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読み聞かせの秘め力

 ”まのいいりょうし” を屋号に掲げる私たちは
 常々 ”まのいい暮らし“ について考えている。

 うちにはテレビがない。
 なので、たまにテレビ番組を見ると 新鮮な気持ちで感心してしまう。企画や構成、番組一本作る為にかけられた時間や人力の数を想像して、「すごいな」と素直に思う。
 先日、わたしが信頼してやまない絵本屋さんに勧められた番組を観て、すこぶる感動した。NHK の「こころの時代 言葉の力 生きる力」という番組で、児童文学者 松居直さん のインタビューである。

 松居さんの信念は
「絵本は子どもが読むものではない。大人が子どもに読んで聞かせてやるものである」
 言葉は目に見えないけれど、大人が読むお話を 耳 で聴き、本に描かれた絵を 目 で追っていると、子どもたちの頭でお話と絵が合体して動き出す。自分が本当に体験したような 想像の世界に入っていける。
 そんな内容だった。

 子どもが、スマホやゲーム機を握りしめ、画面に半分魂を持ってかれてるような光景に出会うと、わたしはどこか居心地の悪さを覚える。
 小学校で行われた「メディアとの付き合い方」の講演会を聞いたのだが、
今の時代、もう子どもがネットワーク社会に触れずに過ごすのは難しくて、SNSでのトラブルやイジメ、事件、依存問題が付きまとうご時世。そんな情報社会での生き方、起きてしまう問題の根源を見つめるお話だった。

 そこで私が思ったのは、問題の原因は”何かを制限して機器をどんな風に扱うか”ではなくて、子ども達が
「この言葉は相手がどう思うかな」「この誘いは危ないんじゃないかな」
と、想像する力を身につけるべきなんじゃないか。想像力が豊かな子は、どこまではやって良くて、何が危ないのかを察知できるのではないか。その力を培うのが、”読み聞かせ” で育む ”本の世界” なのではないか。

  松居さんの番組と この講演会での記憶が、わたしの中でリンクし、すこぶる感動を巻き起こした。
 ゲーム機などの受動的な機器に対して、なぜ居心地の悪さが生まれるのか、疑問の答えを受け取った感覚になり、心にファンファーレが鳴り響いた。

 ”想像の世界を持てる子は、大人になっても なんでも生み出せる。この世は楽しい所と感じて生きていける。” と松居さんは言う。
 この先ハイテク社会がどんなに加速しようが、無垢な子どもに大切なことってのは、時代関係なく変わらないんだなあと思った。
 もし、読み聞かせで子ども達に大切なものを育んでもらえるのなら、こんな まのいい話はない。なんなら、読み聞かせさえ押さえといたら親の任務を果たせるのでは?とさえ思えてきた。

 そうして張り切って、今宵もきっと寝落ちする。


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