考察を書きなぐっておきたかった。
以下、楽曲・ドラマパート・MV・パンフレットなど、すべてのコンテンツのネタバレを含む。そして、「華Doll*」関連の情報すべてを網羅していないうえでの、考察という名の妄想、二次創作であることにご注意いただきたい。
ご不快に思う方はこの時点でUターンをお願いしたい。
画像はほとんど出さないつもりだが、すべて公式HP(https://hana-doll.com/)・公式Twitter(@Amagiri_Prod)・公式チャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCxAHYHVXlnenUHmGzt4HOTA)からの引用である。
1.「完璧」の足元にある「喪失」
(前記事と同じ内容であるため、既読の方は飛ばしていただきたい)
公式によれば、「華Doll*プロジェクト」とは
とのこと。
言い換えれば、「不完全」なものを「完璧」にするということ。
このプロジェクトの前提には「不完全」があることを忘れてはいけない。
つまり、DolLたちの「完璧」な華(花)は、「不完全」という土台の上に咲いている。
それはもともと持ち得ていないものである場合も、途中で喪失した場合もある。私は今回この考察記事を書くにあたり、「喪失」の方に注目したいと思っている。
もともと持ち得ていないものよりも、「失った」もののほうが、そこに強い思いが宿ると考えているからである。
この種子システムについて考えているところもあるのだが、それを大々的に語るには情報が不足しているため、機会を改めたい。まずは、人間関係から本作を捉えていきたいという趣旨である。
以下、Loulou*diのメンバーそれぞれの関係性を「喪失」というテーマで整理していきたい。
2.櫻井鬨―「肉体」の喪失
まずは、新メンバーである櫻井鬨の場合から考えていこう。
特にヒントとなるのは「Idéal」のドラマパートと『Final Direction』 MVである。
彼の生い立ちを確認しておこう。
何らかの理由で、陽汰と同じ孤児院で育った。その鬨、彼の両足は動く状態ではなかったという。『Final Direction』のMVの中で、「munchausen syndrome by proxy(ミュンヒハウゼン症候群)」の文字が見えることから、おそらく彼は虐待を受けていたと考えられる。
それが施設入所前なのか、出所後なのかはわからない。もし入所前なのだとしたら、疾患ではなく虐待によって足を負傷した可能性もある。
となると、鬨が喪失したのは「肉体」である。
それを埋めるべく、「種」を受け入れ、Loulou*diのメンバーとなった。
なぜLoulou*diを目指したのかという部分は明らかになっていないが、陽汰が目指していたアイドルというものを意識的に追っていた可能性はある。
また、『Final Direction』で「言い争いをする男女」の前に亜蝶が出てくることから、虐待や両親の不仲とい厳しい環境の中で、強く気高い亜蝶の存在が救いになった可能性は高い。
鬨が失ったのは「肉体」だけではない。
詳細は「Idéal」のドラマパートを聴いていただきたいが、施設において鬨の味方だったのは「クマのぬいぐるみ」と「陽汰」だけだったのだが、まずは「陽汰」を失った。それによっては陽汰に対する「嫉妬」「執着」「恨み」など、複雑な感情を募らせることになった。
そして、その感情を抑えきらなくなったために、「Idéal」では、Loulou*diという居場所を失う危機にさらされた。
結果として、ルイの「処置」により、それは回避された。しかしそれは同時に、幼少期から鬨がはぐくんできた「彼そのもの」の部分をも、失わせることであったように思う。詳細はルイの項目で述べたい。
『Final Direction』のMVのことにも少し触れよう。
鬨の手には「明るく丸いメリーゴーランド」。彼の瞳の中には太陽が光っているが、最終的に彼は目隠しをされ、それは見えなくなってしまう。
