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ラデュレ(04)
アフタヌーンティーをすることになった浅間唯は明るく、快活という感じの女性だった。冷静に見ると計算して明るく振舞う「あざとい」系と思われたが、車に詳しいことが楽しい時間を期待させた。
しかし、浅間の狙いは車に乗せてもらうこと、あわよくば運転させてもらうことなのか、はたまた「大人の関係」で支援を受けることなのか?
浅間「武田さんのポルシェって特別色なんですか?」
武田「特別色というのは、色を特注したのか、ということですか?」
浅間「はい、ポルシェは3,000色くらいあると聞きました」
武田「そうらしいですね。
有名なのは女性が口紅を持ってきて、この色に塗ってほしいと注文して、その色の車が届いたことですね」
浅間「私もそれ、聞きました!
凄いですよね?
気分が変わったら、どうするのかと思いましたが」
武田「口紅や靴を変えるように、複数の車を持っていて、気分で運転するものを選べるレベルの方だったのでしょうね」
浅間「私がこのマカロンのような色にしてほしいと言ったらポルシェでは塗ってくれるんですよね?」
武田「日本では決まった色を勧めてくれるでしょうけど、本国に注文するなら可能かもしれませんね」
浅間「武田さんのは?」
武田「一応」
浅間「独特な色だと聞いています。
しかも、一緒に走ったことのある人は絶対忘れないような色だと」
武田「さあ、それはどうでしょう。
ネロ・ブラックという艶がなく、あまり光を反射しない色です。
夜の闇に溶け込みやすく、昼間は冷めた感じの黒です」
浅間「どんな感じだろう?
最近欧米で流行っているフラットブラックという感じですかね?
良かったら、今度、ドライブ、お願いできますか?」
武田「いいですよ」
浅間はこれで武田の運転技術と車の性能を確認できると思った。自分が所属するレースチームのドライバー・内山春樹が負けたのは、この男が運が良かっただけで、実力ではないと思いたかったのだ。
<いや、そうでないと、たかが金のある素人がプロを負かすことなんて不可能なはず>
浅間「武田さんもサーキットをよく走るそうですが、元々サーキットも走っていたのですか?」
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