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月と六文銭・第十九章(13)

 鄭衛桑間ていえいそうかん:鄭と衛は春秋時代の王朝の名。両国の音楽は淫らなものであったため、国が滅んだとされている。桑間は衛の濮水ぼくすいのほとりの地名のこと。いん紂王ちゅうおうの作った淫靡な音楽のことも指す。

 武田は播本優香はりもと・ゆうかとの楽しいひと時の直後に銀座のホステス・喜美香きみかから突然の来訪を受けた。
 ベッドで寝始めた喜美香をダブルスプーンで後ろから抱き締めながら、武田は夢の中でスタイル抜群なシングルマザー・上田陶子うえだ・とうことの初めてのデートを思い出していた。

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 日曜の朝、武田は少しカジュアルな恰好で出掛けた。恋人の三枝さえぐさのぞみはアナリスト初級の1次試験だった。終わったら夕食を一緒に摂るつもりだった。

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