見出し画像

【蓮ノ空感想文】活動記録4話と7月度FesLIVEを観終わって〜伝統と革新〜

蓮ノ空のこと好き好きクラブの皆さんごきげんよう。
活動記録4話と7月31日のFes LIVEはご覧になりましたか?
そうでない方はネタバレを含む記事ですので一旦廻れ右をオススメします。

以前からnoteやTwitter(Xとは呼ばない)で、私は吟子推しでありながら吟子の伝統観に疑問がある、というのはお話ししていたかと思うのですが、今回の活動記録4話と7月度Fes LIVEを観て、ようやくそのモヤモヤが昇華されたというか、百生吟子というキャラクターと出会うために私は蓮ノ空というコンテンツに出会ったとすら思えました。
そのくらい感動し、そのくらい腑に落ちました。

さて、今回は、吟子の祖母を始め蓮ノ空芸楽部が紡いできた、そして吟子や蓮ノ空スクールアイドルクラブの面々が向き合いこれから紡いでいく伝統について、私なりに再考し、また、伝統の世界に生きる偉大な方々の言葉を引用して読み解いてみました。
なお、あいにく私は伝統工芸には疎くて伝統芸能の方々の言葉からの引用なのはご容赦ください。

スクショと共にお送りします。

伝統=絶対いいもの、というのがまだイキってる感じでかわいい。
しかし伝統を疑うことも大事ではないか?と私はかねてより吟子の伝統崇拝を見てずっと思っていたわけです。
梢先輩も表情に出ていましたが、伝統を神格化するあまり自分を卑下する傾向の強い吟子。でも職人とは親しくて、普段は優しいおっちゃんおばちゃん達であることは知っているのにこの卑下っぷりはまだ若さといいましょうか。
「世の中は変わっていきますし、ただ昔のを踏まえたままではカビが生えて骨董品になっちゃいますからね。ですから、いいものを踏襲して、現代の方にもわかるように歌舞伎を生かしていかなければなりません。やはり、その時代時代によって新しい風を吹き込んできて、今まで続いているんでしょうから」
ーー六代目中村歌右衛門(1917〜2001)
「いい伝統は残し、いらないものは捨てる。伝統を守りつつ革新を追求する姿勢がないと、
若い世代のみなさんの伝統への興味が薄れていくのではないかと思いました」

ーー二代目中村獅童(1972〜)
「若い人が、それぞれの時代を作っていけばいいのです。
時代に迎合するのではなく、時代を作ることが大切です」

ーー三代目神田松鯉(1942〜)
「一着の衣装が完成するまでに、多くの人の想いや技倆が重なっていることも忘れてはなりません。
袖を通した瞬間、私は様々な人の想いが一つになった魂を背負っていることを噛み締めています」

ーー五代目坂東玉三郎(1950〜)


元・芸楽部だった吟子の祖母のところに、スクールアイドルクラブ立ち上げ時の部員がわざわざ仁義を切りに挨拶に来て、その数年後には梢の七五三の着物を仕立てに乙宗家がやって来て親交を深め、吟子が蓮ノ空に入学すると祖母が歌っていたという「逆さまの歌」が形を変えた伝統曲「Reflection in the mirror」を持ち曲とするスリーズブーケの乙宗梢、そして日野下花帆と出会い、仲間と共に、自身が赤ん坊の頃に家にやって来た初代スクールアイドルクラブが身に纏っていた衣装を直して魂を込める……。

何本ものを糸を撚って撚って紡いで行くような、針の穴に糸を通して行くような、偶然と運命が折り重なって伝統が新たな息吹に染め上げられて、歴史の重みと現代の風の両方感じられる形になってまた後進に継承されて行く、それが伝統だと私は思うのです。

吟子が「私なんかの手の及ぶところではないからみんなに伝統の正しい良さを広める」ではなく、「自分が魂を込めて伝統を伝えて行く」姿勢になってくれたことを私は我が事のように嬉しく思います。なんなら娘が出来たようです。

吟子は将来加賀繍の工房を継ぐのか、それはわかりません。
ですが、せっかく職人たちが身近にいるのに、いや、いるからこそ自分を卑下していた吟子がようやく自分で人のために何かを作る気になった、これは大きな成長です。

人間、何かのマニアとして評論するのは簡単で、実際にそれを実践してみるとなかなか大変です。さらに、アマチュアの御道楽でやってるうちは楽しいですが、プロとなるとそうはいかない。
はたまた、自分は自分はと内輪内輪にやっているとどうもうまく行かない。人のために魂込めて、命を懸けてやると思いもよらぬ良いものが出来る。作る相手の顔を想像するというやつでしょうか。
「クラブのみんなの為に」「先人の想いを受け継いで」と魂を込めて作ったからこそ7月度FesLIVEの衣装は素晴らしいものが出来たのでしょう。

「時代が変われば、お客さんの好みも変わって来ますし、やりたくてもできない狂言もあります。一方ではそうした時代の好みを芸に入れつつ、一方では伝統を受け継いでいく。そこに歌舞伎の生命があり、面白さがあるのです」
ーー十三代目片岡仁左衛門(1903〜1994)


私は普段から歌舞伎や落語や講談などをよく観ていて、また、今は金沢から近い場所に住んでいて習い事は一切していないのですが、かつて首都圏に住んでいた頃は、先ほど名言を引用した人間国宝の講談師・神田松鯉先生の講談教室に四年ほど、さらにその前は笑点の水色でお馴染み三遊亭小遊三師匠の師匠・三遊亭遊三師匠の落語教室に10年ほど通っていて、打ち上げや旅行などもご一緒したこともあり、伝統の世界の空気や関わる人たちの了見について肌で感じたりできることも多くありました。

しかしながら、生まれついた時から伝統文化にどっぷりだったわけではないので、そういう意味では吟子がうらやましくもあり、また大変な部分もあるだろうと思うこともあり、はばかりながら「自分には出来ないけど何とか世間にこの文化を広めたい」という気持ちもよくわかるのです。

蓮ノ空のこと好き好きクラブのみなさんの大多数は伝統文化がそもそも身近ではないのだと思います。

蓮ノ空をきっかけに、伝統工芸でも伝統芸能でも、機会があれば触れてみてはいかがでしょうか。
難しいことを考えずに、ちょっと脳のサウナや精神の半身浴といったくらいの感覚で行ってみてください。旅行のついででも良いでしょう。

蓮ノ空が伝統をテーマにした作品なら、ラブライブ!ももはや伝統を脈々と受け継いでいっている芸能の一ジャンルなのかもしれません。

最後に。
今回引用させていただいた私の蔵書をご紹介します。

「人生を豊かにしたい人のための講談」神田松鯉/マイナビ出版
「超歌舞伎2022 Powered by NTT 筋書」松竹株式会社
「歌舞伎四〇〇年の言葉」堀越一寿/芸術新聞社

蓮ノ空をきっかけに、みなさん是非雅やかな伝統ライフを!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?