恨みや怒りの感情と共に、鬨の中から陽汰の存在は消えてしまった…(というか抑圧されてしまった)という意味に思える。
鬨は、華プロジェクトにより肉体の喪失を回復したが、かわりに、自身の根幹部分を失った可能性が高いのだと思うのである。
3.氷薙ルイ―「感情」の喪失
現在のところ最も難解だと思われるのがルイだ。
亜蝶の忠実なしもべのように見えて、実はそうとは言い切れないことが「Idéal」ドラマパートで明らかになった。
様々な考察が可能であり、彼が血液型不明ということから「人ならざる存在」と見る方もいるだろうが、個人的には「Doll」たち全員がもはや「すでに=人ではない」と思っているので、それ以上の存在はいないのでは…と思っている。
では、彼は何なのだろうか。
現段階では情報があまりにも少ないため、以下は本当に妄想だと思っていただきたい。
前提として、ルイは「嘘はついていない」と思っている。
そう考えると、重要なのは以下の点である。
・(亜蝶が本当に望むことなら)亜蝶の言うことをなんでも聞く
・最後の一人になっても亜蝶に「ついていく」「裏切らない」
・亜蝶が「自意識のはざまでもがく姿を見るのが好き」→眩しい、「生きている実感」を得る
ルイの言葉を借りれば、「華」は「宿主の感情を食い物にして花開く」。
単純に考えて、感情が強烈であればあるほど、華は美しく咲くことになる。
それはつまり亜蝶ということになる…
そしてその激情のために、亜蝶は絶頂期(を若干過ぎた時期)において、種の暴走と、宿主の衰弱というギャップに苦しんでいるように思われる。
ではルイはなぜそんな亜蝶を見ることが「生きている実感」だと言うのか。
私は、彼は「感情」を喪失しているのではないかと考えている。
先天的なのか後天的なのかはさっぱりわからない。しかし、彼自身の感情を問われても全く答えず、すべて亜蝶という存在を介して想いを述べていることを考えれば、「亜蝶によって感情(らしきもの)を感じられるようなった」と言ってもいいのではないか。
そのように捉えていくと、『Empty Dream』のMVは、亜蝶が目指す夢(≒チヒロ)を歌っているように見えて、実はルイが亜蝶に見ている「夢」を表現したもののようにも思える。
オペラ座の舞台で舞うバレリーナは、白鳥として舞っていても、決して「飛べない」。それでも舞う。もがきながら。それを客席から見るのは…やはりルイではないのか。
ではなぜその夢は「Empty」なのかと言えば、「Empty」に近いルイの感情や欲望を喚起し、それを満たすのが、唯一亜蝶だからではないだろうか。
さて、ではルイはそうして亜蝶がもがいて絶命するのを見届けて、その後どうしたいのだろうか。私は、「その魂を得る」のが最終的な彼の欲望ではないかと思うのだ。
ルイにとっての生きる実感、眩しいもの、唯一欲したもの…彼はそれを得たいのではないか。もしも種の摘出と移植が可能なら、ルイは亜蝶の種を自身に植えるのではないかと思っている。そしてその魂の手足となって生きるのではないか。
だから「ぜったいに亜蝶についていく」、「譲らない、裏切らない」と言い切れるのではないか…
妄想はそはここまでにしておこう。
とにかく、ルイにとっての価値ある感情とは、亜蝶の感情なのである。だからその器ごと守る。
亜蝶の感情を阻害するもの、それ以外のものは不要なのだ。
だから、鬨に「処置」を施し、それを奪ったのではないか。
そして、亜蝶の感情を均してしまう「MIZU(薬)」を極力使わないのは、何よりも波立つ亜蝶の感情を愛し、欲しているからではないかと思うのである。でなければ、彼は「生きている実感」を失うのだから。
4.雨宮快斗―「翼」の喪失
旧メンバーである雨宮快斗についても少し考えておこう。
「Idéal」での鬨の顛末を知り、彼もまた自滅の道をたどったような気がしている。
快斗=カイト=凧
である。凧は自由に飛んでいるように見えて、実は糸に繋がれて、コントロールされている。
『Final Direction』MVでは、加工した翼が折れて井戸に落ち、それを亜蝶が見下ろすシーンがある。
これこそが快斗では?
