東海道中有松日本橋 新々膝栗毛 六日目
東海道中有松日本橋 新々膝栗毛 六日目。
丸子宿。とろろ汁の丁子屋付近。丁子屋は待たされるし、のんびりできないので、その手前の古民家喫茶店に入った。
先客は、近所の人が二、三人机に集まっているだけだった。カウンターに座ると丁子屋に行かれたかと聞かれた。「西から来たので、まだです」と答えると、ちょうど生しらすが入ったのですが、お昼食べて行かれますかというので「それは願っても無いこと」とここで昼にした。
この店のママさんと色んな話をした。自分は脊髄の手術をしてちょっと失敗したらしく、常に全身に痛みが走るようになってしまった。それを緩和する為に毎週病院で麻酔処理をしている。辛いけど、こうやって色んなお客さんと話しができるので、それが張合いになっているという。
喫茶店を開くのが夢だったようだ。それまで三十年程他の店をやっていたらしい。バブル期に物凄くお金を使っていったお客さん云々という話から、スナックなどを経営していたと勝手に想像した。
私が「うまいうまい」と言いながら食べたので、相当喜んでいた様子だった。豆腐や梅干しも全部自家製だという。
従業員の一人が丁子屋の話をしてきた。「近所の人は丁子屋には行かないんですよ。それにあそこは一時期廃業していて、今は江戸時代の頃の経営者と全く違う人がやってるんです」。成る程ねぇ。
食後に抹茶を飲んで、十分休憩したのち、ママさん、従業員二人に出口まで見送られて店を後にした。