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カタカムナ マノスベの姿勢 50歳オッサンパンツ一丁! (第5話)
[昨日の倍ぐらい練習しないとな!]
迫り来る現実、自分が人生で積み上げた様々な問題の事は一切忘れて、ただ、目の前に来たモノを全力でやり抜くのだ!
『人生の自分の過去の行い』に失望した俺は、何か夢中になれる事を探していた。いわゆる、現実逃避のような状態だった。
そんな精神状態の中でコレだ!と、見つけたのが『カタカムナのマノスベの姿勢の練習』だった。
その究極の練習が、『力まずにボケーッと立つ』こととは…
だがしかし…やるしか無い…
マノスベの姿勢の練習2日目だ。
朝6時前に起床!気合いも十分!
8月の抜けるような青い空、超快晴!
期待した『疲れる練習』では無かったが、昨日の練習の成果なのか、寝つきも良かったらしく、目覚めも良い感じ!
[まぁ、普段ゴロゴロしてた訳だから、昨日、ちょっと体を動かし始めたからこんな事もあるか〜]
と、『疲れて眠る』と言う目的は果たされていなかったが、よく眠れているし、何だか充実感を感じていた。
布団から出るなり、上半身は裸、下はトランクス一丁のまま、2冊の本を脇に抱えてトイレに一直線に向かった。
(蒸し暑い夜がつづく、男一人暮らしとはそんなもんだ)
用を足しながら、昨日何度か読み返した『マノスベの姿勢』の実践ポイントをもう一度読み返す。
『力まず、鼠蹊部を緩めて、カカトで立つ』か…
[ヤルしかない!]
[どれぐらい、疲れるかやって見ないと分からないよな?]
ゆるい練習でも、長時間やることで、それなりに疲れは出るに違いない!
そして、少しでも、体力を消耗しようと、少し日陰のあるベランダで練習することを思いついた。
上半身は裸のまま。下ももちろんパンツ一丁姿のまま。
そんなの…関係ない!
トイレを出るなりベランダに一直線!
両腕をダラリと腰の辺りまで上げて、ベランダにボケーッと立つ…50歳無職のオヤジの図…完成…だ!
コレが今日一日の練習と言う訳だ…
[ヤルしかない…]
俺がベランダで何をしていようと、誰からも見られる事は無い。
なぜならマンションの裏には、一面、田んぼが広がっているだけだ。
ベランダからの景色は、車2台がギリギリすれ違えるぐらいの農道がマス目になって見える。
車の通りは、時折、軽トラが通るぐらいで、人といえば、遠くで農作業をしている人を一人二人見かけるぐらいの静かな場所にある。
朝はやっぱり清々しい!
[気持ちイイ〜!最高やん!]
朝日を浴びてボケーッとベランダに立っていると心地よい気分になってきた。
落ち込んだ気分も、少し和らいだ感じもした。
時々、本で確認しながら…
カカト重心を意識して立ち続ける…
1キロほど先には、田んぼを東西に横切る姫路バイパスの陸橋が見える。
陸橋には防音壁が設置されていて、ベランダからは、東西に行き交う車の屋根だけが見える。
用意しておいた水でたまに水分補給をしながら…
特にコレといった体感もないまま…
1時間経ち…2時間経ち…
通行量の少なかった姫路バイパスも、少しずつ車の数が増えていく。
朝には心地よかった日差しも、時間の経過と共に夏のキビシイ暑さに変わってきた。
[暑くなってきた…でも…とにかく、続けないと…]
日陰になっているとはいえ、夏のベランダは予想以上に暑い…
[でも…止めるわけにもいかない…
ヤルと決めたから…]
あの本に書いてある事を思い出しながら…
力まず…
力を抜いて…
重心をカカトに置いて…
手はダラリと前に上げる…
3時間経ち…4時間経ち…
そのうちに姫路バイパスも朝の通勤ラッシュの渋滞が起き始める。
全身から汗もかなり出てきた…
ダラダラと流しながら、パンツ一丁でボケーッと立つ…俺…
「コレは人生のバツゲームなのか!?」
「何しとるねん…俺は…」
通勤ラッシュの渋滞を見ながら…
急に何かやり切れない気持ちにもなってくる。
社会から完全に孤立した感覚が襲う。
[50歳で無職か〜(涙)]
離婚に借金地獄、何も上手くいかなかった自分の人生…
社会的にオワってるなと痛感する今の現状…
普通なら、社会的に地位のある年齢のハズが、無職…
「最悪やな…」
まるで、小学生の頃、他の子達が勉強しているのに、何か悪い事をして廊下に立たされた少年のような気分だ。オッサンだけど…
忙しく行き交う車の通勤ラッシュと、ボケーッと立つ自分の姿をそんな情景に重ねてツラくなったりもした。
マノスベの姿勢の練習…
人生に詰まった時にヤル事か???
朝の清々しい軽やかな気分から一転、昼間はどんよりと落ち込んでいた。
「仕方ない…決めたから…」
「やり続けよ…」
『疲れる練習』という目的が果たされているのかどうかも良く分からなかったが、気温上昇により過酷な状況となったのは違いない…
中でも辛かったのは、マノスベの姿勢に対して何も体感を得られず、正しい姿勢かどうか確かめようのないまま継続する事だった。
時には、
[マノスベの姿勢のとにかく『練習』をしているのだ!]
と自分に言い聞かせながら立ち続けた。
2日目は、食事もそこそこに(おにぎり1個だけ)、精一杯、全身全霊でマノスベの練習に明け暮れた一日となった。
明け暮れたとは言いながらも、やってる事はそんなに大した事も無い。
ただ突っ立ってるだけだ。
しかも、出来るだけ緩めて。
あ、22時…
いつのまにかそんな時間に…
そろそろ、終わりにしよう。
「えーと、朝6時から22時までだから…
だいたい15時間は立ってたんだから…
これはイイ感じにめっちゃ疲れたよね〜…
ってオーイ!!全然疲れてへんやん!!」
一応、15時間ぐらいは立ってたんだけどな…
足もそんなに疲れて無い感じだし、なんか不思議な体感だな…
昨日よりも確実に何だか元気になっていく感覚…
「ボケーッと立ってるだけで…??」
マノスベの姿勢の練習2日目に『何故だか不思議と疲れない』という感じだった。
この『疲れない』という違和感を伴う感覚は、これから始まる驚きの体験の序章に過ぎなかった…!
次回に続く♡