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[Side Story] 秘密基地と秘密組織の秘密

■宇宙巡光艦ノースポール
[Side Story]
秘密基地と秘密組織の秘密

みなさま、
はとばみなとです。

『秘密基地』。そして、『秘密組織』。
何やら懐かしさの漂う、むしろ、暖かい響きの単語ですね。

何しろ『秘密』ですよ『秘密』。誰も知らないし、知られちゃいけないんです。あくまで『秘密』に作られた基地であり、組織なのです。そして、その『秘密基地』を拠点に活動する『秘密組織』。アニメや特撮の世界では、敵である悪の組織の活動の拠点としてももちろん、世界の平和を守る正義の味方側の活動の拠点としても登場します。

どちらかというと、悪の組織の拠点としての秘密基地である場合が多いようにも思いますが、正義の味方の活動拠点であっても、はっきりと明記はされていなくても組織や基地の存在というのは本当は『秘密』になっているべきだと思うのです。

もっとも、アニメや特撮に出てくる正義の味方の基地は、結構目立つ派手なデザインであることも多いようですが。

例えば、『サンダーバード』に登場する『国際救助隊』は、はっきりと、『秘密の組織』であることが謳われていて、その活動拠点である『トレーシーアイランド』も『秘密基地』として描かれていたと思います。

しかし、この『秘密組織』と『秘密基地』ですが、本当に成立するのかを考えると、疑問も湧いてくるのです。特に、物語の中の正義の味方側の『秘密基地』はかなり問題だと思うのです。

最初の疑問として、『秘密基地』はどうやって作られるのでしょうか。

敵側となる組織の『秘密基地』は簡単です。何しろ悪の組織なのですから、どんな非道な手段も使うことが出来ます。無抵抗の一般市民を大勢誘拐してきて、奴隷の如く無理矢理働かせたうえ、基地が完成したら、口封じに殺してしまうなんてこともへっちゃらです。何しろ悪の組織の『秘密基地』建設工事ですから。

ですが、正義の味方側の『秘密基地』の建設工事では、そんな行為が許されるわけありません。

どこかの建設会社と契約して、きちんと発注したうえで『秘密基地』を建設してもらわなければなりません。そして、問題になるのが、そうやって公序良俗に反しない方法で建設工事を進めたとして、建設を請け負った建設会社や、実際に現場で働いた作業員の方たちは『秘密基地』の秘密を守ってくれるのでしょうか。もちろん、工事に参加してもらう時の契約書に機密保持の条項があって、それを守るという前提で契約をするのだと思うのです。しかし、それでも、やはり疑問ですよね。本当に『秘密基地』の存在が秘密のまま守られるのかどうか。

まあ、でも、なんとか『秘密基地』が完成したとして、基地はどのように運営されるのでしょうか。例えば、運営費用はどうするのでしょうか?

『秘密基地』では大勢の人が働くはずです。もしも、アニメや特撮の舞台となるような基地だったら、その作品の主人公達も、その秘密基地で生活しているはずなのです。そうなると、電気代や水道代、ガス料金や電話料金も必要なのかもしれません。もちろん、『秘密基地』を持っている敵側の組織も、味方側の組織も、一般の私たちの暮らす世の中よりも遥かに進んだ科学力を持っているでしょう。『宇宙巡光艦ノースポール』の世界でいうところの、『VMリアクタ』のような技術を持っていれば、基地の外から電力や水の供給は不要かもしれません。でも、食料は必要ですよね? ここでも、悪の組織の秘密基地は何とでも出来るのでしょう。しかし、正義の味方の秘密基地は、あくまで、公序良俗に反しない方法で食糧を確保しなければなりません。やはり、近隣の農家や漁師さんと契約して、必要な食料を定期的に納入してもらうのでしょうか。

また、基地で働く人達には給料も支払わなければなりません。技術者や基地内の作業員の方たちはもちろんですが、アニメや特撮の主人公である、あのヒーローや、あのヒロイン達も、ボランティアで悪の組織と戦っているわけではないと思うのです。戦いと戦いの合間の貴重な休息の時間には、街に出かけてショッピングや食事くらいは楽しむのだと思うのです。その際には買物代や食事代が必要になります。それに、もしかすると、彼らヒーローやヒロインの自宅で待つ家族に仕送りをしているかもしれません。

