「前方、雪にはまって身動きが取れない車がおります。少々お待ちください」 耳慣れないアナウンスが聞こえてきたのは、路面電車に乗って四駅ほど通過したところだった。 今日は朝からすごい雪だった。警報が出るほどの大雪で公共交通機関は軒並み運休、遅れ、間引き運転。交通網は乱れ放題で、唯一平常だったのは、多分地下鉄だけだったはず。かくいう自分も、今朝は始業時刻に5分遅れた。上司は自分よりも早く来ていたので、あまり目を合わさないように出勤簿のハンコを押した。 昼には警報が解除さ