(48)chapter 9ーーchinko to america by mano
大学の周囲には、学生を対象としたアパートが数多く建ち並んでいる。オレの住んでいるアパートは、キャンパスから歩いて5分ぐらいのところにあった。間取りは、ベッドルーム、リビングルーム、キッチン、バスルームというもので、1カ月の家賃は350ドルだ。
初めてセックスをした日から、ソフィアはオレのアパートで寝起きするようになった。昼の間に短期間だけ寮に帰ることはあるものの、生活の基盤は完全に移っていた。
ソフィアとオレの同棲生活はこうしてスタートしていく。
まったくモテなかったオレが、今となっては恋人と同棲までしている……。目の前で起きている現実に確かな実感を抱くこともなく、まるで雲の上を歩いているような気分だった。
授業が終わって夕方になると、週に3回、ソフィアとオレは室内プールで1時間ほど泳いだ。それを済ませると、カフェテリアに行って夕食をとる。そのあとは、図書館で11時ごろまで勉強するのがお決まりだった。
週末は、以前と変わらず、パオラたちのパーティーに参加する。ただし、ソフィアが恋人になってからは、オレの行動パターンは徐々に変わってきた。
それまでは、酒を飲みながら、女の子たちと踊るだけで十分楽しかった。ところが、今はソフィアがいる。となると、かつてのように酔っぱらってばかりはいられない。
その結果、パーティーで飲む酒の量はだいぶ減った。そして、その隙間を埋めてくれたのがダンスだった。
パーティーにやって来るコロンビア人たちは、ダンスがしゃれにならないくらいうまい。音楽が流れてくると、いてもたってもいられなくなるのか、反射のようにすぐに体を動かし始める。彼らにとって音楽とダンスは生きる上でなくてはならないもののように映った。
ダンスが上手なのは、ソフィアも例外ではない。そのことは、出会った晩のパーティーで一緒に踊ってすぐにわかった。彼女自身も、「お酒を飲まなくても、一晩中、踊っていられるくらいダンスが好き」と話すほどだ。そんな恋人ができたことで、オレは腰を据えてダンスを習得してみたい気分になった。
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