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(33)大学での暴露ーーchinko to america by mano

 コロンビアから帰ってくると、5日ぶりに大学に顔を出した。この間、オレはいくつかの授業をさぼっていた。
 ダニエラに会いにコロンビアに行くことは、ソフモアのころに仲良くなった政治学専攻のクレアに伝えていた。
 オレが大学をさぼってダニエラに会いにコロンビアまで行くと話すと、彼女は「マノ、それはクレージー過ぎるよ。考え直したほうがいいんじゃない」とアドバイスしてくれた。だが、そんな言葉が耳に入ってくるはずもなく、「内緒だからね」と念を押し、オレはコロンビアに旅立っていた。
 
 帰国して初の授業は、公共政策のクラスだった。偶然クレアもこの授業を取っていて、彼女以外では同じく政治学専攻のライアンもいた。
 ライアンはアメリカ人にしては細身で、身長もオレとほぼ変わらない。170センチを少し超えるくらいの白人学生だ。ソフモアになってからは、登録する授業が重なるためにちょくちょく顔を合わすのだが、どこか高飛車なところがあり、オレは彼があまり好きではなかった。当然ながら、コロンビアに行くことは彼には一言も話していない。ところが、公共政策の授業を受けるために教室に入っていくと、ライアンが大きな声でオレに話しかけてきた。
「おい、マノ! おまえ、人妻と恋に落ちて、コロンビアにまで会いに行ってたんだってな!」
 いきなりだったので、オレはただただ戸惑うしかなかった。しかも意地の悪いライアンは、わざとクラスメート全員に聞こえるように、「人妻」「コロンビア」という単語を強調しながら大声を張り上げた。

 ライアンの言葉を聞きつけて、20人ほどのクラスメートはオレのほうを注目し、どんな答えが発せられるのか興味を示し始めている。さらに最悪なのは、早めに教室にやって来た公共政策を教える非常勤の先生までがライアンの暴露を耳にしてしまったことだ。彼女は30代前半の美人講師で、普段から気軽に会話を交わせる間柄だった。
 その場の状況にうろたえたオレはのぼせたようになり、鏡を見なくても顔が赤くなっているのがわかった。
 そこで何か気の利いた言葉を返せればまだよかった。だが、何も頭に浮かばず、黙って席に着くしかなかった。

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