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(11)ストリップ小屋の罠にひっかかる3人の男たち――chinko to america by mano
翌日、再びハイウェーをひたすら突っ走る旅が始まる。次の目的地はメキシコとの国境の町エルパソだ。ここから国境を越えて、メキシコ側のシウダーフアレスを訪れる予定を立てている。
ルイジアナ州からテキサス州に入ると、乾いた大地が広がり出した。赤茶けた土地に一直線の道がどこまでも続き、遠くには岩山がそびえているのが見える。
中規模の都市に近づくと、カーラジオが地元のFMラジオ局の電波をとらえ、スピーカーからは最新のヒットチャートを賑わす曲が流れてくる。
それを聞きながら1時間も走ると、電波は徐々に弱くなり、ザーッという雑音と共に次第に何も聞こえなくなる。他のラジオ局を探すためにカーラジオの選局ボタンを押すのだが、周波数を表す緑色の数字がくるくると変わるだけで、どこかで止まる気配はない。
会話も途絶え、押し黙りながら窓の外の景色を眺めていると、「オレは今、アメリカにいるんだ」という実感が胸に迫り、気持ちがやたらと満たされていく。
さらに1時間ほど走り、ハイウェー沿いにガソリンスタンドやモーテルがちらほら見えてくるころ、再びカーラジオのスイッチをオンにする。するとまた、どこかのFMラジオ局から音楽が流れてくる。
こんなサイクルを何度も繰り返しながら、オレたちはエルパソを目指した。
テキサス州の州都オースティン郊外のモーテルで1泊し、翌日の昼前にエルパソに到着した。ニューオーリンズを出てからすでに24時間近く経過している。アメリカは半端なく、マジで広くて大きな国だ。
国境近くの有人パーキングに車を停めると、オレたちは徒歩でメキシコに向かった。
アメリカ側からメキシコ側に入ると、がらりと空気が変わるのがわかる。たった数百メートルしか離れていないのに、町の雰囲気が一気に騒がしくなり、発展途上国特有の活気で溢れかえっている。オレは東南アジアかどこかを旅しているような錯覚に陥り、楽しくてたまらない。
だが、そんなオレの気持ちとは裏腹に、辺りを歩いているうちにカシムがぽつりとつぶやいた。
「オレの友だちが『メキシコに行ってもつまらないぞ』って言ってたんだけど、その意味がわかったよ……」
カシムは、活気に満ちた賑やかな街が嫌いなのだろうか。彼が「つまらない」と思う理由をオレはさっそく聞いてみる。
「だってさ、この街の雰囲気はパキスタンにそっくりなんだよ。せっかく外国にいるっていうのに、自分の国と同じようなところに来てもつまらないだろ」
なるほど、そういうことか。同じ場所を見ていても、立場が変われば感じ方は人それぞれだ。
ぶらぶらと歩き続けていると、オレたちはひときわ騒がしい通りを見つけた。通りには多くの屋台が出ており、バーが何軒も建ち並んでいる。
そして、ここでもオレたちを釘付けにしたのがストリップ小屋だった。
ストリップ小屋を見つけて一気に元気になったのが、さっきまで「つまらない」と言っていたカシムだ。「入ろう、入ろう」と早くも興奮気味で、落ち着きを失っている。もちろん、オレとジェイも「すぐにでも入りたい」と思っていた。
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