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母なる破壊
午後より上京区は御所の西に位置する菅原院天満宮へ。北野・大宰府をはじめ日本全国で1万社以上を数える天満宮。中でもこのお宮は日本最古の天満宮の一つとのこと。
この「一つ」というのが面白いものでして。菅原道真公或いは道真信仰に関して「始まり」に関係するお宮は、その由縁を根拠として「日本最古」と声高に宣言する。
斯くいう菅原院天満宮、最古たる由縁は「道真公がお生まれになった場所」である。境内には「菅公御産湯の井」なる井戸も。こちらのお水は自由に持ち帰ることもできる。
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怨霊とは程遠い、優しく穏やかな、それでもってユーモアたっぷりにみえる道真公。このイラストが人目を惹いていた。
境内を後にしてからは三条エリアへ。
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クリスマスも近いということで。〈MarieBelle 京都本店〉にてチョコレートを購入。ウィスキーとワイルドベリー。前者はもちろん自分用。
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ひとつひとつのデザインは、それぞれのストーリーを持っているそうな。ひと思いに口の中へ放り込む瞬間が楽しみで仕方がない。
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中心地にしては人が疎らな三条。明治期まではメインストリートであった歴史を持つ。ゆえにこの道に建ち並ぶのは近代建築たち。これまた京のひとつの顔といったところだろうか。
昨年と一昨年の2度、この地にオープンして間もない宿泊施設に泊まったことがある。2年前の〈TSUGU 京都三条〉、昨夏の〈nol 京都三条〉である。どちらも歴史的建築物を活用し、且つ文化的背景をコンセプトに据えた施設という点で、文化継承のひとつの形とも言えるだろう。
2020年にオープンし、連日賑わいを見せる〈新風館〉についても同じことが言える。
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ゆうべの記事でも言及した『日本の歴史的建造物―』、ちょうど近代建築の保存運動についての部分を読んでいるところだ。芸術と同じく、否、多くの分野と同じように、当該の時代の人々の特定の事物に関する知覚・認識は、あくまで当時の社会や情勢に依存していることを改めて認識した。
破壊は価値の発見と保存の母なのである。
中公新書
上記の持論の通り、引用部の言葉は建造物に限ったものではないと私は考える。感染症拡大やそれに伴う社会の変革の最中、あまりにも多くが破壊された。その反動は失われゆく価値の発見・保存に転換されたのだろうか。
そんなことを考えながら。