【前編】真の多様性を手に入れろ!BipolarDiaryから見える新しい世界のハナシ
BipolarDiaryをご存知だろうか。
双極性障害を持つ人や、その周囲の人々が利用することを想定しているスマートフォン向けアプリである。
※双極性障害とは、うつ状態と躁状態がサイクル的に症状として現れる精神疾患。鬱状態での診断により「うつ病」と誤診されることが多い。
なぜ未来を想像するメディアで、メンタルヘルスを扱うのか。
しかしてその秘密は、ぜひ後編まで読んでいただきたい。
まずは、誰が何のためにこのアプリを作ったのか。
話はそこからだ。
■「きっかけは恨みだったんです」
そう、明るく語るRemaさんの手元を見ると拳を作っていた。
BipolarDiaryの開発者であるRemaさんは、精神疾患の世界を「交通事故みたいなもの」と語る。
誰にでも起こりうることなのに、誰もが事故に遭うまで考えもしない。
確かに、自分事として捉えている人は少ないだろう。
Remaさんもかつてはそうだった。
身内の方が双極性障害を発症するまでは。
当時の体験を、
「ジリジリと生活が追い詰められている」と表現するRemaさん。
躁鬱サイクルが短くなっていく(ラピッドサイクル)身内に対して、献身的に世話をしていたRemaさんは適応障害を発症。仕事を休職したそうだ。
「普通の」出世コースからは外れたと言っていい。
精神疾患が交通事故なら、これは巻き込み事故だ。
現代日本の社会システムでは、精神疾患、特に双極性障害を発症すると、当人を含めた周囲までもが巻き込まれる事態が起こる。
だからこそ、RemaさんはBipolarDiaryを作った。
極力情報量を排したUI設計や、たとえ記録を忘れたとしてもシームレスに表示されるバイオリズムのチャートなど、BipolarDiaryは、かなりのユーザー目線で作られている。
それは自身が双極性障害になってしまったからこそ見えてくる、ユーザーファーストのスタイルだった。
■今なにをやっているか
BipolarDiaryというアプリをこの世に生み出してから少し経ち、たくさんの課題が見えてきたとRemaさんは言う。
但し、アプリのバージョンアップだけでは、本質的な課題解決はできないと感じているRemaさんは、もはやアプリの領域を超えつつある「サービス」としてのBipolarDiaryを目指しているようだった。
というのも、これまでRemaさん自身がツイキャスで「双極空間」という番組名で配信をやっていたり、TwitterではDMを開放して相談を受け付けている中で、
BipolarDiaryのエンドユーザーと直接的な関わりを積極的に持ち、次なるサービスへの道を模索していたらしい。
その関わりの中で今見えてきているのは、
当人だけでなく、医師やカウンセラー、家族・友人が参加できるコミュニティが必要だということ。
将来的に、一つのアカウントにこのような人々が参加できるようにすることで、多くを知っている経験者の「もっとうまくやれたのに」と、新たに事故に遭ってしまった人たちの「こういう時どうしたらいいんだろう」を繋げるコミュニティを形成することが、この先のサービス体系だと言う。
交通事故より多く人数。
すぐ目の前にある精神疾患は本当に他人事でいいのだろうか?
未来は、僕たちはどう変わるべきなんだろうか。。。
新しいセカイの真実に迫る後編はこちら!
【後編】真の多様性を手に入れろ!BipolarDiaryから見える新しい世界のハナシ
漫画=志岐佳衣子(@sikikeiko)
取材・文=齋藤春馬(@st_hal_)
編集=檜山萌子(@mek_sake)・岡崎寛之