
拘縮の話―拘縮ケア・仰向け編
はじめに
筋性拘縮の根本は”寝たきり“
仰向けなどの同じ姿勢のままでずっと横になっていると、重力に対して姿勢を保つための“抗重力筋”が過剰に働き、筋肉が縮んでしまったり、体が反ったりして拘縮になります。
要介護度が高かったり、拘縮が進んでいるとベッドでいる時間も長くなります。
このため寝ている時の姿勢を見直すことは拘縮ケア・予防に繋がります。
筋肉の緊張が緩む正しいポジショニング方法を確認していきます。
仰向けの場合
仰向けになった時のベストな部分をポイントとして上げていきます。
1. 首の後に隙間がない
2. 肩の内側に入り、両肩甲骨が開いていること
3. 腰が反っていない
4. 膝を立て、膝裏に隙間がない
5. 肩と骨盤が揃って背骨にねじれや傾きがない
ここだけ見ると何かが違うと思います。
正しいポジショニングとは、抗重力筋の影響が強い背中側の緊張をできるだけ減らすことになります。
拘縮が起こる原因と仕組みをしることで、自ずと正しい方法がわかっていきます。
1. 首の後に隙間がないこと
首の後に隙間があると、首の後の筋肉が緊張してしまいます。
次第に首が反り返り顎が天井を向いて突き出してきます。
首と繋がっている背中側の筋肉も緊張してしまうため、腹筋がはたら泣かなくなり、口が閉じられなくなります。
口が開いていると、口の中が乾燥し菌が繁殖しやすくなり、口腔内のトラブルになります。
口の中のトララブルは誤嚥性肺炎のリストも伴います。
首の後ろに隙間ができないように、枕を深く入れて置きます。
これだけで、首や背中の緊張が緩み、腹筋が活性化し、呼吸も楽になります。
首は1番身体への影響が強く、とても重要なポイントになるので、しっかりしていきます。
2. 肩甲骨周囲について
肩の正しいポジショニングは両方の肩甲骨が外側に開いている状態になっ
ていることです
寝たきり状態では、背中の筋肉が緊張していまい、肩甲骨が内側へ引っ張
られてしまい、旨が開いた状態のママ背中の筋肉が固まってしまいます。
ここで筋肉を柔らかくしていきます。
内側へ向いているなら、外側へ向かって開いていきます。
肩の下にクッションやタオルを入れると、両肩が前へ引き出され肩甲骨が
外側へ開きます。
介護者の体を動かす時は、“関節の動かし方“を参照し安全に動かします。
注意点1
・肩の下の隙間がある場合
肩の下にクッションやタオルを入れる際、肘を支えるより肩を支える方が楽になります。
逆に肩に支えがない方が辛いです。
タオルやクッションの長さが足りない場合は、肩へ入れて支えるようにします。
・脇を開かせるためにクッションを入れない。
脇が閉まっている場合は、脇の下にクッションやタオルを入れていることが多いです。
この脇を開くために行っていることがNGになってしまうのです。
無理に脇の下にクッションなど入れてしまうと、肩甲骨がさらに背中側で内側に寄ってしまい、拘縮も進んでしまう原因になってしまいます。
“脇が締まっているから開かせたい“と言うのではなく、”拘縮の原因である重
力の影響や筋肉の緊張を緩める“と言うところでやると上手く行きます。
肩に支えが入り、肩甲骨が開くと指の握り込みが緩みます。
誰でも筋肉が緊張していると、こわばってしまいます。
拘縮で筋肉が固くなっている人には、筋肉の緊張を和らげることに留意していくことが大事になります。
3. 腰の周囲
腰の正しいポジショニングは腰の下の隙間をなくすことになります。
人は足を伸ばしたまま仰向けになると、腰の下に隙間が出来ています。
拘縮に寄って膝関節に制限があったり、骨盤が前方に傾いていると、
特に腰が浮いてしまいます。
腰の下に隙間があると、支えが減ってしまい、背中側の筋肉が緊張してしまいます。
このままでは、拘縮が進んでしまうのですぐに、正しいポジショニングを行う必要があります。
膝を深く曲げると、骨盤が後ろに傾いて安定するため、腰の下の隙間がなくせます。
ここからその手順について説明していきます。
1. 片足を持って膝を深く曲げる
まずは片足の膝と踵を持って、足の付根を深く曲げます。
深く曲げることで固まった下半身が動きやすくなります。
拘縮のある人の場合は、少しの動作でも痛みや損傷が起こりやすい
です。
なので負担をかけないように、片足づつ行っていきます。
2. 膝の下に大きなクッションを入れる
膝の下に大きなクッションを入れて、曲げた足を乗せます。
3. 反対側も膝も深く曲げる
反対側の膝も同様にして深く曲げてクッションに乗せます。
可能ならば左右の膝の角度を揃えます。
最後に膝の下に手を入れて隙間をチェックします。
隙間がある場合は、膝の角度が浅いのかも知れません。
膝は90度を目安に深く曲げます。
4. 膝を立て、膝裏に隙間がないこと
膝の正しいポジショニングは膝をしっかり立て、膝下の隙間をなくすこと
です。
腰のところでも触れていますが、膝を立てた時に隙間がないように確認
します。
膝裏に隙間があると、不安定になり足の筋肉が緊張して拘縮になりやすい
です。
