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金曜日の銀座デート-後編-
一軒めでみゆきちゃんと美味しいお酒を飲み、今は楽しい感じで夜の散歩をしていた。
マフラーを交換したり、ボクの腕に手を回したり、みゆきちゃんのコートのポケットに手を入れてみたりしながら歩いたりしてた。今年一番の楽しい思い出は今日だろうと考えながら。
占いをしてもらった後からは、思ったよりもみゆきちゃんとの距離が縮まり、自然と手を繋いで歩いていた。
「ずっと外にいると冷えるね」と言いながら見つめてくるみゆきちゃんが次はどこに行くのか聞いてきた。
やはり今日はとことん飲むらしい。
「わたなべは私のこと好き?」
突然にダイレクトな質問をぶつけてきた。
「好きだよ」ボクは正直に答えた。クリスマス前の金曜日に少し寄って一緒に占いもして手を繋いで歩いてたら勘違いしそうになる。
「どういうふうに好きなの?」
「中学の時にみゆきちゃんが遅刻ギリギリで学校について、息が荒い状態の時にあいさつをしたら、みゆきちゃんが返してくれた”ぉはょぅ”からずっと好き。」よし。ぱっと思いついた割には良い思い出が出てきた。
「何それ?答えになってないじゃん。」ちょっと嬉しそうな感じで笑った。「君は記憶力がいいからいらん思い出がたくさん詰まっておりますな」
それより次はどこに行く?
家の近くで飲もうかと提案すると嫌だと一蹴。
とりあえず銀座線に乗って浅草に行こうとなった。
和光のビルまで戻ってみゆきちゃんの後ろに回って地下の階段を降りた。23時近くになると家路に着く人が多く、ホームは人が多かった。
なぜかカップルを装っているボクとみゆきちゃんはたいして混んでいない社内でもハグするように抱き合って立っていた。
お互いに笑いがとまらなくて、一緒に同じ広告を見て顔を近づけて笑っていた。
上野を過ぎて終点の浅草まであと2つの稲荷町の駅に着いたところでみゆきちゃんが降りてボクの手を引っ張って降ろした。
「降りるの?」ボクが聞くとみゆきちゃんは満足したように頷いた。
「ここを本日のキャンプ地とする!」
よくわからないまま改札を出て地上へ上がった。
「稲荷町はお墓しかないね」
また少し散歩をするのかと思った。ボクはみゆきちゃんと散歩するのが好きだ。それも言えば良かったと思っていたら、みゆきちゃんは目的地が決まっているかのように信号を渡り先へ行ってしまった。
どこへ行くのか着いていくと、すぐ近くのビジネスホテルだった。
「今日はここに泊まろう!」
いろいろ疑問を投げかけるのがめんどくさかったので、「わかったじゃあフロントに聞いてくるよ。」といって、ホテルに入った。
「シングル2部屋空いてますか?」ボクがフロントに聞くと、みゆきちゃんがダブルの空き状況も教えてくださいと付け加えた。
「あいにくシングルが埋まっており、ダブルのお部屋しかございませんがよろしいでしょうか?」と中年のフロントの男性が静かに答えた。
それでよろしくお願いしますと答えて、みゆきちゃんが鍵をもらいエレベーターの方へ歩いて行った。
「ちょっとコンビニ行かない?」ボクがみゆきちゃんを引き止めると、そうそうと言った感じでフロントにもう一度鍵を渡してコンビニに行ってくるといった。
フロントの男性は駅前にございます。と教えてくれた。
コンビニでお酒を6本と普段は買わないような物を買い込みホテルへ戻った。
「最近高校のともことは会ってる?」みゆきちゃんに聞いてみた。
「高校卒業して1年くらいはたまに会ってたけど、もう2年くらいあってないかも。わたなべは?」
「今年の夏に会ったよ。浅草のロック座で。めっちゃ大きな声でなまえを呼ばれて両手握られて恥ずかしかったよ。」
「久しぶりだったの?」
「いや、そんな所で偶然会うことに驚いたみたい。」
あの子はリアクションも感情表現も大きいからね。
「うん」
「それで君は恋愛は上手く言ってるのかい?」
となりに座ったみゆきちゃんがニヤニヤしながら聞いてきた。
「それがなかなか上手く行かないと言うか、自分の性格に欠陥があるんだろうけど、あまり人とは関わらないようにしてるんだよね」
「私から見ると君の周りにはたくさんの友だちがいて、君は周りの人はそこで楽しそうに笑っているように見えるよ」そうみゆきちゃんが言ってボクに新しいビールを手渡してくれた。
「それはみゆきちゃんだと思うよ。ボクなんてただ毎日アルバイトをしているだけだし、みゆきちゃんは大学生活とテニスサークルのともだちと旅行にいったり毎日すごく楽しそうじゃん。それと」ボクは続けて言った。
「ビジネスホテルとは言え、二人きりの部屋の部屋のベットに座ってお酒をとってくれるときに赤いパンツが見えるシチュエーションで冷静を保てと言う方が頭がおかしくなるよ。」
それに対してみゆきちゃんは半笑いしながら答えた。
「お互いがよく見えるのかね?私の日常なんてくだらないものよ。しっかり立ってないと全てが壊れちゃいそうな感覚で心から楽しいなんて言えないもの。君はずいぶん地に足がついてリラックスしながら生活しているように見えるから羨ましいのかもね。」少し真面目な顔で窓の外を見ながら言っていた。そして振り向いて言った。
「私は君に我慢しろとか頭がおかしくなれなんて一言も言ってないし、制限もしてないわよ。むしろこんな可愛くてスタイルの良い女がベッドの上で隣にいてパンツを見せてあげてるんだから、いつでも襲ってくればいいとまで思ってるよ。」
ボクは手に持っていた缶ビールを一口のみ、立ってテーブルの上に置いた。
「宝の持ち腐れというのはまさにこのことだね。」
「みゆきちゃんがシャワーを浴びてる間に、ボクが有料テレビを見ながらオナニーして疲れて寝てたら面白いかもしれないよね」
みゆきちゃんが軽いため息をついて言った「エッチをしないから友だちとして成立するとか、そういう言い訳ではなくて、ただ君自身の何かがまだ解決してない妄想童貞ってことでしょ?」
「みゆきちゃんに魅力がないからとかいうわけじゃなことだけはわかってほしいんだ。ただ脳みその処理速度が一般人よりも低いスペックだということなんだよね。ごめんね。」
「謝らなくてもいいよ。そしたらシャワーでも浴びて裸で布団の中で映画でも見よっか?」
「そうしよっか」
ボクらは明るく健全なキスをしたあとに裸で抱き合ってそのまま眠った。