マーノ

ライター/翻訳家。かつて住んでいたアメリカでの経験を「chinko to americ…

マーノ

ライター/翻訳家。かつて住んでいたアメリカでの経験を「chinko to america(ちんことアメリカ)」というエンタメノンフィクションに仕立てて投稿していきます。

最近の記事

『ちんことアメリカ 下』

 上巻につづいて、下巻も出しました。  表紙の絵は、上下巻とも小学生低学年の娘が書いたものです。  彼女はそれらが何に使われるのか、まったく知らず。  ところが昨日、パソコンで作業をしていたら、ちらりと見られてしまいました。 「パパ、ちんことアメリカって、何!? 私の書いた絵が出てるけど?」  やってしまいました。しどろもどろになってごまかしたけど、「ちんことアメリカ」っていう言葉は記憶に焼き付いたことでしょう。  数年後、自分でパソコンやスマホを操るようになり、そのときにふ

    • chinko to americaを電子書籍化しました

       2024年5月よりダラダラとnoteにアップしてきた「chinko to america」を『ちんことアメリカ』に改題して電子書籍化しました。  この話を途中から一部有料化して、100円の値段を付けましたが、結局、一度も売り上げられませんでした。やっぱりモノを売るのは難しいですね。  とはいえ、まあ最後まで書き上げたので、上下巻にして電子書籍化してみました。  この話には、「オレ」が恋愛感情を抱いた女性が複数人出てきます。書いている間は、彼女たちのことを1人ひとり思い出

      • (55)エピローグ 今になってわかってきたことーーchinko to america by mano

         2001年9月11日――。  アメリカから日本に舞い戻り、1カ月が過ぎようとしていた。  帰国したらすぐに仕事を見つけて、再び1人暮らしを始めるつもりだった。だがオレは、いつまでも実家にこもったまま、ずるずると怠惰な生活を送っていた。    夜のニュース番組で、マンハッタンの世界貿易センタービルが映し出されているのを見たのは、風呂から上がってすぐ、冷えたビールをコップに注いでいたときだ。  ニュースキャスターの慌ただしい口調から、ニューヨークで何かが起きていることはすぐに感

        • (54)別離と帰国ーーchinko to america by mano

           ソフィアがコロンビアに帰ってしまってからというもの、ニューヨークでの生活は一気につまらなくなる。ショーンの実家が同じクイーンズにあったため、ソフィアがいるころはショーンの彼女を含めて4人でよく遊びに行った。だが、そのショーンも大学の医学部を卒業し、今はニューヨーク州北部の病院で研修医をしていて地元にはほとんど帰ってこない。    ソフィアが帰国してからは1日置きに交代で電話をし、互いの近況報告をした。家族の下に戻れたソフィアは元気を取り戻し、電話口から聞こえてくる声は明るい

        『ちんことアメリカ 下』

          (53)ソフィアの憂鬱ーーchinko to america by mano

           ソフィアがニューヨークにやって来てから1カ月が経とうとしていた。再び一緒に暮らすことができ、それについては申し分なかった。しかし、問題がまったくないわけではなかった。  ソフィアが抱えていた問題とは、ビザについてだった。彼女のビザは1年間のみ有効なもので、その先も継続してアメリカに居住するには、労働ビザの取得をサポートしてくれる企業に就職し、労働ビザに切り替える必要があった。オレ自身もかつては同じ問題を抱えていたが、幸い、ビザ取得のサポートをしてくれる日本企業に勤めることが

          (53)ソフィアの憂鬱ーーchinko to america by mano

          (52)ソフィアとの同棲生活ーーchinko to america by mano

           6月ももうすぐ終わりを迎えるころ、大学を卒業したソフィアがいよいよニューヨークにやって来ることになった。ずっと待ち続けてきた日がようやく訪れる。  到着口のゲートが開くと、目の前に彼女の姿が現れた。この瞬間をどれだけ待ち望んできたことか。約1年ぶりの再会だ。 「やっと会えた……。来てくれて本当にありがとう」  ソフィアが卒業した大学は、コロンビア国内で1、2を争う名門大学だった。そのままコロンビアにいれば、おそらく仕事選びには苦労しなかったはずだ。それについて2人で何度か話

          (52)ソフィアとの同棲生活ーーchinko to america by mano

          (51)ニューヨークでの生活の始まりーーchinko to america by mano

           翌日は朝8時から運転を再開した。  ケンタッキー州からウェスト・バージニア州、ペンシルベニア州を経て、ハドソン川を挟んでマンハッタンの対岸に位置するジャージーシティーに到着する。休憩を含め、ここまで約12時間の道のりだった。  マンハッタンへの入口となるホランドトンネルをくぐる前で高速を降り、大きなガソリンスタンドを見つけたオレは、駐車場に車を止めて車中泊をした。明日はいよいよニューヨークに入る。当面の間は市内のクイーンズに住むショーンの実家に居候させてもらう予定だ。  

          (51)ニューヨークでの生活の始まりーーchinko to america by mano

          (50)ソフィアとの将来ーーchinko to america by mano

           標識に従って280号線を東に向かいニューアークに入り、次に78号線へとスイッチする。ニューヨークまではもう目と鼻の先だ。  入り組んだジャンクションの分岐を間違えないように神経を集中させて運転していく。このまままっすぐ進むとイーストリバーの真下を通るホランドトンネルに通じ、そこを抜けるとマンハッタン島に出られるはずだった。  すでに陽は沈み、空は暗くなっている。それと入れ替わりに、道路脇の広告看板が眩しい光を放ち始めた。先ほどから緩いカーブを曲がるたびに、その先に摩天楼が現

