【華Doll*考察】Anthos*と「喪失」(~2nd「Meet」ネタバレ)
なぜ私は2年以上、このコンテンツに接触せずに過ごしてしまったのか…
このたび、フォロワーさんにおすすめいただき、今さらながら「華Doll*」を履修した。
とんでもない沼であった。
いわゆる「アイドルもの」と括ることには、かなりの躊躇がある。
アイドル観が既存のものとはかなり違い、作品の主眼も「きらきら」「明るい」みたいなところには無いように思うからだ。
何よりも強調しておきたいのは、楽曲の質と密度の濃さ。ドラマパートの緻密さである。私は「アイドルを超越してしまって」スゴすぎるがために、爆発的なヒットになっていないような気すらしている。カテゴリーで損をしている、とでも言えばいいだろうか。
そして「華Doll*」は、ファンが自ら考察して楽しむ…というコンセプトの作品である。
神々による詳細なMV考察や、楽曲考察があり、これ以上何を考察するんだという状況にあることはわかっている……が、私は私なりに、考察という名の妄想を書き散らしたいと思う。
少しでも本作の魅力が伝われば、、、の一心である。
Youtubeの公式チャンネルでドラマパート・楽曲MVの一部が公開されている。太っ腹すぎて心配になる。
とりあえず、私が上記のサブスク公開分(~Meetまで)だけを履修済みであることを記しておきたい。最新盤は来週購入予定なのだが、それを聴く前に考察を書きなぐっておきたかった。
※2/2 「ES」ドラマパート履修。一部追記あり。
以下、楽曲・ドラマパート・MV・パンフレットなど、すべてのコンテンツのネタバレを含む。そして、「華Doll*」関連の情報すべてを網羅していないうえでの、考察という名の妄想、二次創作であることにご注意いただきたい。
ご不快に思う方はこの時点でUターンをお願いしたい。
画像はほとんど出さないつもりだが、すべて公式HP(https://hana-doll.com/)・公式Twitter(@Amagiri_Prod)・公式チャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCxAHYHVXlnenUHmGzt4HOTA)からの引用である。
1.「完璧」の足元にある「喪失」
公式によれば、「華Doll*プロジェクト」とは
とのこと。
言い換えれば、「不完全」なものを「完璧」にするということ。
このプロジェクトの前提には「不完全」があることを忘れてはいけない。
つまり、DolLたちの「完璧」な華(花)は、「不完全」という土台の上に咲いている。
それはもともと持ち得ていないものである場合も、途中で喪失した場合もある。
私は今回この考察記事を書くにあたり、「喪失」の方に注目したいと思っている。
もともと持ち得ていないものよりも、「失った」もののほうが、そこに強い思いが宿ると考えているからである。
この種子システムについて考えているところもあるのだが、それを大々的に語るには情報が不足しているため、機会を改めたい。まずは、人間関係から本作を捉えていきたいという趣旨である。
以下、Anthos*のメンバーそれぞれの関係性を「喪失」というテーマで整理していきたい。
基本的には「補色シンメ」で括るが、そこから外れる場合もあるのでご容赦いただきたい。
2.理人・チセ―内面と外見
前提として、私は理人とチセは兄弟だと考えている(違ったら申し訳ない)。その上で、彼らの半生を確認しておこう。
※2/2「ES」履修。兄弟で間違いないことを確認。
◆理人
24歳。天霧プロダクション医療班所長である灯堂彼方の息子(=たぶん養子)。元モデル。趣味は読書、武道。
◆チセ
22歳。祥來家の息子(おそらく次男)。幼少期は貧しかったが、現在は富裕層に。趣味はファッション。シナスタジア(音などが色で見える)。
そして、二人の瞳の色は、両方とも「紫」である。
『Juliet』のMVが一番わかりやすいと思う。
チセの顔に傷があったため、理人は灯堂家の養子になった、ということになる。
言い換えれば、チセの「肉体の欠損」により、理人は「家を喪失」したということだ。
チセは自身の欠損により兄が自分の身代わりになったことを、まるで一生消えない傷であるかのように抱えて生きている。
さて、ここで確認しておきたいのは、それぞれの趣味である。
チセはとにかく衣服に囲まれ、衣服を収集し、着飾る。その理由はやはり、幼少期に「肉体に傷を持っていた」ことに起因すると思うのである。傷を隠すため、派手に着飾るのだ。
一方の理人はといえば、「元モデル」ということで、「外見にはまったく傷がない」ことになる。
チセいわく、理人の背中はとてもきれいで羨ましいとのこと(そういう言動からして、チセの意識は肉体の傷に囚われていると思う…)。
かわりに理人は、無節操な(笑)読書によって、内面へのインプットを重視しているようである。武道にしたって、外見ではない内面的な強さというところを重視していそうだ。
私は彼が、その内面の強さや魅力を「証明」するために、このプロジェクトに参加したという気がしてならない。
