スマホいらずでのぞかれる心配もナシ。網膜投射型スマートグラスでビジネスはこう変わる【後編】
網膜に直接レーザーの光を通し「投射」することで、視界に新たな映像を映し出す技術を生み出した株式会社QDレーザ。
前編ではその技術のしくみと、現在開発されている製品のスゴさを教えていただきました。
このARグラス技術を使って何をしてみたいか…
まずはマサイ族ごっこ。
それから赤外線カメラとサーモグラフィーを駆使した、ガチ感高めの深夜のサバゲ―。
ARでしか見えないヒントを探す脱出ゲームなんかも面白そう。遊んでばっかりだな…。
そんな取材陣とは対照的に、菅原社長からは「健康管理」「多言語翻訳」「ビジネス活用」といったキーワードが出てきました。
果たしてどんな未来が待っているのでしょうか?
■実はこのARグラス、もう買えるらしい
とまぁ、その前に、このARグラスが私たちの手元に来るのはいつ頃になるのかを教えてもらいましょう。というか、すでに製品はあるので、欲しければ手に入るのですが、気になるのがお値段。
製品の価格は、医療器具として認可を受けた「RETISSAメディカル」でおよそ60~70万円、一般向けに販売される「RETISSA Display II」でおよそ25万円…。
まだちょっと手が届かないな…。と思っていたら、近々3万円ほどの組み立てキットが発売されるそう!
自作ARグラス、ちょっといいじゃん…。
軽量化やケーブルの簡略化など課題はあるものの、まずは医療分野などニーズのあるところから導入を進め、一般消費者へもよりリーズナブルな価格で提供できるようにしていきたいとのことです。
■レーザーによって目の健康状態を知ることもできる
未来予想として菅原社長がまず挙げたのが「健康管理」。
人類の寿命が延びている一方で、目の健康は70歳頃までと言われており、さらに日々モニタリングが可能な体重や血圧と違って、目の健康状態は自宅で管理しにくく、また異常に気付くころには既に病気が進行しているケースがほとんどだそう。
実は、眼科で行われる検査にもレーザー技術が使われているため、RETISSAのレーザーによって網膜の状態を読み取り、AIによって画像診断ができる未来が…!
朝起きてRETISSAを装着。
「おはようございます。網膜スキャンを開始します。。。スキャン完了、オールクリア。続いて今日のお天気は…」なんて表示されたら超カッコイイ。近未来。
■どこの国の人とも一瞬でコミュニケーションできる
医療や健康管理以外にも、RETISSAの活躍チャンスは広がります。
音声認識ソフトと翻訳ソフトを使った「多言語翻訳」も実現可能。現在も様々な翻訳ツールやソフトが開発されていますが、その翻訳結果はスマートフォンなどの画面に表示されることがほとんど。
これがほぼ同時通訳的に、ARで字幕になったら…。
国籍が違う人同士で集まっても、全員が母国語でストレスなく会話できるし、
ブロードウェイのミュージカルも何を言っているかがわかるからもっと楽しめる…。
英語の勉強、やらなくてもよくなるな…。
■自分だけのスクリーンで快適ビジネスライフ
RETISSAの最大の特徴である網膜投射は、映し出される映像が自分以外の誰にも見えないということでもあります。
外で仕事をしていると気になるのが「他人ののぞき見」。
オフィスでこっそりYouTubeを見ていると気になるのが「上司の視線」。
自分だけの視界で映像を展開できるなら、そんな心配もナシ。
いちいちスマホを取り出して操作する必要もなく、「メールの返信」も「予定の追加」も全部音声入力でOK。
少しくらいYouTubeを見ていてもバレません(仕事はしよう)。
未来のビジネスパーソンはみんな電車の中で「お世話になっております…」とか「15時、A社アポ…」とか、ブツブツつぶやいているかも…
それはちょっと怖い。
(取材後記)
レーザーを網膜に投射するってどんな感じなんだろう…? と少しビビりながらお邪魔した今回の取材。
RETISSAをかけてみた世界には、“確かに見えているのに、他の人には見えていない”…。まさに現実が拡張されたような不思議な感覚がありました。
視力の弱い人や視覚障がいのある人もクリアな視野を手にできる。そんな意義ある可能性とともに、誰もが楽しめるエンターテインメントやコミュニケーション、ビジネスシーンに欠かせない技術になっていく可能性も感じられました。
漫画=田丸こーじ(@koji_tamaru)
取材・文=藤堂真衣(@mai_todo)
編集=檜山(@mek_sake)・井田(@ida_pei)
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