          (50)ソフィアとの将来ーーchinko to america by mano

          (49)ニューヨークーーchinko to america by mano

           大学最終学年のシニアになった8月末にソフィアがやって来て、オレたちはすぐに付き合い始めた。ソフィアは、アメリカの学生生活を経験するためにコロンビアの大学を1年間休学していた。ところが、アメリカに来てすぐにオレと出会ったため、アメリカでの暮らしというよりも、「日本人との暮らし」を体験することになった。 「まさかアメリカに来て、日本人の恋人ができるとは思わなかった。私にとって人生で最も素晴らしい大誤算だったわ」  ソフィアはことあるごとにそう口にする。  アメリカにやって来てか

          (49)ニューヨークーーchinko to america by mano

          (48)chapter 9ーーchinko to america by mano

           大学の周囲には、学生を対象としたアパートが数多く建ち並んでいる。オレの住んでいるアパートは、キャンパスから歩いて5分ぐらいのところにあった。間取りは、ベッドルーム、リビングルーム、キッチン、バスルームというもので、1カ月の家賃は350ドルだ。  初めてセックスをした日から、ソフィアはオレのアパートで寝起きするようになった。昼の間に短期間だけ寮に帰ることはあるものの、生活の基盤は完全に移っていた。  ソフィアとオレの同棲生活はこうしてスタートしていく。    まったくモテなか

          (48)chapter 9ーーchinko to america by mano

          (47)無駄になったHIV検査ーーchinko to america by mano

           土曜のパーティーのあと、オレのアパートでソフィアと過ごしてから、まだ2日しか経っていない。だが、その間に2人の関係は急激に発展していた。オレは今、彼女に完全にのめり込んでいる。  ソフィアとオレはリビングのソファーに座りながら、自分たちや家族のことを話していた。あまりにも急な展開だったため、互いのことをまだよくわかっていなかった。  ソフィアの姉妹は2人とも優秀で、一番上の姉は弁護士をしているという。ソフィア自身も、コロンビアで一番古いとされる名門私立大学に通っていた。 「

          (47)無駄になったHIV検査ーーchinko to america by mano

          (46)HIV検査を受けに行くーーchinko to america by mano

           午前2時を回ったころ、ようやくパーティーが終わった。  それぞれが別れの言葉を交わし、寮やアパートに帰っていく。アパートのポーチで立ち話していたニックもそろそろ帰るつもりらしい。 「マノ、ソフィアの見送りは頼んでいいよな?」  そう言うと、帰り支度をしていたソフィアに別れを告げ、自分のアパートに戻っていった。  ソフィアがアパートから出てくると、オレは「楽しかった?」と聞いてみた。するとすぐに「うん、とっても」という答えが返ってきた。  彼女は、ここから歩いて5分ほどのキャ

          (46)HIV検査を受けに行くーーchinko to america by mano

          (45)ソフィアとのダンスーーchinko to america by mano

           ホセたちのアパートには、すでにたくさんの人たちが集まっていた。  アパートの中に入り切れない参加者たちは、外の芝生のところにたむろしている。この辺りの住人は学生ばかりで、そのうちの多くがパーティー参加者している。そのため、週末はどれだけ騒いでも文句を言う者はいない。    友人たちと挨拶を交わすと、オレはすぐにソフィアの姿を目で追った。今夜はニックがソフィアのエスコート役のようになっていて、彼女がパーティーの参加者たちから取り残されないようにその場にいた人たちに紹介して回っ

          (45)ソフィアとのダンスーーchinko to america by mano

          (44)chapter 8ーーchinko to america by mano

           大学に入学してから三度目となる夏休みも終わり、9月に入ると秋学期がスタートした。シニア(4年生)に進級したオレは、いよいよ学生生活の最終年を迎えた。  この3年間、オレはこれまでに想像もしていなかったような世界を見てきた。その主たるものは、やはりエリンやダニエラ、アナ、クレアに関することだった。     目を閉じると、すぐに彼女たちの姿が鮮明に瞼に浮かび上がってくる。こうなると、もうオレはどうすることもできない。彼女たちが無性に恋しくなり、胸の内が急に締め付けられていくのだ

          (44)chapter 8ーーchinko to america by mano

          (43)我に返るクレアーーchinko to america by mano

           クレアとオレの関係を真っ先に不審に思い始めたのは、彼女のシェアメイトではなかった。     シェアメイトの1人にエイミーという名前の女の子がいる。彼女のボーイフレンドのジョシュアが、オレたちの関係を怪しむようになった。  確かに、クレアの家でジョシュアと顔を合わすたびに、「こちらを睨むような厳しい表情を向けてくるな」とは気づいていた。事実、挨拶をしても、軽くあごを突き出すようにして反応するだけで、言葉にして挨拶を返すことはない。感じは良くなかったが、大学でも接点はないし、友

          (43)我に返るクレアーーchinko to america by mano

          (42)血の滴るような赤身の肉ーーchinko to america by mano

           オレとクレアは、誰にも言えない秘密をさらに持つことになってしまった。そのことがより強く2人を結び付けたのか、スペイン語クラスの前期が終わってからも、理由を見つけては毎日のように顔を合わせていた。  後期が始まるまでの2週間ほどの休みの間、クレアには済ませなくてはならない大仕事が待ち受けている。秋からシニア(4年生)になるのを前にして、女友だち2人とキャンパスの外にある一軒家に引っ越す計画を立てていたのだ。 「引っ越し、手伝おうか?」  オレがそう言うと、彼女は少し困ったよう

          (42)血の滴るような赤身の肉ーーchinko to america by mano