オレンジの象
焼いたら美味しいかもしれない。生物に不可欠だけど、生々しくて引いちゃう感じの感情
「誰とでも仲良くできるね」 嬉しい気持ちと同時に、たかが部外者だからね、という心の中で諦めを含んだ、自嘲する声がありました。 集団の中にいる中で、人から嫌われないことはそう難しいことではありません。しっかり挨拶をして、やるべきことをやって、人の悪口を言わなければそうそう嫌われることはないと思います。まぁ、中には何もしていないのになぜか嫌われることもありますが。その類の嫌われは「大人」の集団であれば全体でどうにかなることでもありません。 だけど、嫌われないことと好かれること
苔テラリウムなるものを作りました。丸い金魚鉢のようなガラスに苔や石、色付きのビーズを配置して作る飾り物。どこか演技臭い話し方の講師から、ガラスは地球なのだと教えてもらいました。ガラス鉢の中には土台となる土と乾燥剤のみ。この上にそれぞれの地球を作る苔テラリウム。 さぁどんなものにしようかと考えたときに、天の岩戸が脳裏にひらめきました。神さまがひきこもってしまう石の洞窟と世界と隔てる分厚い岩の戸。戸を立ててしまうと圧迫感があるので、石積みの洞窟だけをこしらえて、中に花を1輪挿そ
153センチ。日本人平均よりもやや低いものの、驚かれるほどでもない身長です。まぁ小柄かしら?くらいのもの。 成長期が止まって以来、はや10年近くこの背で生きてきましたが、特段不便はありません。上の棚に届かないとか、満員電車で埋もれるなどはありますが。その1つ1つが日常で、いちいち気にしてなんかいられもしないし、ましてやマウントをとる気にもなりません。全てのからだのことは、評価ではなく事実として捉えたい。 でも、ワンピースを選ぶ時だけは。そのときだけは己の身長が心底恨めしく
ディズニーランドにいったら必ず行くアトラクション。イッツアスモールワールド。 一緒に行く人には大体、「休憩所」扱いをされてしまうアトラクションなのですが、わたしはこのアトラクションが、ディズニーの挑戦を体現しているかのように思えてならないのです。 イッツアスモールワールドの中身はいたってシンプルで、各国の伝統衣装を着た人形たちがそれぞれの言語で「小さな世界(イッツアスモールワールド)」を歌っている中を船で巡るというものです。回転が良く比較的並ばない。しかも座れて、所要時間
欲というのは底知れない。過ぎた欲は身を亡ぼすが、全くの無欲は生きていけない。 なんて、言いますけど。 言ってしまえば、使命感や慈愛の心とかいうやつだって、欲の親戚みたいなもので、「愛するあの人に何かをしてあげたい」も「世界が平和になりますように」も、自分に直接的な恩恵が帰ってきにくいだけで、そう思うこと自体が欲みたいなもんだろうとひねくれてみます。 だから欲に良いも悪いもないのだ、なんて言うつもりはなくて。欲にかられる経緯は様々あるでしょうけど、どこかで踏みとどまるため
談笑するよりも、小間使いのごとく動いていたほうがいい。空気みたいに扱って、そんでもってあとに残る印象が悪くなければ御の字。 20くらいから親族の中ではそんなことを意識して動くようになって、23で家を出て家事を覚えた25の今はさらに磨きがかかっています。 自分のメンタルを守るためにそうしている部分が大きいのですが、そうすることが他者から見た自分の印象価値になるというのは皮肉だなと思わざるを得ません。 ただ、そのことをなんか嫌だな、と思いながらも解決する気のないわた
自宅療養7日目。いい加減、飽きてきました。 熱はとっくに下がり、しつこかった喉の痛みもずいぶんと和らぎました。時たま発作のように咳がでるものの、1日のうちほんのわずかな時間です。 幸いなことに、ここ数日のだらしない療養生活のおかげで外に出たいという意欲自体も減少していますが、暇なことに変わりはありません。 ほんの少しのやりのこした仕事と、代わりに出張に行ってくれた人へのお礼、ほんの少しの掃除と洗濯が終われば、もうあとは自由時間です。 宅配レンタルした漫画は午前中に読み切
相手も自分も貶めない返し、切り返しの早さ、流行りのものに例えた突っ込み。 不得意というわけではありません。むしろ、浅い関係性であればあるほど上手にやり過ごせるタイプ。 今年の流行語に「知らんけど」がノミネートされました。 もともとは関西の方言だったと記憶していますが、今は日本全国で「知らんけど」が使われているというのです。 両親の出身が関西のわたしも、流行するよりはるか昔からこの「知らんけど」を使っていた1人で。 どんな小難しい理屈でも、テーマが重くとも、最後に「知らん
