3話・今までにない大荷物で海外へ
1・所持品=全財産
海外移住。
実家暮らしであったり、すでに持ち家がある人なら、大掃除の一つでもして、光熱費等の公共料金の停止手続きを踏んで、荷物をまとめればいいだけの話。(それでも手間ではあるけど)
私のように、東へ西へ行ったり来たりの根無し草にとって、海を越えて生活の拠点を移すとなると、一人で持ち運べる量が自分に許された全財産となる。
自分の筋力と、飛行機の積載量が制限ではあるが、それでも、大型のスーツケースに、ボストンバッグ、あとは機内持ち込みにバックパック(+Duty Freeで買ったもの)と、短期留学や旅行ではあまり縁がないサイズとなった。
逆を言うと、これだけで生きていけるのだ。もっと言うと、今まで生きてきてこの程度のものしか残せてないのだ。そう目に見える形で、自らの矮小さを突き付けられた気がした。
2・成田から煙台まで
首都圏に住んでいると、どうも成田へ行くのがまず億劫に感じてしまう。分かる人いるかな。一度、空港についてしまえば、もうスイッチが入って、長時間のディレイでもフライトでも耐えられるようになるのだが。
空港についたあと、安全検査と経て、出国手続き。保税区画のベンチに腰掛けたところで、シャンプーを準備していなかったことを思い出す。
売店で割高なトラベル用のものと、ついでに、ボトル入りの粒ガムを購入。タバコもカートン買い。搭乗口の近くにあった自動販売機に残った小銭を入れて、ミネラルウォーターのボタンを押す。しばらく、この国の水とはおさらばだ。
エコノミー独特の狭い椅子に座って、お茶とナッツを堪能。6時間ほどだった頃。窓の外に広がる大空の下に、ちょっと日本とは雰囲気の異なる人里の風景が広がっていた。
自分の席は、機体の一番後ろを取っていたので、真後ろはトイレ。そろそろ、着陸態勢に移る手前、駆け込みで一人の恰幅のいい中国人の中年男性が手洗いに入っていった。
数秒後、漂ってきたのは背後から香ばしい紫煙のニオイ・・・。
ライターはセキュリティーチェックで持ち込めないはずなのに、どういう裏技を使ったのやら。
上有政策 下有対策
(上に政策あれば、下に対策あり)
以前、中国に留学していた友人が、私に教えてくれた有名な言葉。かの国で、よく見られる社会現象とされる。入国したあと、機会があれば見てみたいと思っていたら、ややフライングする形で見せつけられた格好に。
私は思った。
「この国は、絶対に面白い」