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マンガMee人気作家の漫画の作り方を大公開!『誰か夢だと言ってくれ』みっしぇる先生インタビュー【ネーム編】

マンガMee公式noteでは、デビューを目指すみなさんへ、面白い漫画作りのヒントになる情報を発信中。マンガMeeで活躍する人気作家さんに、漫画家志望者なら気になる漫画作りのアレコレを教えてもらうインタビュー連載を公開しています。

今回は、累計発行部数140万部突破(※電子版を含む)の大ヒット作『誰か夢だと言ってくれ』を連載中のみっしぇる先生と担当編集にお話をうかがいました!

  1. 連載立ち上げ編

  2. ネーム編

  3. 作画編

と、全3回にわけて掲載予定です。第2回となるこの記事では、みっしぇる先生のネームの作り方についてお届けします。

第1回【連載立ち上げ編】はこちら▼


章全体の流れから、ストーリーを考える

——連載立ち上げ編ありがとうございました!今回はネーム作成のお話を伺いたいです。『誰か夢だと言ってくれ』(以下『誰夢』)は、普段、どんな流れでストーリーを考えていますか?

みっしぇる まずは担当さんと打ち合わせをして、話の内容を決めています。打ち合わせは2種類あって

  • 章全体の流れの打ち合わせ

  • 毎話のストーリーの打ち合わせ

です。

——打ち合わせではどんな話をされているのでしょう?

みっしぇる 章全体の打ち合わせは、どんな流れで章が進んでいくのかを展開までは細かく決めずに話し合っています。章の切り替わりのタイミングで1時間半ほど行っていますね。

毎話の打ち合わせでは、どんなストーリーにするのかのアイデア出しと、その話の全体の流れを決めています。ストーリーの中でやりたいことをフワッとわたしが考えてきて……、例えば今回の話は文化祭を舞台にしたいとか、そのくらいの感じですね。それを担当さんに話すところから始まり、そうすると担当さんから「それならこれはどうか」とボールが返ってくるので、1〜2時間でどんな話にするのかを決めていきます。

打ち合わせ後にネームを考えていくなかでどうしても詰まってしまったら、途中のタイミングでも「すみません。この先どうしたらいいですか……」と担当さんに相談してしまうこともたまにありますよ。


一見無駄な「寄り道」のシーンも必要

——ネームはどのように作られていますか?

みっしぇる 打ち合わせが終わったら、3〜4日くらいでネームを完成させています。

ただ、すぐにネームを書くのではなくて、ネームを描く前に1日くらい使ってまず話の流れを頭のなかで整理します。自宅のベッドに寝っ転がりながら、虚空を見つめてやっていることが多いです(笑)。

それができたら、キャラのセリフをスマホのメモに書き出します。お風呂のなかとかでポチポチと。そこから原稿1ページあたりのセリフを割り振って、「ちょっと多いな」と思ったら会話を減らしたり、無駄な箇所を削ったりを大体1日くらい使って行っています。この作業は、『誰夢』を描く前からしていますね。

そして残りの1〜2日でネームを描いています。わたしのネームは、ネーム 兼 下絵なので、すぐにペン入れができるようキャラの表情もしっかり描いてあるんです。立ち上げ編でもお話しましたが、エッチなシーンは、担当さんにどんな体勢や構図なのかを説明したくないので、他のシーンと比べて下絵が細かいです(笑)。

——3〜4日……!早いですね!

みっしぇる 元々ネームを描くのはすごく遅くて、以前は1週間以上かかっていました。どうにか頑張って、今では3〜4日でネームは描けるようになりましたね。本当に早くなった……(笑)。

——ネームの直しはどれくらいされますか?

みっしぇる 昔はたくさんありました。今は1、2回直すくらいなので、自分でも成長したなと思います。前は丸々1話全部直しってこともあったので、頑張りましたね。

——どんなところが成長されたと、ご自身ではお考えですか?

