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社長のあなたが死んだとき、安心して会社を任せられるメンバーがいますか?

先日、投稿した「1塁打」note が話題になっている最中、CTO の大友さんからこんなメッセージが届きました。

「IT 業界の人たちからのメッセージに対応している暇があったら、顧客と向き合え」と、私に喝を入れてきたのです。

CTO の大友さんは普段は柔和な人なのですが、いざという時に「刺しに来る」ところがあります。一瞬ギョッとするのですが、こうした大友さんのストイックさは、会社の空気を引き締めるという意味でも本当に信頼できる。

このメッセージを見たとき「もし今私が死んだとしても、CTO の大友さんがいるから大丈夫だな」と、改めて感じたのです。

社長の自分が死んでも、CTO に経営を任せられるから大丈夫

少々個人的なエピソードからの導入にはなりましたが、この話は「個人的な感想」に留まるものではないと思っています。

今回は何が言いたいかというと、CEO と同じ目線で会社のことを考えられる CxO の存在は、スタートアップを経営するうえで非常に重要だ、という話です。より端的に表現をするとしたら「自分が死んだとき、安心して経営を任せられるメンバーがいるかどうか?」ということです。

ありがたいことに、当社の CTO の大友さんはまさにそうした人物です。

肩書こそ CTO ではありますが、役割としては「もう一人の社長」だといえます。「右腕」や「二番手」といったレベルではなく、CEO の私と完全に同じ目線で経営のことを考え、語り合うことができるのです。

大友さんがもう一人の経営者として組織を束ねてくれているからこそ、今のダイニーがある。彼がいなければ、間違いなくここまで辿り着けていないはずです。

CxO に必要なのは「起業家精神」である

大友さんから教わり、私自身が会社を経営するうえで常に大切にしている考え方があります。

それは、組織の運営には「マネジメント」「リーダーシップ」「アントレプレナーシップ」の3つの能力が必要だ、ということです。そして CxO クラスの人材に必要なのはアントレプレナーシップである、と。

この3つの能力は、似ているようで実は全く異なるものです。

マネジメントというのは、シンプルに技術です。メンバーが成果を上げられるように目標を設定し、それを正しく評価する。人を育成しプロジェクトを管理し、チーム連携をする。人を動かすための「スキル」であり、基本的には訓練で習熟が可能なものです。

リーダーシップはマネジメントとは異なり、スキルというよりマインドセットです。組織の中で手を挙げて、率先して動ける力。ファーストペンギンになれるかどうか。会社で設定されたバリューを自ら体現し、チームに共有する力です。

そして、もっとも難易度が高いのが、アントレプレナーシップです。

端的に言えば、誰かのビジョンを代弁するのではなく、自分自身が「ビジョン」になっているということ。「こういう世界を作りたい」という自分なりの強烈なビジョンがあり、実際にそのために動ける力。

これはスキルやマインドセットというより、その人の生き様そのものと言えるでしょう。勉強をしてスキルアップしたり、習慣を変えてマインドセットをブラッシュアップしたりすることに比べてみれば、生き様そのものを更新することの困難さは想像に難くないと思います。つまりアントレプレナーシップとは、後天的には得難い、非常に稀有な才能だと考えています。

組織運営において、マネジメント、リーダーシップはもちろん重要です。しかし本当にモメンタムのある組織を作るには、この「アントレプレナーシップ」を持ったメンバーが何人もいる状態が理想です。全盛期の PayPal は、まさにそんな企業だったのではないかと個人的に推察しています。

この話を大友さんから聞いたときは深く納得しました。同時に、彼こそがまさに「アントレプレナーシップを持った CTO」なのだと私は思ったのです。

CTO は単なる「技術の専門家」ではいけない

多くの会社では「優秀なエンジニアが CTO を任せられている」というのが普通だと思います。しかし大友さんはそうではなく「経営者が CTO をやっている」状態だといえるかもしれません。

一般的な CTO の役割は、CEO が決めたビジョンやミッション、事業の方向性からブレークダウンして、技術戦略を策定し、技術的な意思決定をリードすることです。あくまで「どんな事業を作るか?」「組織として何を目指すのか?」といった部分は定数であり、そこにぶら下がっている「エンジニアリング組織をどうするか」「技術基盤をどうするか」といった意思決定が変数になる。

しかし大友さんの場合は違います。

彼が経営者としてビジョン、ミッションを自ら定義し、それを全体に指し示すことができる。そのうえで、技術に関する意思決定をすることができるのです。

究極的にいえば、彼はプロダクトや技術のことなどは本質ではないと思っているはずです。いわゆる「技術オタク」とは違う。

目の前の技術やデザイン、開発などはあくまで手段であり、常にその先の「会社として何を実現するか?」に目が向いています。

あくまで彼は「外食産業でいかに日本が勝つか」「どうすれば飲食業界が儲かるか」「それを通じて、いかに日本の国家としての最盛期を取り戻せるか」といった会社のビジョンの実現に主眼を置いている。その下にあるプロダクトや技術のことはすべて How でしかないのです。

脳みそが100%シンクロしている

大友さんのように経営者と同じ視点で会社を見られると、意思決定の質は圧倒的に高まります。なぜなら目の前の「木」だけではなく、「森全体」を見たうえでの判断ができるからです。

一般的な CTO が下す「プロダクトの開発をこうしたい」「組織をこうしたい」という意思決定は、技術的な観点から見た場合の正解でしかないことも少なくないと思います。「たしかにプロダクト開発の観点から見ればそうかもしれないけど、経営全体のことを考えると違うよね」となってしまう。CTO から上がってきた意見を、経営者が批判的に検討しなければならないことが多いと思うのです。

しかし大友さんの場合はそうではない。彼が下した意思決定のほとんどは、そのまま受け入れることができます。組織全体のことを見て、かつ具体的な技術のことも深く理解した上での判断なのだから間違いないだろう、と思えるのです。

実際、彼と私の間で意見のコンフリクトが起きることはほとんどありません。彼の下した決断は、基本的に CEO の私と変わらない。お互いに本気で会社のことを考えているからこそ、脳みそがほぼ100%シンクロしている状態になっているのです。

技術系に進んだ、もう一人の私

しかし大友さんは、もちろん私のクローンのような存在ではありません。彼は私にはない高い技術力を持っており、だからこそ CTO という役職を全うすることができる。

言ってみれば、パラレルワールドで技術系の道に進んだもう一人の私という感覚に近いかもしれません。あるいは、共通の OS の上で別々のソフトウェアを走らせているような状態です。根っこの部分が同じだからこそ、非常に高い互換性を以って、専門的な判断をはじき出すことができる。

実際、大友さんの技術力の高さには圧倒されることが少なくありません。もともと東京大学の情報系大学院でインターネット関係の分野を研究していた大友さんは、Web レイヤーはもちろんのこと、低レイヤーの部分においても非常に高い知識と経験を持っています。

ダイニーは POS を内包した幅広いシステムを構築していますが、そのためにはネットワークを含めたインフラ周りの整備が必須でした。大友さんはダイニー創業期のハードウェアやネットワーク面をハンズオンしつつ、 Technical Support チーム(ハードウェアやネットワーク関連の技術サポート部隊)を立ち上げ、オペレーション化し、権限を委譲するまでを、ほとんど一人で成し遂げてしまいました。

大友さんの技術力と実行能力の高さがなければ、現在のダイニーの姿はあり得なかったと断言できます。

また、大友さんの研究分野にはデータ分析が含まれており、学生時代には AI 系の企業でインターンも行っていたため、昨今のデータ分析や AI の分野についても彼の知見は非常に高水準なものとなっています。

当時から大企業向けの講習にて講師を務めているほど AI の分野に精通している彼は、未だに組織の各所で R&D を行いながら最新の AI 技術の適用余地を探り続けています。目まぐるしい技術発展の潮流の中で、本当に心強い存在です。

技術の架け橋として

現在は会社の規模も大きくなり、優秀なエンジニアも多数抱えるようになったため、大友さん本人が製品としてのソフトウェア開発に直接関わることはほとんどありません。

しかしその分、さまざまな課題に対する技術適応の分野で我々を支え続けてくれています

例えばどういうことか。ここからは少し専門的な話になりますが、いくつかご紹介します。

Retool を早期から導入し、クライアントと当社の Account Sales チーム(既存顧客対応部隊)とのブリッジをデータエンジニアの手を煩わせることなく実現したり、Account Sales 及び Customer Success チームの提案資料を自動で作成できるようにしたりと、作業を自動化しつつかなりディープな分析ができるような足回りを整えたのも大友さんの仕事でした。

ダイニーの保有しているデータ量や、データスキーマの複雑性を考えると、普通ならデータサイエンティストを複数名雇用しなければならない仕事でしょう。

しかし大友さんはこれらに単身で対応し、当面のスケーラビリティを担保することで、いたずらに人員を増やすことなく課題の解決を成し遂げました。

社内向けのプロダクトのみならず、クライアントとの「架け橋」としても大友さんは重要な役割を担っています。

例えば、「ダイニー AI くん」の機能要望を捌ける人材が社内になかった際には、大友さん自身が飲み会や朝の時間を利用して顧客インタビューを行い、課題を特定、MVP の実装までを一挙に引き受け、実際にクライアントに対するデリバリーと CS まで行いました。

また、MVP の段階でしっかりと店舗売上を上げる成果を出して、本実装のためのプロダクトフィードバックをチームにかけ続けています。

これらの実績は、高い技術力はもちろんのこと、行動力と広い視座、総合的な判断力を兼ね揃えた大友さんだからこそ成し遂げられたものだと私は考えています。

現在は、技術選定自体は VP of Technology の唐澤さんや現場の Tech Lead に移譲しつつも、チームの技術選定がビジネスにアラインするように、上位の目線で各人とコミュニケーションを取っており、組織つくりをリードする存在です。

また、2022年からグローバル採用も牽引しており、国外の優秀なプロダクト人材を採用したり、現地にプロダクト開発拠点を作るために積極的に往訪するなど、技術面以外でもさまざまな活躍を見せてくれています。

海外の優秀な人材を採用した際に、御子息の将来について不安に思っている親御さんに直接会いに行き、情熱を伝え、安心感をもってもらうような取り組みさえも、大友さんは行っています。

たしかに親御さんの気持ちを思えば、異国の地のよくわからないスタートアップで働くことになった子供を心配に思うのは至極当たり前ではありますが、そんな気持ちにしっかりと寄り添い、大胆にイニシアティブを取っている大友さんは、CTO という役職を越えて、ダイニーの人と人とを繋ぐ存在として、かけがえのない「架け橋」になっていると言えるでしょう。

地方からの「お上りさん」2人で、スタートアップを始めた

そもそも私と大友さんは学生時代からの友人であり、はじめは2人でスタートアップを創りました。

大友さんと出会ったのは18歳のとき。大学受験の予備校に通っていた頃のことです。東大を目指してともに勉強に励む、地方出身の学生2人でした。

バックグラウンドが似ていたこともあり、私たち2人はすぐに仲良くなりました。2人とも田舎から出てきた「お上りさん」でしたし、また未熟ながらも、心の奥底では「世の中を変えたい」といった使命感を抱えていたのも同じでした。

大友さんは地方と都市の格差を強く課題に感じており、それをなんとかして解決できないかと考えていました。私は私で、日本の国家としてのプレゼンスを取り戻したいという、強い思いを持っていました。

私たちはともに大学に合格。一時期は同じサークルにも入りました。ただ、起業を決めたのはその5年後、私たちが23歳の頃のことです(私は休学しインターンに明け暮れており、彼は情報系の修士1年生でした)。

東大の工学部が主催している、学生起業を支援するプログラムを見つけてきて、2人で一緒に応募することにしたことがきっかけでした。

最初に始めたのは、自治体の仕事をオンライン化する「ソロモ」という政治系プロダクト。ただ、その事業にはニーズがなく失敗。そこから飲食の領域へとピボットし、ダイニーを創業することになったのです。

凹凸が噛み合っている

ダイニーを創業してから、私たちは「外食産業から日本を変える」というビジョンのために、二人三脚で経営を進めていきました。

大友さんは私より技術のことに詳しいので、CTO という立場を任せることになりました。しかし、彼は間違いなくもう一人の経営者です。初期のフェーズでは大友さんが事業計画書も書いていましたし、会社のバリューも大友さんが決めた部分が多い。今でも彼は営業チームの会議にも参加し、チームのマネジメントもしています。

そして私と彼は、苦手なことを互いに補い合える関係です。いわば凹凸がうまく噛み合っているところがある。そのおかげで、何度も大友さんに救われてきました。

例えば、私はビジョンを打ち出しながら巻き込むのが比較的得意なのですが、そのぶん、会社の空気を少し緩くしてしまうところがあります。そんなとき、大友さんが釘を刺して空気を引き締めてくれます(冒頭でお見せしたメッセージはまさにそれを象徴しています)。

また、私はどちらかというと情熱的に、ビジョンを前へと推し進めていくのが得意なのですが、そのビジョンを冷静に検討し、枝葉の部分を補強したり、過剰な部分を刈り込んだりすることで実現性を飛躍的に高めてくれるのも大友さんの心強いところです。

そのように2人の凹凸がカッチリと噛み合って最高のアウトプットに結び付いたとき、なんだか我々は最初からそんな風に2人で1組として設計されていたみたいだなと、やや恥ずかしいことを思ったりするのです。

自分ひとりではここまで来られなかった

振り返ると不思議なものですが、18歳の大友さんと私は、本当にふつうの友達でした。数学の問題の解き方を教えてもらったり、カラオケに行ったり、マクドナルドでだべったりと、学生らしい思い出もたくさんあります。

2人で事業をやるなど、全く考えていなかった。

しかし2人で会社を立ち上げ、同じビジョンを見つめ、本気で経営に向き合うようになると、次第に私と大友さんは、プライベートで遊ぶことがなくなっていきました。互いを「社長」「大友さん」と呼び、敬語で会話をするようになっていた。「そうしよう」と2人で決めたわけではなく、自然とシフトしていった感覚です。

今の私たちは、もう昔のような「友達」とは違うかもしれません。しかし「友達」に対するのとは全く違う、最上のリスペクトを彼には感じています。

私一人では、間違いなくここまで来られていない。創業からの6年を振り返ってみても「大友さんがいなければダイニーは終わっていたな」と思う瞬間が、数えきれないほどあります。

彼のような人物が CTO として共に戦ってくれていることは本当にありがたいですし、この上なく幸せなことだなと日々感じています。




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