そもそも、正義の組織も、悪の組織も、互いに戦うための強力な兵器を持っているはずです。そう、作品中で華々しく活躍する、あのロボット達や、高性能の飛行機や宇宙船。まあ、作品的には、正義の組織側は毎回勝つけれど、悪の組織側は、毎回毎回負けてばかりで、新しいメカを作る作業が大変だと思うのです。そして、これらの兵器のメンテナンスに必要な資材や機器、さらに、ミサイルや弾丸、砲弾のような消耗品は定期的に購入しなければなりません。そのためにも資金が必要なのです。

この資金は、いったい、どこから出ているのでしょうか。もう何度か書いているように、悪の組織ならば簡単です。方法はいくらでもあるのでしょう。しかし、正義の味方の場合は、やはり、公序良俗に反しない方法で確保しなければなりません。

ちなみに、『サンダーバード』に登場する『国際救助隊』は、隊長であるジェフ・トレーシー氏と、後に国際救助隊のエンジニアとなるブレインズさんの得た資金によって設立されたのだとか。サンダーバードのあの基地と、数々のハイテク装備は、ほとんど個人の資金によって生み出されて、運用されていたのですね。

では、『宇宙巡光艦ノースポール』の世界はどうなのか。

ノースポールを建造した、ノースポール・プロジェクトも、当初は、一般の人々には非公開の組織でした。『あまりにも常識外れな話だった』からですね。何しろ『未来からやって来た巨大宇宙戦艦』とか、『未来の地球が異星人の侵略を受ける』とかいう話しなのです。こんな話し、普通ならば信じてもらえないですよね。

ノースポールの世界の始まりである『未来の宇宙船』と遭遇して、その調査を始めた頃は、活動に必要な費用は、東京総合科学大学が、大学の予算の中から支出していました。ちなみに、物語の主要な登場人物である、鵜の木君と不動さんはこの頃からのメンバーです。当時はまだ2人とも、大学に通う学生で、むしろ、大学に対して授業料を払う立場だったりしました。

その後、ノースポール・プロジェクトが発足しますが、最初の頃は、大学の予算と、大学のOBによる寄付を資金源としていました。そして、その後は、政府の、古淵総理や、稲田防衛大臣がパイプ役となって、高い意識を持つ一般の企業から活動資金を調達するようになったのです。

「なんとも信じられませんが、しかし、そういう時こそ我々企業が動くべきでしょう。ぜひ、お話通り進めましょう。お任せ下さい。」

古淵総理が協力を得たのは、ある、中堅金融機関の社長です。それほど大きな銀行ではありませんが、柔軟な発想と優れた機動力で多くの有能な企業を資金面から支援することで定評がありました。この金融機関を中心にして、資金の支援の輪が広がっていったのです。

さらに、その後、ノースポール・プロジェクトを支援する動きはアメリカとロシアを中心にして、海外にも広がっていくことになるのです。

SF小説というのは、ある意味、夢の世界です。しかし、今日は、その夢の世界には、全く似つかわしくない、俗世間的な話をしてしまいました。とは言うものの、今回のような話も必要だと思うのです。ノースポールの世界で活躍する、小杉君や、不動さんが、私たちと同じ世界で暮らしている人物であるからには、必ず、今回書いたような背景があると思うのです。また、その内容を考えて、積み重ねていくことで、宇宙巡光艦ノースポールの世界も、より一層厚みを増していくことができると思うのです。

そのようなわけで、今回のお話が、みなさんがノースポールの世界をイメージする一助になれば幸いです。

(おわり - 秘密基地と秘密組織の秘密)

■宇宙巡光艦ノースポール
【最新話】公開中です。
・第8章 TA1
・第1節 シャトル不時着
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【次回話】
1月14日(日) 第8章の第2節 を公開予定

■宇宙巡光艦ノースポール
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https://northpole2022.com/

2024/1/12
はとばみなと

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