みっしぇる 掲載開始前の描き溜め期間は、ネームに対して脚本感が強いとよく担当さんに言われていました。話の展開を進めたい気持ちが強くて、ストーリーばかり追ってしまっていたんです。その結果、キャラクターの心情を描く「寄り道」のようなシーンが全くなくて……。

ページ数も決まっているので「この中に収めないと……!」と、ストーリーを進めることばかり意識していたんです。

でも、やっぱり登場人物のキャラクター性がわかるような言動だったり、キャラ同士の絡みがあったほうがキャラをかわいいと思えるし、読んでいて楽しいと担当さんに指摘されて。話の展開とは別に、一見無駄だと思える寄り道的な内容も必要だということに気づきました。

例えば、小夜が樹のお見舞いに樹の家へ行く回があるんですけれど、そこで小夜が樹のためにリンゴを向いてあげるんです。でも小夜は料理に慣れていないから、リンゴの皮を向いたら食べるところが全然なくなっちゃう、という展開があって……。

『誰か夢だと言ってくれ』©️みっしぇる/集英社

このリンゴをボロボロにしちゃうシーンは、最初のネームにはありませんでした。すぐにぬいぐるみのことを小夜が樹に話す流れだったんですけれど、担当さんに「みんなが見たいのはぬいぐるみの真相解明よりも、この2人の会話や絡みじゃないかな」と言われて、このシーンを追加しました。

やっぱりキャラのやりとりをみて、愛着を持ってもらえるようなシーンは大事だなと。そういうことがわかってきたら自然と修正も減ってきて、今では塩梅がつかめてきたと思います。

——寄り道……大事ですね!今は、どんなところを修正されることが多いんですか?

みっしぇる ヒキ(※毎回の話が終わる時、続きが気になるように期待させる演出)についてが多いと思います。1話を30~40ページ程度で書いているのですが、マンガMeeは1話が2分割されて掲載されているんです。なので来週も読んでもらえるように、毎話の最後だけではなく、半分に分けるページのところでもヒキを作らなくてはいけません。

最初のネームはあんまり意識できていない状態で送ってしまうことも多いので、打ち合わせでどのシーンを真ん中のヒキにするか話し合って修正することが多いです。

あとは「同じような構図が続いているんで……」と担当さんに言われて直すことも多いですね。


魅せゴマを意識して——

——ヒキや、構図など技術のお話について聞きたいです!ネーム作成のときに技術面で意識されていることはありますか?

コマ割りが未だにコンプレックスです。少女漫画に特徴的なキラキラしたコマ割り……、例えばコマから大きくはみ出してキャラクターを描くことなどが、あんまり得意ではないなと思います。

連載立ち上げ編でもお話しましたが、『誰夢』を描く前まではショートギャグ漫画を連載していました。なので、1ページの中に5コマくらいはないと話が進まないというのもあって、そのコマの割り方がはじめは染み付いていたんですよね。でも『誰夢』を描き始めたら、1ページに2コマや、なんなら1ページ丸々使って1コマだけでもいいと言われ。今までのネームの切り方との違いに、本当に驚きました。

例えば、修学旅行で迷子になってしまった小夜が探してくれていた樹と公園で出会うシーンは、担当さんが「ここは大きくいきましょう」と言ってくれて、「いいんですか!?1ページ丸々ドーンと使っちゃって!?」みたいな(笑)。

『誰か夢だと言ってくれ』©️みっしぇる/集英社

そんなふうに大きいコマをどんどん使うようになってみて、やっぱり魅せゴマはすごく大事だと思いました。あとは、アプリでパッと開いたときにページが印象的かどうかは大事だと思うので、単行本になったときの見開きや、めくりは意識しています。

——構図やコマ割りの練習は、今までどんなことをされていましたか?

みっしぇる 構図は、描きにくいような体勢は自撮りしてポーズをとったり、CLIP STUDIOの3Dモデルを使ったりもしています。

見やすいコマ割りの練習でいうと、デビュー前やデビュー直後くらいに好きな漫画家さんの漫画全体を模写して、テンポや演出の仕方を勉強していました。

——漫画全体を模写……!すごい!『誰夢』のお話に毎週惹き込まれる理由がわかりました。みっしぇる先生ありがとうございます!

・・・

次回予告

第3回の「作画編」も現在準備中。公開をお楽しみに!

第1回【連載立ち上げ編】はこちら▼

『誰か夢だと言ってくれ』はマンガMeeのアプリからお楽しみください▼

取材・文/戸田帆南

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