大きなクッション・小さなクッションや座布団、タオルなどを組み合わせて、隙間を埋めておきます。
複数のクッションを使う場合は、まずしっかりお尻にクッションを当て、隙間をなくし、クッションやタオルを詰めます。
拘縮ケアは隙間をなくして行くことがポイントになります。
しっかり下半身を支えるには、柔らかいものではなく、固めのもので。
隙間を埋める時は、ふんわりよりキツめに詰めておきます。
注意点2
曲がっている足を見ると伸ばしてみようとすることがあると思います。
“無理に膝を伸ばす”ことは注意すべき点に当たります。
無理に伸ばしたとしても、関節に制限のある要介護者からすると、痛みを伴い、そのままにされているのは大変辛いのに、それも言えない側からすると、耐えるしかないのです。
不安定な状態では筋肉は緊張します。
そこから両膝がくっつき、そのまま固まって股が開かなくなるのです。
要介護者にとっての楽な姿勢は両膝をしっかり立てることになります。
足を伸ばすことがよいこととされていましたが、実際は拘縮を助長することになります。
これまで行ってきたことが良かったことか見極めていくことになります
実は膝を立てることは良くないとされてきた背景には、“褥瘡ケアの観点”がありました。
体圧測定機を使って両膝を絶てた状態で測ってみた所、仙骨部に2.5倍ほどの圧が高まったため避けられていたのです。
この測定時にはクッションが入っていませんでした。
クッションが入っていることで、下半身の圧がクッションで分散され褥瘡の心配もなくなりました。
5.肩と肩甲骨が揃っていないと背骨にねじれや傾きが
全身の姿勢で大事なことはねじれ・傾きがないことです。
肩や腰などが斜めになって背骨がねじれていたり、左右の肩と骨盤を結ぶ線が平行ではなく、傾いていると強い苦痛を感じます。
見た目で明らかなねじれや傾きがある場合は、すぐに直しておきます。
ねじれや傾きを見つけたらすぐに治せるように意識しておきます。
たまに片膝だけ曲がっている人がいると思います。
どうして片足だけ曲がったまま拘縮するのか。
原因としては、背骨のねじれ・傾きの放置にあります。
骨盤の高さのずれてねじれがある場合、背中が痛かったりします。
この背中の痛みは片足を立てることで、痛みが和らいでいきます。
このため無意識のうちに痛みを軽減させるため膝を曲げていきます。
ねじれを解消しないと、曲がったまま拘縮するのです。
子だがねじれ放置による拘縮の仕組みなのです。
片膝が曲がってしまった場合、どんな対処方法があるのでしょうか。
最初に伸びている方の膝を曲げて両膝を立てます。
左側の骨盤が高い“ねじれ状態”の場合は、膝は自然と右側に傾いていきます。
両膝に手を添えて、傾きを治すように背骨がねじれていない正しい位置へゆっくりと動かします。
これでねじれが解消されます。
ねじれ解消後は、両膝を立てたまま膝裏にクッションを入れてポジショニングします。
見た目でわかりにくいねじれや傾きは、左右の骨盤を指で触って高さを確認する必要があります。
でも、ちゃんと正しい位置を知らないと判断がむずかしいところです。
見た目でわかりにくい場合は、リハビリの人などに確認方法などを教えてもらうのがいいです。
正しいポジショニング
正しいポジショニングをすると早くて5~10分で、長くとも30分後には身体に変化が現れます。
ポジショニング後は正しいポジショニングが出来ているか、介護者の体の変化を見ておきます。
変化1.口を閉じて表情が緩む
首の後に隙間があると、首が沿って口が開いて表情筋がこわばります。
正しいポジショニングで、首や頭を支えると、首の反りが解消され、開いていた口が閉じ、こわばっていた表情が緩んで来ます。
表情筋が緩むと、表情がはっきりするのでコミニケーションも取りやすくなります。
変化2.手指の力が抜ける
肩甲骨が寄って背中側に緊張が走ると、手首や指が曲がって強く握り込んだ状態になります。
正しいポジショニングで肩を支えると、肩甲骨が開いて筋肉の緊張がなくなり、手の握り込みが自然と解消されていきます。
ポジショニングはやりっぱなしではなく、効果が出ているか、きちんと確認することも大事です。
例えば脇ではなく肩にクッションを入れることに対して、脇を開かなくても大丈夫かと思います。
実際に試してみると、片方の脇をギュッと締めた状態で肘を斜め前に動かすと、空間ができます。
肘を斜め前に動かすと肌と肌が接する部分は、圧倒的に減り、逆に蒸れなくなるのです。
今までの方法床なると無条件で、不安になったり、疑問に感じたりすることもあると思います。
拘縮の仕組みや原因を学んで”正しい”と思ったり、自分でも経験してみて、”全く楽になった”とか、介護者に使ってみたら”効果があった”と実感することで学んでよかった、経験できてよかったなど思ってやっていってほしいのです。
目の前の介護者に対して、どういう目的を持って介護をしていくのか。
ということを見つめ直して欲しいのです。
今までの方法が適切か、どんな方法ならいいのか、判断していけるようになっていきたいものです。
いいなと思ったら応援しよう!
