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(42)血の滴るような赤身の肉ーーchinko to america by mano

 オレとクレアは、誰にも言えない秘密をさらに持つことになってしまった。そのことがより強く2人を結び付けたのか、スペイン語クラスの前期が終わってからも、理由を見つけては毎日のように顔を合わせていた。
 後期が始まるまでの2週間ほどの休みの間、クレアには済ませなくてはならない大仕事が待ち受けている。秋からシニア(4年生)になるのを前にして、女友だち2人とキャンパスの外にある一軒家に引っ越す計画を立てていたのだ。
「引っ越し、手伝おうか?」
 オレがそう言うと、彼女は少し困ったような顔をして断った。 
「大丈夫。お父さんとジムが手伝ってくれるから……」
 そうか。そうだよな……。彼女には家族もいるし、婚約者もいる。オレが出る幕はまったくなかった。
「でも、聞いてくれてありがとう。片付けが終わったら、遊びに来て」
 その言葉を聞き、オレは密かにクレアの新居でセックスをしている光景を思い浮かべ、体を疼かせた。
 
 引っ越しから1週間ほど経ったある日、クレアから電話がかかってきた。
「昨日、実家に帰ったら、お父さんが鹿の肉をたくさんくれたの。これからシチューを作るから、うちにランチを食べに来ない?」
 その肉は、父親がハンティングで仕留めた鹿のものらしい。オレはすぐに「行きたい!」と返事をした。鹿の肉なんて、これまで見たこともなれば、もちろん食べたこともない。興味をそそられたオレは「珍しいから作るのも手伝いたい」と申し出た。こうしてクレアと一緒に料理をすることが決まった。
 11時には引っ越した家に着けるように、歯を磨いてシャワーを浴び、出掛ける準備を整える。彼女の新しい家の場所はオレのアパートから車で10分くらいのところにある。出掛ける直前、財布の中にコンドームが入っているかどうかを確認するのも忘れなかった。

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