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(53)ソフィアの憂鬱ーーchinko to america by mano


 ソフィアがニューヨークにやって来てから1カ月が経とうとしていた。再び一緒に暮らすことができ、それについては申し分なかった。しかし、問題がまったくないわけではなかった。
 ソフィアが抱えていた問題とは、ビザについてだった。彼女のビザは1年間のみ有効なもので、その先も継続してアメリカに居住するには、労働ビザの取得をサポートしてくれる企業に就職し、労働ビザに切り替える必要があった。オレ自身もかつては同じ問題を抱えていたが、幸い、ビザ取得のサポートをしてくれる日本企業に勤めることができたため、3年間有効の労働ビザがちょうど下りたところだった。
 
 最初のころは、ソフィアの就職に関してオレは楽観視していた。コロンビアの名門大学を出ているし、インターナショナルスクールに通っていたため、英語もネイティブ並みにできる。彼女の履歴は、オレのものよりはるかに優れていた。
 マーケティングを専攻していたソフィアは、その分野の仕事を探し始めた。ところが、なかなか見つからない。ネットで好条件の募集を見つけることもあったが、勤務地が中西部の州だったりするなど、うまくマッチしなかった。
 そのうちに、彼女はホームシックにかかり、コロンビアに帰りたいと言い始める。
 
 今でも、どうしてあのとき、もっとソフィアの気持ちに寄り添えなかったのかと後悔の念に苛まれるときがある。コロンビアに残っていれば、彼女の学歴からすれば、いくらでも仕事を選べたはずだった。にもかかわらず、オレと暮らすことを優先させて、卒業してすぐにアメリカに来てくれたのだ。それを考えれば、もっと親身になって彼女に接するべきだった。
 しかし、当時はそんなことを考えられる優しさがオレには不足していた。
 ホームシックにかかってからのソフィアは、コロンビアの実家にしきりと長電話をするようになる。相手は母親や2歳年上の姉だった。それが毎日のように続くと、オレは置き去りにされたような気持ちになり、いい気がしなかった。
 
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