モデルはいわば外見の評価である。そして彼は「外見」を評価されて養子となった。
顔の傷により無価値とされた弟の存在を忘れていないからこそ、「外側の価値以外の生き方」を目指したようにも思える。
振り返れば、『Juliet』のMVで、理人がハート、チセが欠けた仮面を持っているのも、なんとも示唆的ではないか。欠けた…あるいは喪失してしまった部分の表象だったということになる。
さて、Meetドラマパートでは、そのチセが「理人をかばって傷ついた」描写がされていた。再び弟に「肉体の傷」を背負わせてしまったことに、理人は激しく動揺している。
恐らくこれをきっかけに二人が兄弟であることが明かされるのだろうが、それにより、お互いが抱えている「内側」「外側」の欠損や喪失を埋め合えたら良いな…と思っている。
3.陽汰・薫―肉体と環境
比較的わかりやすいのが、陽汰と薫ではないかと思う。彼らは補色であると同時に、名前に太陽と月を持ち、明らかに対比がされている二人でもある。
『I know,Who I am』のMVでは対比がわかりやすくなっている。
さて、まずは薫である。
彼は「体が弱く入退院を繰り返した」とされている。華の位置から考えて、心臓疾患だろう(彼が赤と青のリボンを持っているMVはゾっとした)。両親は健在で、その両親のすすめでアイドルを目指したと言う。
一方の陽汰。
フィジカルは健康そのものあると言っていいだろう。彼は母が不在、そして父の失踪により養護施設にて育ったことがわかっている。
ここに、Loulou*diの新メンバーである櫻井鬨を加えると、二人の関係がよりわかりやすくなる。
鬨は陽汰と同じ施設で育っていた時期、足に何らかの疾患があり、歩けなかったという。(おそらく虐待をうけていた…となると、疾患ではなく、虐待の結果歩行できなくなったのかもしれない)
その鬨は、歩けない自分の周りで元気に走り回り、ダンスをする陽汰を見て「みじめさ」を感じていたことが述懐されている。それがこじれた結果、「足が治ったら一緒に踊ろう」という約束は、とんでもない呪いに変換されていったわけである…
薫の病が寛解しつつあるという状況の違いはあるものの、薫にはそういった態度が見えない。
むしろ、陽汰の感情面での苦悩(=開花が遅れた)際は、彼の負傷に気がつき、心配し、最終的には陽汰の開花の大きな助けとなった。
陽汰は施設では「兄貴分だった」というようなことを薫に打ち明けているが、言うなれば、陽汰は両親にも、施設の人々にも、「弱さを見せる、労わってもらう、守ってもらう」ということがなかったのではないか。それこそ負傷に気が付いてもらえない、気が付いてもらっても「平気な振りをする」といった具合に。しかし肉体が強かったので、それでもなんとかなってしまったと。
つまり、薫が陽汰に「喪失した強い肉体」を見るように、陽汰もまた薫に「喪失した(弱さを見せられる)環境」を見ているのだと思うのである。
※2/2「ES」履修後の追記
薫の肉体が種により強化され、それが絶頂期を過ぎつつあるために、代償として記憶に混乱が生じ始めていることが示唆された。それでも「MIZU」を投与しないのは、更にあぶない副作用があるのと、「余計なことを思い出させないため」とのこと。所長の「クランケを差し出した」という物言いからして、治験の被験者に近いのかも?
4.眞紘・凌駕―チヒロ
1stシーズンの終盤で明らかになったのが、眞紘と凌駕の関係性であった。
結論から言えば、二人はそれぞれ「チヒロ」を喪失している。これまでの二組は喪失したものが対比的だったが、この二人は一致しているのがポイントである。
詳しくは、5巻「For...」のドラマパートをお聴きいただきたい。
簡単に整理しておこう。
◆凌駕
自身のコンプレックスを認めてくれた友人:チヒロの死の真相解明のためにプロジェクトに参加。天霧内部の事情に詳しく、社長から内情報告の役割を課せられていた。
眞紘とメンバーとして接するなかで、「眞紘の魅力を世の中に(一緒に)伝える」というチヒロの夢を叶えたいと思うようになる。眞紘の中にチヒロの面影を見る
◆眞紘
天霧一の息子であり、レジェンドクラス級アイドルだったチヒロの実弟。兄とは、「一緒にアイドルになる」約束をしていた。自分はアイドル適性においてチヒロに遠く及ばないと考えており、よくもわるくも「物分かりがいい」。チヒロとは喧嘩をしたこともなかった。チヒロに容貌はよく似ている。
こんなところだろうか。
お互いに「写し」になっているところが特徴だと言えよう。
凌駕はチヒロに同調するように眞紘を見つめていながら、眞紘にチヒロの面影を見ている。
(こういうところが、オッドアイであることの意味であるように思う…)
一方の眞紘はといえば、そこまで露骨な表現はないものの、チヒロに対してはできなかった「兄への反抗(煙たがる)」ような言動があるため、凌駕を通して兄チヒロを見ていると言っていいだろう。
さらにいえば、眞紘と凌駕は、お互いに「チヒロの形見」同士なのである。
