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2話・未知の国中国への渡航準備

1.まず何から始めてどうするべきか

中国での就職が決まってから、最低限やるべきことは3つ。

1:パスポートの有効期限を確認
2:航空券を手配
3:今住んでいる部屋を引き払う

1と2はいつもの旅行のノリでいける。しかし、3が厄介。賃貸契約の解除はいいとして、生活の場を海外に移すので、家具をはじめとする様々な私物は、日本で処分していかなければならない。

結果、学生時代から約11年間使ってきた冷蔵庫と洗濯機は、回収業者にお願いして引き取ってもらった。1万5000円也。業者のおじさんいわく、回収された家電はまとめて東南アジアに送られる。そこで、修理されて現地で再利用されるシステムらしい。

所有者も家電も、新たな国で新たな生活を始めるわけだ。

高校生の入学から使っていた机は、ベトナム出身のエンジニアの知り合いにあげることにした。彼は会社の寮に住んでいたが、事務用の机がなくて困っていた。日本製の机ということで、大変喜んでくれた。ついでに、プリンターと自転車も一緒に渡した。

そのほか、貰い手のなかった家具は市のリサイクルセンターに電話して、コンビニで買った回収券を張り付けて指定の場所にだしておいた。あまり価値を感じてなかったものでも、いざ捨てるとなると、名残惜しさを覚える。

しかし、新しいことを始めるのに決別しなければならないモノが出てくるのは当然だし、昔からあるものを保持し続ける実力が今の自分にはないからこそ、こうなっているともいえる。ここは、断捨離あるのみ。

意外と困ったのが、書類や本。たいして賢いわけでもないのに、暇があると本をちょくちょく買ってきてしまう習性が自分にはある。残しておきたいものを厳選しても、それでも段ボール箱3つ分は手放さなければならなくなった。

ここで問題が発生。

一回でまとめて引き受けてくれるブックオフに頼もうとしたのだけれど、そこまで運んでいく手段がない。予約して取りに来てもらうか、少しずつ分割して持っていくかだが、悠長に時間をかける余裕はない。

しかし、私の作業を手伝ってくれていた先のベトナム人が、会社の寮に台車があるので、それで運んでみてはと提案してくれた。駅から隣駅までの舗装道路を、ガラガラと運んでいくのは、少しばかりてこずったが、手持ちで運ぶよりずっと楽に一回で済んだので助かった。

長年連れ添った家具類がすっかりなくなった部屋では、寂しさよりも、次の進路を象徴しているようなイメージが勝ち、逆に渡航への意欲をさらに高めてくれた。

2・現地の情報を収集

今(2021年)では考えられないことだが、2012年当時は中国に関する政治経済や事件のニュースは毎日のように新聞・雑誌・テレビなどの各メディアから放出されていたものの、生活に関する情報はほとんどといっていいほどなかった。

ネットで執拗に探せばあるにはあったのだが、「中国ではタクシー運転手が高給取りで結婚相手として人気があります」という、微妙にちょっと前の時代を彷彿とさせるものだったり・・・。(おそらく2000年代の情報かと)

こうなると、実際に行ったことのある人から聞くしかない。以前の職場で、仲良くなっていた中国籍の人や、以前、あちらで仕事をしていた日本人に電話をかけ、飲みのアポをとり、向こうでの人間関係や生活水準・物価などを聞いて回った。

中国の工場で働いていた元期間工から、元大手銀行の銀行員まで、探してみると、いろいろな階層の中国人が日本にはいるのだなと驚きつつも、おかげで一つの視点に偏らない情報収集ができる。

紙媒体・電子媒体・そして人。この3種の神器を駆使して、自分の脳みその中に、中国の情報を(やや粗くはあったが)取り込んだ。

3・持っていくもの

真っ先に思い浮かんだのが、「おみやげ」

できれば、同じ部署の人達には義理でも配っておきたい。あとは、現場の管理職と、社長へのものも、最低限度は渡しておきたい。しかし、持ち運べる量には限界があるし、私自身そんなに貯金があるわけではない。

いろいろな方面をあたって、いただいたアドバイスや、中華料理を食べまくって思い浮かんだアイデアをまとめた結果、こうなった。

・タバコ
・梅酒
・ブラックサンダー

禁煙の機運が高まっているとはいえ、中国はまだまだ男性の喫煙率が高い。職場でのコミュニケーションツールとして、万能でこそないものの、いまだ現役だ。特に2012年では。

次に、日本の焼酎は度数が低くて味が弱く不評。日本酒も同じような理由で不評。と聞いて、甘くて飲みやすく、中国人にも伝統的に受け入れやすい風味の梅酒ならいけるのでは?と思い、買っていくことにした。

梅酒は、紙パックの徳用サイズ1.8リットルのと、500mlの瓶入りの少し高めのもの。タバコはメビウスの8ミリ。彼らは味で吸っているので、それより軽いタバコだと、これまた満足度か低くなる。

ブラックサンダーは、一箱20個入りのを二箱買った。これまで、音には聞き目ではみていても、実際に買うことはなかったのに、まさかの大人買い。人生、いつどこで何をすることになるのか、分かったもんじゃない。

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