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ラデュレ(05)

ラデュレ(05)

 アフタヌーンティーをすることになった浅間唯あさま・ゆいは明るく、快活という感じの女性だった。冷静に見ると計算して明るく振舞う「あざとい」系と思われたが、車に詳しいことが楽しい時間を期待させた。
 浅間は武田が自分の所属チームのプロドライバーを負かした「素人」だと知って、複雑な心境に至っていた。

武田「学生時代から走っていますので、もう30年くらいは走り込んでいますね」

 武田は何となく浅間の興味の方向を察し、「走っている」ではなく、「走り込んでいる」とわざと「素人」ではない点を強調した。

浅間「30年も。
 ずっとポルシェですか?」

武田「レースクィーンだから話したら少しわかるかなぁ」

浅間「多少は分かると思いますよ」

武田「僕は学生時代、アメリカのジョン・ラムズ・レーシング・スクールという、レースカードライバーの学校に通ったことがあるんです」

浅間「なんか聞いたことがあるような」

武田「僕はそこのFJプログラム、フォーミュラーレースカーに乗るためのプログラム、を卒業していまして、レーシングカー歴は結構長いんです」

 浅間は半分飲み込めたようだった。

浅間「フォーミュラーってF1も含まれますか?」

武田「広義にはそうですけど、アメリカは独自の車文化があって、クローズドウィールとオープンウィールと言って、クロースドは普通の車に見えるタイプ、オープンは日本でも人気のF1タイプの車を言います」

<なんだ、全然素人じゃないんじゃん。というか日本のレーサーのほとんどがレーシングスクールなんて行ったことないのに、この人は…。晴樹が負けても仕方がないレベルか…>

浅間「それで!
 納得です!
 ヨーコが『武田さんはすごい難しい車をサラッと運転しちゃうって』言ってたんですけど、何となく理由が分かりました!」

武田「そうですか、良かったです。
 だいたいの女性は、金のあるファンマネ(ファンド・マネージャー)で見栄と趣味でスポーツカーに乗っていると思っているらしいので、一人でもその背景を理解してくれる人がいると嬉しいです」

浅間「あの~、ヨーコ、連れて行ったんですよね、ドライブに?」

武田「何度かご一緒しています。
 チームオーナーには内緒なので、他言無用でお願いできたら嬉しいです。
 彼女にも迷惑が掛かりますから」

浅間「どうしようかなぁ」

<なんだ、何が浅間の狙いなんだ?デートをOKして失敗か?>

浅間「今度、ポルシェ、乗せてください。
 レースカーとあまり変わらない車を武田さんが公道でどう扱うのか見てみたいです」

<よくわからないけど、最近の女子は上から目線が多いな。何がその自信の根拠なのだろう?>

武田「いいですよ」

浅間「箱根で混浴なんてどうですか?
 私、一応、胸はGジーあるんで、絶対がっかりさせません」

<「胸はG」ときたか。いくらでも「胸はG」の子はいるし、たかがレースクィーン。国代表のミスに比べたら…>

武田「それではぜひ、混浴で拝見してみたいですね」

浅間「ぜひ見てほしいわ」

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