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理想の上司

今から10年以上前、職場に理想の上司がいた。

当時50代後半だった彼女は、管理職だけど気さくで、新人だった私にいつも笑顔で接してくれた。

今思えば、上司にも部下にも、誰に対しても全く同じ態度で、仕事が出来るけど、偉ぶることは全くなく、常に笑顔を絶やさない人だった。

朝は誰よりも早く出社して、全員の机を拭いて回っていた。

クレームが来ると真っ先に窓口に出て、昼ごはんを食べるのが夕方になる事も。

どんなに怒鳴られても、文句も悪口も言わず、笑って「愛すべきお客様よ〜」と言ってのける姿は、本当にカッコ良かった。

時々無茶を言う人が居て、「会社が終業してから謝りに来い❗️」などと夜遅い時間を指定してくる人も居たが、そんな時は必ず
「火曜日か木曜日なら行けるから、その日で設定してぇ〜」と笑っていた。

普段はすぐに帰るけど、火曜日と木曜日だけは夜遅くまで残業していて、残業代も付かないけれど一言の文句も言わなかった。


彼女が月・水・金の週3回、仕事終わりに透析に通っていたことを知ったのは、ずっと後になってからだ。


重い腎臓の病気を抱えていて、透析に通い、昼ごはんはほとんど味がしないお弁当を食べていた。
それでも長くは生きられないと聞いた。

彼女が定年を迎え、年賀状のやり取りも無くなった。彼女なりの終活をしているようだ。

「あなたは私にとって、尊敬すべき理想の上司でした」と、きちんと声に出して伝えれば良かった。

あんな風になりたいと思っても、理想の上司が居ても、自分がそうなる事は難しいなぁと思いながら私も日々奮闘しています。

天海祐希や米倉涼子が、理想の上司ランキングで選ばれる季節になると、いつもあなたを思い出します。

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