なぜそうなったかは分からない。しかし鬨の場合を考えると、亜蝶の道行を阻害するようなことがあり、ルイに「処置」された結果か、拒絶反応で…とも思える。
しかし、彼はメンバー間のもめごとでの脱退ではないと言われている。だとしたら、亜蝶と同じような「もがき」の中で自滅した可能性もある。
このあたりはさらなる情報を待つしかない。
そして『Final Direction』で気になるのは、上記の井戸に、桜の花びらが一枚落ちてきたことである。そして、鋳型で作られる人型のようなものもある。
まさかとは思うが、鬨は今回の「処置」により、雨宮のレプリカのようになっていくのではなかろうか。最新曲の鬨の歌声が若干低音になっているのも気になるところである。
5.烏麻亜蝶―「水」の喪失
最後に亜蝶である。
まず、「Idéal」でのルイに対する物言いから、亜蝶が決して「アイドルとしての先天的な素質に恵まれているわけではない」ことがわかったと思う。
ルイに対して「お前みたいだったらよかった(華が)」「いつも俺は必死に嘘をついて…」と吐露している。
そういった弱さを見せているから、ルイに対して「腹の底ではあざ笑っているくせに」と悪態をつくのだ。
言い換えれば、亜蝶はルイの真意をわかっていないのだろう。
亜蝶はプライドと理想が高いのに反して、本来の自分へのコンプレックスが結構根深い。ウィークポイントを知りながらもそれを賛美してくるルイを、やすやすと受け入れられなくて当然である。
とはいえ、亜蝶がずっと不調だったとは思えない。
少なくとも、雨宮が脱退するまでは絶好調だったのではないかと思うのである。
そもそも亜蝶の不調とはなんなのだろう。
ヒントになるのはやはり「MIZU(薬)」だろう。
MIZU=水…いわずもがな、草花の成長には水が必要である。
そして、西洋占星術などでは「水=心、愛」と定義されることが多い。
つまり、種は宿主の感情を吸い尽くしてしまうと、暴走を始めるのではないか。だから、「MIZU」を投与して補うのではいか…
あるいは逆もあるだろう。宿主の感情があふれ出し、種がダメになりそうだから、「MIZU」を投与して鎮めるということもあるだろう。
いずれにしても、「水」なのだ。
さて、ふたたび『Final Direction』のMVだが、湖のような水辺に立つ三人が印象的だ。彼らがそれぞれ「華Doll」であることを考えれば、まるで切り花が水に浸されているようである。
これはかなり飛躍した妄想だが、華DOLLたちは、もはや肉体に生命を宿していないのかもしれない。魂は華に移行しており、それは水(感情)を吸って、有限の時間、咲いているということなのではないか。
だから開花の時には、魂と肉体が乖離するようなことがおこり、痛かったり気持ち悪かったりするように思う(肉体がすでに死に近い薫は痛みがなかった…?)。
だとしたら、天霧社長がDollが退出したあとに「消毒しろ」と言ったことも納得がいく。いわば屍が歩いているようなものなのだから…
話を亜蝶に戻そう。
なぜ亜蝶は「水」を失ってしまったのだろうか。
もちろん「華」の寿命や彼の素養の限界があるのかもしれないが、私としてはやはり雨宮快斗の喪失が大きいと思う。
名前に「雨」がある。
彼が亜蝶(Loulou*di)の「水源」であった可能性は否定できない。
残ったルイは「氷」だ。彼が感情を喪失していることは前述したが、当然ながらそこから「水」を吸い上げることは難しい。
(反対に考えれば、亜蝶の生命をもってしてルイの氷が解ければ、感情が出てくる…生きることができる…?だから亜蝶が欲しいのか?)
今後、亜蝶が新たな水源を見つけるのか、それは延命につながるのか…わからないとしか言いようがない。
とはいえ、Loulou*diの楽曲は、常に時計の針の音、鼓動やペースメーカーの音が刻まれており、亜蝶も「時間がない」と発言している。タイムリミットは近い。
それまでに彼が「夢」にたどり着き、天体爆発のような光を発して滅びていく、というのが今最も可能性が高いシナリオだろうか…
ということで、Loulou*diについて考察をしてきた。
大変に深い沼で、私の頭では指の先くらいしか理解できていないことはわかっているのだが、少しでもこのグループの魅力が伝えられていれば本望である。
何度も言うが、キャラクターとしてのバランスはもちろん、キャスト3名の歌声のバランスが国宝級である。どこか謎めいて、ほの暗いのに、なぜか心地よく、聴き入ってしまう。ぜひ曲だけでも一度聴いていただきたい。
あと数日で彼らの新アルバムが発売される。
儚さが増しているかと思いきや、大変力強い楽曲である。
ドラマパートを含め、今からとても楽しみだ。
※2/4「Pensée」履修後の考察記事は↓
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!