世界一のいちご
世界一のいちごとわたしが本気で思っているいちごを作っている水戸の飯村さんご夫婦のところに、ときどき遊びに行きます。
二人とも毎日仕事をしてるので、遊びに行くとはいえわたしも何かお手伝いしなくては!!と思い、いつも農家(レベル1)にジョブチェンジして初期装備を整えけっこうなやる気満々で伺うのですが、毎回特に農作業的なことはほとんどやらずにごはんを食べさせてもらったりお茶を出してもらったりして、本当に遊びに来て終わってしまっています。
なのでせめてレポートくらい書きたいと思います。
なんで世界一のいちごかというと、完全に無農薬無化学肥料だからです。
いちごをそうやって育てることはいちご業界では不可能と思われており、農薬と肥料を使わないといちごは実らないというのが常識だそうです。
しかし飯村さんは「あんな大量の農薬を撒くなんてどうかしてる」というごくふつうの感覚を優先させた結果、土と空気と水に最大限の工夫をすることでいきなりミラクルいちごを大成功させました。
ミラクルいちごがミラクルなのは無農薬無化学肥料というだけでなく、ものすごくおいしいという肝心の味もクリアしてる点です。
ガチの安心安全&いままで食べたいちごのなかでナンバー1においしい、どう考えても世界一です。
と農家レベル1のわたしは思いますが飯村さん的には納得いかないことが山ほどあるとのことです。あんなにパーフェクトないちごなのに、真剣にやっている人はいつだってその先を見ているなと思いました。
こちらは現在のいちごハウスです。
前回来た時と大きく様相が変わっていまして、画像をよく見ていただくとおわかりのように、畝の間に大量の水が張られています。
水浸しのいちご畑なんて見たことがない!!
説明いたしますと、いちごのシマの中央にはホースが走っており、そこから水が噴射され、水は土を通って通路にしみだし、たまっているというわけです。
大変初歩的な疑問として、
「根は腐らないのか」
と誰しもが思うわけですが、根は腐りません。
その証拠にいまもいちごがいっぱいなっています。
ただし普通のいちご畑では根腐れを起こすと思います、飯村さんの畑はそうならないように水と土に工夫がされているわけです。
たとえばこんな工夫です。
いちごはとても繊細な果物で、ちょっとのことで虫がつきます。
でもその虫を害をなす存在と考えるのではなく、じつは虫こそが何らかの異常を知らせてくれていると視点を変えると、人間のやるべきことが見えてくるわけです。
飯村さんは「土を洗っている」と言いました。
この場所はもともとほうれん草を育てていたのですが、まだそのとき使われていた古い肥料などが土中に残っていて、それがいちごの育成を阻害していると考えたわけです。
だから土に水を流して「土を洗う」。
畝のあいだにたまっている水はこのまま地面に吸収され、外の暗渠から排水されます。
それを、いちごが植わっているままで、ひたすらくりかえす。
こんなに土に水をかけてもいちごが無事なのは、土と水の双方に力があるからです。
特に水の質を高めることで、土のあいだを分子がすみやかに通過することになり、根が無事なのだとわたしは見てて思いました。
ケロケロと鳴く声のさきは、カエルが何匹もいました。
冬に来た時、ここは土の地面でした。
もともとほうれん草畑だったので、この場所に水がたまったのはごく最近です。
いつのまにタマゴがうみつけられ、オタマジャクシがかえったのでしょうか??
自然は場が整えられると、そこに必要なものを自然に発生させるのだということを、ここでも見せられた気がします。
世界一のビニールハウスに来ると、いつも彩雲が出ます。
自然の法則が息づく場所はどこも同じ作用が働きます、飯村さんの畑や田んぼも同じで、ここに来ると心が穏やかになって、素直な自分がどんどん心の中に戻ってくる感じがします。
きっと世界中の誰もこんな場所を知らない、日本という国のちょっと田舎の、ひっそりした場所。
でも本当の天国とは、そういうさりげないところに、よく見ないと気づかないようなところに、存在してるんじゃないかと思います。
大きなことをやろうと思わない、ただ自分の技術を上げていくだけ、と飯村さんは言いました。
いちごは縁のある人のところに届けばいい、とみささんは言いました。
そして二人はとても仲が良いです。
そのうえ欲がありません。
欲がなさすぎて、帰り際にスゴイ量のいちごを「おみやげ」と渡してくれました。
あきらかにおみやげの範疇を超えたずっしり重たい箱を、笑顔で渡してくれる飯村さん。
わたしはどうやって恩返ししていけばいいのだろう?と真剣に思います。
エネルギーと徳がいっぱいにつまったいちごを持って、常磐線でずっとそれを考えていました。