コーヒー生豆の賞味期限
1.コーヒー生豆の消費期限と賞味期限
前回の投稿でコーヒーの生豆には消費期限は無いと述べた。では賞味期限はどうなのか?
コーヒーの賞味期限は生豆の焙煎後に決められるのが一般的でコーヒーの焙煎前の生豆には賞味期限は規定されていない。しかし、前回の投稿で述べたように長期間在庫されたコーヒー生豆は乾燥し、味が薄れてゆく。それでは、本来の味を維持できる期間を生豆の賞味期限とすればその期限はどれくらいなのだろうか?
2.コーヒーの生豆が出来るまで
賞味期限を検証する前にコーヒーの生豆が出来るまでの工程を簡単に説明する。まず、収穫されたコーヒーの実は精製工場(水洗工場)に集荷され、精製工場ではコーヒーの実の果肉を除去し、コーヒー豆を水洗し、糖分(ぬるみ)を取り除く。その後、薄皮のついたコーヒーの生豆(パーチメント)を乾燥(天日もしくは機械式)させ、乾燥したパーチメントを倉庫に保管する。そして輸出前にパーチメントの薄皮を取り除き、欠点豆を除去し、輸出用の生豆に精製される。
3.本来のコーヒー生豆の賞味期限
さて、生豆は水洗の後、乾燥すれば焙煎して飲むことは可能だが、乾燥直後は生豆に含まれる水分が豆の芯の部分ほど多く、表面に近いほどより乾燥している。この状態で焙煎すると焼きむらが出来て本来の味が引き出せない。従い、生豆の内部の水分が均一化するまでパーチメントの状態(生豆に薄皮がついた状態)で保管する必要があり、この期間が3ヶ月ほどである。その後の3ヶ月間ほどが本当の賞味期限だ。
しかし、残念ながら、価格にこだわりがなく、また、数量も少なく、輸送に航空便が使われる貴重なスペシアルティーコーヒーを別にして、この3ヶ月の間にコーヒー生豆が消費者に届くことはほぼ不可能である。なぜなら、コーヒーは船で輸送されるため、工場から港に輸送され、倉庫で待機し、船積みされ、長い航海の後、消費国に到着。その後、到着港で検査、税関の手続きを終えて、焙煎業者の倉庫に搬入される。
焙煎業者の倉庫についてもすぐに焙煎されるわけではない。通常、焙煎業者も品切れにならないように余裕を持って生豆の在庫を持つ。そのため、生豆はしばらく倉庫で保管され、古い在庫から順に焙煎されて行く。従い、これらの工程の全てが3ヶ月以内に完了することは不可能なのだ。
それではどれくらいの期間で焙煎されれば許容範囲なのか?コーヒー生豆は輸出のため、薄皮を剥いだ時から(パーチメントから生豆になった時から)加速的に劣化が始まる。従い、少なくとも収穫から1年以内、つまり次のクロップの入荷が始まる頃までに焙煎されることが望ましい。
4.実際のコーヒーの味
インターネットオークションで上位にランクされる常連の有名な農園のコーヒーが結構な割安価格で売られているのを目にすることがあり、買って飲んでみると期待はずれになる事が多い。と言うよりこれまで期待通りの味に出会ったことがない。おそらく、上記で述べたように生豆が賞味期限を過ぎているのが原因だろう。または、その農園の低級品のコーヒーかもしれない。同じ農園のコーヒーでも、全てのコーヒーが同じ品質という事はない。同じ農園でも大きい農園では高低差がかなりあったり、樹種も同じとは限らないからだ。
本当に美味しいコーヒーに出会うのは難しい。店のコーヒーの売り文句をあまり信用せず、ぜひ、自分で味を確かめ、好みのコーヒーを見つけてコーヒーを楽しんで欲しいと思う。
以上