(47)無駄になったHIV検査ーーchinko to america by mano
土曜のパーティーのあと、オレのアパートでソフィアと過ごしてから、まだ2日しか経っていない。だが、その間に2人の関係は急激に発展していた。オレは今、彼女に完全にのめり込んでいる。
ソフィアとオレはリビングのソファーに座りながら、自分たちや家族のことを話していた。あまりにも急な展開だったため、互いのことをまだよくわかっていなかった。
ソフィアの姉妹は2人とも優秀で、一番上の姉は弁護士をしているという。ソフィア自身も、コロンビアで一番古いとされる名門私立大学に通っていた。
「でも私、まさかアメリカに来て、日本人と付き合うことになるとは思わなかったな……」
会話の途中で、ソフィアが突然そう言った。
「マノが嫌な気持ちになったらごめんね。でも正直に言うと、自分の人生の中で東洋人を好きになるなんて、絶対にないと思ってたの。うちの実家のすぐ近くに中華レストランがあるんだけど、そこで働く人たちをずっと見てきたから、東洋人に対して偏見を持ってたんだ。そのレストランからはいつも油っこい匂いが流れてくるし、働いている人たちはいつも大きな声で中国語を喋ってて、何か不気味な感じがしたんだ。私に東洋人に対する偏見があったのは間違いない。大学の友だちに『日本人のボーイフレンド』ができたって言ったら、皆ひっくり返って驚くだろうなあ。それくらい私は東洋人に興味がなかったの。マノのことが好きなのは、私のそういう偏見を打ち壊してくれたせいもあるんだ」
その話を聞いて、それまでオレがアメリカで感じてきた東洋人に対する見えざる偏見に直に触れたような気がして複雑な気持ちになった。
ただし、そうした偏見の壁を打ち破り、ソフィアのような魅力的な女性に好きになってもらえたことに自尊心をくすぐられてもいたのも事実だ。
オレ自身の中にも、特定の人種、国、宗教、考え方に対する様々な偏見は存在する。それは否定しがたい。しかし重要なのは、それらの偏見を覆す経験をしたときに、潔く自らの考え方を改める心の柔軟さを持つことだと思う。そしてソフィアは、それをあっさりと実行した。自分の正直な気持ちを告白してくれたソフィアを、オレはさらに好きになった。
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