ふたりは「For…」で「眞紘の死の真相より、完璧なアイドルになる!」という方針で団結したようだが、私はそれで一件落着とは思えない。二人のあいだにはずっとチヒロが介在していくのであり、その「チヒロの喪失」という事象なくして、二人はアイドルにはなれないだろう。
それが天霧プロダクションへの壮大な復讐劇になるのかなんなのか、今のところはわからない。
が、ことあるごとにAnthos*の火種になっていくことは間違いないと思う。眞紘はAnthos*のセンターなのだから…
5.理人・凌駕―光と影の「医薬」
補色シンメ以外の組み合わせでも考えていきたい。理人と凌駕である。
まずは名前からして対比になっていることは注目に値する。
「灯堂理人」と「影河凌駕」…明らかに光と影である。
二人は同室であり、心の内をさらけ出すまでは言っていないものの、他メンバーとは共有していない固有の事情もあったりする。そこが結構重要だと思うのだ。
そのひとつが、凌駕の開花が「薬(誘発剤?)により強制的に引き起こされた」という事実である。そして凌駕はその薬を、なかなか開花しない眞紘に飲ませようとしていた節がある。
このあたりを示唆していたのが、今思えば『S.T.O.P』のMVであろう
そして、彼はやたらと医療塔の内情に詳しかった。パスワードの変更や、人員配置までわかっていた。(5巻ドラマパート)
これらの情報を総合してみると、凌駕は「華プロジェクトの薬剤開発企業」の関係者と考えて良いと思うのである(そこを脱サラしてアイドルになったのかもしれない)。たとえば彼の父が薬剤を開発していたのだとしたら、父が出入りしている医療塔に詳しくても不思議ではない。
※2/2「ES」履修後の追記
凌駕が製薬会社勤務だった過去が確定。開花促進剤の治験を条件にDOLLになったことが判明。
眞紘にやたらと「水を飲め」というのも「MIZU(薬)」を使うはめになる前に…という予防かと勘繰りたくなる。
そして、チヒロである。今のところ、彼が華プロジェクトにかかわっていた(種を移植されたいた)と明確には示されていない。しかし、凌駕がチヒロと友人であったことを考えると、「薬」つながりでかかわりがあったと考えてもいいと思う。
だとすれば、まだ試作段階だった種をチヒロに埋め込み、薬でなんとか長らえさせていた可能性だってある。その様子をつぶさに見ていたから「華が咲いたってろくなことにならない」という発言がでたのではないか。そして、限りある花の命を記録するように、「カメラ」を携えているのではないか…
(※あくまでもまだ妄想だが、眞紘の身体を異常に心配する凌駕からして、チヒロは肉体的に弱かったのでは?と疑っている。だとすれば、アイドルとして長らえるために、「種」を埋め込んだ可能性はある。もともとは本当に「医」だったわけだが、そこにアイドルチヒロが絡んだために、アイドルプロジェクトになったのではなかろうか)
理人の方に話を移そう。
父がプロジェクトの医療班所長であり、医師である影響だろうが、彼はプロジェクトの内容にはとても詳しい。凌駕の開花の違和感に気が付いたのも、そんな理人だったからだろう。が、凌駕に比べるとそこまで内情には詳しくないようだ。「医師」としての父の在り方には、疑問を持っている節もあった。「避けていた」可能性もある(薫を労わるのも、父への疑い故かもしれない…)
ずいぶんと前置きが長くなったが、何が言いたいかというと
凌駕=薬、理人=医
ということなのだ。
つまり二人は、華プロジェクトの根幹に連なる存在だということ。
天霧社長は、それをわかったうえで二人をAnthos*のメンバーに組み入れている。ある意味「自爆覚悟」のように思える。
…がしかし、こんな見方もできるだろう。
プロジェクトそのものを支える「医薬」の要素をグループ自体に組み込むことで「自己修復」を狙っている可能性もある。
チヒロも雨宮も、そして亜蝶もまた、種と心中するように滅んでいくのだとしたら…
Anthos*ではなんとしてもそれを食い止めたい、だからこその「医薬」の投入なのではないか。
これまで見た来たように、Anthos*はメンバー同士で傷や喪失を「埋め合う」ところがある。
その性質をもってすれば、あるいは…「永遠」や「完璧」が可能なのではないか?と…
なんとも酷な話であるが、プロジェクトの方針としてはそうなるだろう。
こうなってくると、理人・凌駕がLoulou*diと関わっていくという展開にも大いに期待したいところだ。
ということで、私なりにAnthos*を考察してみた。
既出の考察がたくさんあっただろうし、何を今さら感があるが、お許しいただきたい。
とにかく、「華Doll」がすごいんだということが伝われば何よりである。
このAnthos*の考察を踏まえて、次の記事ではLoulou*diについて考えていきたいと思っている。
こちらも沼が深くて深くて、まったく底が見えない。
最新アルバムである「Pensée」が発売される前に、なんとか思考をまとめて、心を落ち着かせておこう…と思っている。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました!