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日記:歌における計算式の脳内処理

先日公開された結束バンドの新曲「光の中へ」を聞きました。

良い曲ですね。MVもめちゃくちゃカッコいいです。
そんな「光の中へ」のAメロ歌詞内で以下のような計算式が出てきます。

(私+期待-不安)×ギター=ロックだ

結束バンド「光の中へ」

この表現が非常に面白いんです。
『私+期待-不安』という式が( )で括られていて、それにギターがかけられています。この( )が無ければ『私+期待-(不安×ギター)=ロック』となってしまうので等式の意味が変わってしまいますね。
しかし、実際に曲を聞けばわかると思うんですが、歌詞に( )は入ってるものの歌として読み上げてはいないんです。
これでは、耳で聴いた歌詞と文面上の本来の歌詞の意味が変わってしまう……と思いきや、案外実際に聞いてみると何故か本来の歌詞通りに解釈できるんです。面白いですね。
これが何故なのかを少し考えてみましょう。

まず、文章と計算式では情報を処理する順序の違いがあります。文章は「初めから順に」というシーケンスの下で情報を処理していく構造なのに対して、計算式は“ルール”や“解き易さ”といった状況に応じて処理する順序が変わる構造となっており、全容を把握した上で処理する順序を決める必要があります。なので、歌詞という文章的フォーマット上で計算式を取り扱おうとすると、文章の持つ「初めから順に」という性質が計算式の処理順に影響を及ぼします。その為、『私+期待-不安×ギター=ロック』における『×ギター』の部分の処理が後回しにされ、『(私+期待-不安)×ギター=ロック』という等式が( )なしで成立するというわけです。

その上で「歌」という聴覚情報を用いた流動的な媒体であることも大きく作用しています。「歌」は絶えず情報が変化し続ける為、文字で書かれた文章や計算式のような文字列以上に、前後の相関性が薄れ、その都度生まれる解釈の比重が重くなります。
その結果として、上述した「初めから順に」という処理順に拍車をかけています。

このような理由から、( )無しで『(私+期待-不安)×ギター=ロック』という歌詞が解釈できていると推察できます。

そう考えると、「歌」というメディアは人間に物事を認知させる上で少し特殊な性質を持っているようで面白いですね。


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