バンコクを歩く
2月の初め、幼馴染とのタイ旅行9日目。これといった目標なんかもなくダラダラと過ごしている。朝は9時くらいに起床して、ゆっくりと歯を磨き、着替えや髪のセットなどたっぷり時間をかけて身支度していく。友人はタイの洗礼というべきか、食あたりにあってしまってので彼でも食べられそうなものを探しに僕は散歩に行く。ついでに家族への大量のお土産も探してまわるつもりだ。ホテルのエントランスを抜ける頃には11時を回っていて、その頃にはバンコクの気温もぐっと上がっていた。そして自動ドアが開くと30℃の熱風が身体に悪影響を及ぼす粒子を纏って僕の顔を殴りつけた。
僕はタイ人のひとたちと一緒にゆっくりと歩いてショッピングモールに向かう。みんな知らない他人だが、バンコクを訪れる大量の外国人が僕含め速く歩くため、細い道なんかでは先頭のタイ人たちにぶちあたって一つの集団のようになっている。そんな彼らについて行くように僕たちはゆっくりと歩く。タイに住む多くの人がゆったりしている。ゆったりした服を着て、ゆったりと歩き、ゆったりと話す。アグレッシブな時があるとすれば客引きくらいだ。たまにこちらの袖を引っ張ってきたりもする。みんなどうやってか僕を日本人と見抜いてくるため、「こんちわ~!」「ムチムチだよ~!」と声をかけてきておもしろい。一体どこでそんな言葉を覚えたんだろうか。
ショッピングモールにつき、家族や友人へのお土産をどれにするか店をじっくりと物色する。中には陰茎の形をした大きな石鹸も置いてあり、店員の女性たちは驚く観光客たちの国籍を一瞬で見定め、その国籍の言語で果敢に話しかけていく。そんな様子を尻目に僕は笑いながら木を削って作られたカエルの置物を幾つか買い物かごに入れた。カエルの背中を木の棒でこすると本当のカエルのように鳴く。ゲコゲコ。目の前でしばらく説明してくれた女性と一緒にカエルの背中をこする。カエルを鳴かせるのにも満足したので会計のお願いをした。タイシルクやバタフライピーなどしばらく買い込んだ後ショッピングモールを後にした。
遊歩道を上ってBTS(Bangkok transfer system)と呼ばれる最新の電車を目指す。道路の作りが悪いため、少し道に迷いながらもなんとか電車に乗りこんで郵便局まで向かった。空港では、土産物が多すぎて荷物が規定の量を超過すると追加の料金が発生してしまう。これがまたとんでもなく高くなるとの噂なので空輸で土産物を家へ送ることにしたのだ。
郵便局のエントランスにはタイ語しか書かれていない。右手にいた女性に声をかけると僕の代わりにタッチパネルを操作してくれた。出てきた券を手に持って、番号が呼ばれるのを待つ。タイ語でいくつかアナウンスが流れるが、なにぶんタイ語なので言葉が全く理解できない。これもまた近くにいあわせた別の女性が俺に声をかけて教えてくれた。カウンターに行って男性に番号の書かれた券を渡す。男性の着ているTシャツには「I love post」と書かれている。Tシャツの印字はおそらく冗談ではないかのように至極まじめに働いている。周りにはタイ人しかいないが、日本人の自分にたいしても英語で優しく丁寧に教えてくれる。20分ほどで完了し、周囲の人にコップンカーと言って外に出た。夕方の4時を回っていたが、外はまだカンカン照りですごく暑かった。気温は35℃を超えている。
バンコクにはどこにでもあるセブンイレブンでおにぎりとバナナ、ヤクルトもどきと大塚製薬のドリンクを購入してホテルの方向に足を進める。まだみんなゆっくりと歩いている。僕もタイ人のみんなと一緒にゆっくり歩く。トゥクトゥクを見れば運転手が席で昼寝をしている。人々の暮らしは決して裕福とは言えない。でもみんな自分のペースを持っているように見える。日本でも「自分のペース」という言葉をよく聞くが、いまだに自分のペースがどれくらいなのか全くわかっていない。たぶんそんなものは世間には求められていない。でもタイにはそれがあるんだ。日本とタイどっちが良い、悪いの話ではない。ただこういった文化を目にすることは本当に面白いんだ。一度バンコクに足を運んでみよう。みんなほほえみで歓迎してくれるだろう。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?