仕事帰り、最寄り駅に行くと運転見合わせをしていた。近くまで行けなくもなさそうだが、そこから先の足がない。歩くと2時間以上かかることは確実なので、翌日休みのわたしは早々に諦めて再び外へ出た。 LINEを開いてみたものの、夜の19時過ぎに呼ぶにはやや遠すぎる友人ばかり。世間的には明日も平日なので連絡するのは憚られた。 しかし、困った。わたしはひとりで食べる意味のない外食は嫌いなのだ。 欲望のままに食べるときは他人の存在など気にもならないし、むしろ好んでひとりで食べたい。 朝
「最近楽しいことあった?」 ある人が定期的にわたしにする質問です。 最初の数回はまともに答えられませんでした。「いやぁ、なんにも」とか「地味な毎日ですからねぇ」とか。楽しいことがないわけではないのですが、とっさに思い出を切り出せるほどわたしは器用ではないのです。 でも何度そんなふうに気のない答えをしても、その人は定期的に「最近楽しいことあった?」と聞くものですから、毎回同じ答えなのもなぁと謎の申し訳なさを感じるようになりました。 だから、楽しいことがあったら「これを次回聞
小さい私は、もっと小さい赤ん坊を育てるのだと抱えて歩いていた。大きな私はかけてくる小さな私と一体になって、マンションの廊下を体をゆすりながら早足で歩く。体をゆすっているのは赤ん坊の機嫌が良くなるようにと思ったからだ。ゆすりすぎて、だんだんと赤ん坊の体が腕からこぼれ落ちる。 それに構わずゆすり続ける私。とうとう、玄関に入った瞬間赤ん坊は完全に腕からずり落ちた。頭蓋骨がコーンと鳴る。 大切なガラスを割ってしまったかのような嫌な動機を感じながらかがむと、赤ん坊はパチリと目を開けて
行先の2駅前で終点。乗り換えは同じホームです。 もう何度も同じ乗り換えをしているので、慌てず騒がず、電車を降りました。 と、おそらく同じ方向に行くのであろう男性が、近くの人に何やら話しかけています。身振りからするに、乗り換え方法について聞いていたようです。 スマホがあれば一瞬で乗り換えが調べられる時代です。現に男性もスマホを手にしていました。それでも訪ねていたのは、おそらく電光掲示板にまだ目的の電車が表示されていなかったから。 男性の様子を見ていると、なんだかわたしも落
前書き 実家にいたころは、自分の皿に盛られる料理を何も考えずに平らげていました。 何をいわずともご飯の準備がされている生活の中では、出されるご飯に対して、「食べる」か「食べない」かの選択はありません。食べることが当たり前のことで、お菓子を食べ過ぎでお腹が空いていなかろうが、ダイエット中であろうが、実家のご飯は出されれば食べる義務があるように思えて、そこに自分の意志は首をはさめなかったのです。 与えられていたんだな、と思います。 それが今、大人になって一人暮らしをしている中
「羊たちの沈黙」という映画は、主人公が食人嗜好だそうです。今日1日生肉のことを考えていたわたしにはピッタリの作品だなと、初めて猟奇的な映画に興味を持ちました。 美味しいレバーを知ってから、わたしの食の世界は広がりました。美味しいレバーは臭みもなく、何よりモサモサしていません。半生で柔らかい、でも内臓特有の歯ごたえがあるレバーは今となってはわたしの好物です。 レバーが好きになるのと同時進行で、その他の内臓も好きになりました。焼き鳥屋にいけばレバーとハツ、カシラ。冬の居酒屋と寿
どうしてこんなに一生懸命人と会うんだろうと思ったと、大好きな人に言われて、わたしはこの人を見下していたんだなと思いました。 大好きな人は不器用で、泣き虫で、社会では息をしにくいタイプ。片やわたしは、器用とはいえないまでも大きな挫折がないまま、それなりに順応してしまったタイプです。 だから、そんな大好きな人が困っていたら色んな意味で助けたいし、おせっかいをしてしまうことが何度もあります。 でも、いつしか純粋に助けたいという想いから、自分の空っぽを埋めるために彼女の窮地を利
訳あってオンライン婚活パーティーに参加しました。 なんやかんやでマッチングもして、連絡先の交換もして…心底、向いてないなと思いました。 と、いうのも。 参加者全員と1対1で話すシステムで、時間は1人につき10分。盛り上がればあっという間ですし、盛り上がらないと地獄のような長さだと思います。 口下手で全然盛り上がらなくて向いていないと思ったわけではありません。むしろ、その逆です。 自分でいうのもなんですが、わたしはそういう時に「ちゃんと」盛り上がれます。相手が多少口下手だろ